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ショートショートの詰合せ  作者: 志操 友博


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89/100

幽霊と科学

ついに幽霊が科学的に解明されたという衝撃的なニュースは世界中を騒然とさせた。


発表したフリードキン博士は語った。

「人間の魂は通常では観測不能でした。しかし特定の人間の脳波と感応して瞬間的に具現化するということが証明されました。

つまり見る人間の影響が大きい。これにより幽霊はなぜ特定の人にしか見えないのか? なぜ魂なのに服を着ているのか? 国や文化によって幽霊の定義が異なるのかという謎が解けました。

わたしたち研究グループは、人工的に幽霊を見るための脳波を作り出すことで客観的に幽霊を観測し、研究できることを証明したのです。もはや幽霊はオカルトではありません」


人工脳波で具現化した幽霊は白くブヨブヨとしたスライムのような存在で、生きていた頃の記憶もなく漂うだけであり、恨みもなく、もちろん呪う力などは存在しなかった。

これらはすべて観測した人間側の思い込みであると結論づけられた。


せっかく幽霊が観測されたのに、この現実的な結果にオカルト関係者からは大いに盛り下がった。霊能者は失業し、ホラー系のエンタメも人気が失速した。


「でもこの白くてブヨブヨしたユーレイって可愛くない?」

少しずつ幽霊が可愛いと話題になってきた。フリードキン博士は幽霊研究の発展のためにと人工脳波装置の権利を主張しなかった。

そのため多くの業者が人工脳波装置をユーレイマシーンとして売り出した。さらに人工脳波を弄ることでユーレイに可愛いキャラクターチックな姿をさせることに成功した。


街は可愛い幽霊で溢れ返った。

煙に投影した絵のようなものなので触れることは出来ないが、どこを見ても現れる幽霊はまさに百鬼夜行といった様子だった。

古典的な姿の幽霊を投影するユーレイマシーンを開発して本物の幽霊屋敷を開設するアミューズメント施設も登場した。

企業は自社のキャラクターや広告を投影させて宣伝に活用した。


「これじゃあ昔より酷い。完全にユーレイは見せ物じゃないか」

「かつては人間だったはずの魂に対してあまりに配慮がないのではないか?」

という意見もあったが、幽霊の人権に関しては法の整備が追い付かず無法状態が続いた。


いつしか街の片隅では、ユーレイたちが同じ方向を見つめて集まる現象が報告され始めた。


フリードキン博士の研究は進み、感情がないと思われていた幽霊の魂に変化が見られていた。

様々な人間の様々な感情が混ぜ合わさり、結果として相殺された魂は無感情に見えていたのだ。しかしここに来て沢山の魂の感情が、一つの方向に向かって固まりつつあった。

「生者が死者で遊び過ぎたのだ」

博士は恐れ慄いた。


それは一つの巨大な魂となり、地球を包みながら初めて感情を露わにした。


「うらめしや」


2025.12.11

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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