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ショートショートの詰合せ  作者: 志操 友博


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帰ってきたお父さん

お父さんが帰ってきた。


先週トラックに轢かれて死んでしまったけど、帰ってきた。

不思議な事ではない。だってホケンに入っていたから。


毎日寝ている間に脳のバックアップをクラウドにアップしていた。

身体は機械になっちゃったけど、外観からはわからない。

だからちょっと出張から帰ってきたみたいな感じでお父さんが帰ってきて、わたしたち家族も「おかえりー」くらいのテンションだった。


で、お父さんがまただんだんうっとおしくなってきた。

わたしが帰るのが遅いとネチネチ言ってくるし、お風呂上がりも裸でうろうろする。女の子なんだから料理を覚えろとか、時代錯誤なことまで言ってくる。


いい加減うんざりしたわたしは、ネットで偶然見た動画の内容をお母さんに話した。

「ねえねえ、お父さんって価値観古くない? 昨日も一番風呂に入りたいとか言ってたし。今ならクラウドのお父さんの情報を新しい価値観にアップできるらしいよ」


「えー、でも高いんじゃないの?」


「お父さん入ってるホケンなら、サービスでやってくれるみたいだよ。そうすればお父さんももっと家事もするし、料理も作ってくれて、お母さんも楽になるよ」


お母さんはすぐにお父さんのアップデートを開始した。


次の日からお父さんが変わった。

家族のだれよりも早く起きて、朝食の準備や掃除をしてくれる。

会社でもバリバリ働いて、わたしやお母さんにもとても紳士的に接してくれる。

帰るのが遅くなっても頭ごなしに叱るのではなく、いかにわたしが大事で、どうしても心配だから、遅くなる場合は連絡だけは欠かさないでねと優しく諭してくる。女の子だなんて関係ない、今は女子の方が大学進学率も高いし、学費の心配はせずに勉強をしなさいとか言ってくる。


「どうせなら、もう少しお腹のお肉も減らしてもらわない?」


「そうね。あと、髪の毛も薄くなってたから増やしてもらいましょう」



今では、かっこいいスーツをビシっと決めて、スタイリッシュでエレガントなお父さんはスーパーお父さんだ。友達もうらやましがる存在だ。


ある日、亡くなった妻をバックアップ復元した際に、自分の都合の良い姿かたちにした男のニュースが流れていた。法的には問題ないが、女性を自分の都合の良い存在にする男への批判的内容だった。


わたしは母と顔を見合わせて、悪い男もいるもんだねと腹を立てた。

お父さんは真顔でジッとニュースを見ていた。



わたしも成人して働くようになった。

それに伴い、お父さんのホケン料をわたしも分担して払うことになった。

初めて契約内容を読んだ。

そこには、私とお母さんのバックアップのホケン料が含まれていた。


お父さん、わたしたちもホケンに入れてくれてるんだね。

感動していたが、よく見るとバックアップの横にサブバックアップ代というのが含まれていた。

なんだろう、これ?


お母さんもよくわからずに払っていたらしい。

わたしはホケン会社に問い合わせてみた。


画面にはスーツの男性が現れて、説明をはじめた。

「このサブバックアップとはですね、被ホケン者さま、ここでいうお父様ですね。

お父様の脳のバックアップを二重に取っているという意味です。一つは皆さまと暮らしているお父様の脳です。もう一つは仮想空間で暮らすお父様の脳ですね」


「仮想空間? どういうことですか? 父は仮想空間で暮らしているのですか?」


「はい。ご契約内容によりますと、そこでは娘さんと奥様のバックアップの脳と一緒に暮らしていらっしゃいます。仮想空間の方の娘さんと奥様の脳は、少しアップデートが入っていますね」


「ど、どんなアップデートがされているんです?」


「父親を邪険に扱わない、知的で優しい妻と娘にアップデートされています」


2025.12.31

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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