ゾンヴィーガン
平和なヴィーガンコミュニティにゾンビが侵入したのは、一種のテロであったかもしれない。
後にあるヴィーガンは語った。
「野蛮な肉食人種どもが送り込んだんだ。きっとそうに違いない」
たちまちヴィーガンたちはゾンビ化した。
悲惨な事件であったが、多くの人々は好奇心を持って事態を見守っていた。
それはつまり──
『ゾンビ化したヴィーガンは、はたして肉を食べるのか?』
という不謹慎な興味であった。
予想は的中した。
ゾンビ化したヴィーガン、通称ゾンヴィーガンたちはコミュニティ内の動物を襲わず、野菜やフルーツを食べ始めたのだ。
これはゾンビ学における新たな展開かもしれない。
生前の行動がゾンビ化後にも影響を与えることを証明できるのではないか?
学者たちは色めき立った。
牛や魚の生肉、ベーコン、ハムなどの加工肉を与えてみたが、彼らは一向に口にしない。
「これはすごい。彼らの生き物に対する愛情はゾンビとなっても残っているんだ」
感動した学者たちはゾンヴィーガンに歩み寄った。
「すばらしい。これは生きた人間を教育すれば新たな兵器にできるぞ。生前に徹底的に訓練を積めば、死なない軍隊を作ることもできる。申請すればすぐに国から予算が……」
気がつくとゾンヴィーガンが血の滴る肉を咥えていた。
それが自分の首筋の肉であると気づいた時には、学者は地面に倒れていた。
見守っていた周囲の人々は一斉に逃げ出したが、エコロジカルで健康的な生活を送っていたゾンヴィーガンの足取りは軽く、次々と人々を食べ始めた。
「そうか、ヴィーガンは生き物たちには愛情深いが、人間には厳しいんだ……ああ」
やはり私の学説は正しかったと思いながら、学者は食べられていった。
完
2025.12.10
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