自動運転
「あ、あぶない!」
突然のことだった。急に飛び出してきた男をはねてしまった。男の身体は不自然な方向に曲がり、あたりには血の海が出来ている。
いくら自動運転の自動車に乗っていたとはいえ、責任は免れない。
というか、自動運転による事故の責任という一番やっかいな問題にあたってしまったかもしれない。
自動運転車はすぐに自動で警察と保険会社に連絡した。
車に搭載されている端末から、保険会社は自動で事故状況を
分析し始めた。
自動運転警察車両に乗った警官ロボットが現場検証を始めた。
自動車のドライブレコーダーと街の自動ドローンカメラの連携により、事故時の様子は完全に把握でき、男が急に飛び出してきたこと、狭い道で自動運転により避けることは難しかったことが確認された。
AI弁護士からも、責任を問われる可能性はかなり低いと連絡があった。
とはいえ、ある程度の示談金は必要となりそうだが、それも保険で賄えそうだ。
それでもやはり動揺は抑えられない。何しろ人を轢いてしまったのだ。
そこへ警官ロボットが近寄ってきた。
「あなたの車が轢いたのは、チャペック社のバイオアンドロイドです。一見人間のようでしたので我々も慌てましたが、最新型でまだ情報が十分に共有できていなかったようです。故障も限定的ですぐに復旧も可能なようです」
そうだったのか。
やっと一安心だ。
これで自動運転救急車もキャンセルできる。
最悪の場合に考えていた、検視ロボットの出番もないし、全自動火葬場も再稼働は不要だ。
大昔のデータを引っ張ってきてバーチャル葬儀を行う必要もないし、ロボットに僧侶のデータをインストールして手配する必要もないわけだ。
「いやあ、焦りましたよ」
ロボット警官もうなずいた。
「わかりますよ。まさか人間なんて希少種を轢いてしまったら一大事ですからね」
思わず笑顔がこぼれた。
あくまでプログラムだが。
完
2025.12.01
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