いじめ
久しぶりになってしまいましたがまだ書き続けます。
「今回いじめが発覚しました。」
静かな教室に教師の声が響いた。落ち着いた口調ではあるが声はわずかに震え、怒りに満ちていることが伺える。
クラスの者は皆俯きながらバツが悪そうに沈黙を守っていた。
「いじめられていた生徒は昨日から学校を休んでいます。加害者はもうわかっており話し合いや事実確認も済みました。ですが今回言いたいのはそこだけではありません。」
ジロリとあたりを見回し、教師はエヘンと咳払いをした。
「今回のいじめは多くの人が目撃、または認識していたにも関わらず見て見ぬふりを決め込む者や報告もしない者ばかりでした。これは許し難い問題です。同罪です!いじめに加担しているも同然です。皆さん一人一人が加害者と言えますよ!」
「いじめかなんてわかんねーじゃん」
どこからか声が聞こえた。教室内に軽い笑いが起こった。「いじめが原因で学校来ないとも限らねーし」「遊んでただけだろ」「そんなんで同罪って言われてもなぁ」「関わりたくねーし」
「何ですか?言いたいことがあるならちゃんと挙手して言ってください!ボソボソ言うのは卑怯ですよ!」教師が声を荒らげて机を叩くと再び教室に沈黙が訪れた。
「意見が無いようですので、今回のいじめ問題に関して各自レポートを書いて下さい。」
疲れたように教師が呟くと、教室内では無言で皆筆記用具を手に取りレポートを書く音だけが響いていた。
その日の夜、レポートをみた教師は呆然とした。
『いじめは認識していなかった。』『因果関係がはっきりしないので回答できない。』『取り敢えずアンケートを取りたい』『遺憾である』
といった見て見ぬふり、興味の無さ、マニュアル的な対応で溢れていたのだ。
今回の講義はいじめについて見識広め、専門家としての知識を得た教師が全国から集まった校長相手に行ったものであった。だが肝心の校長たちの反応がこれでは子供たち相手にに見て見ぬふりはいじめと同罪等とどうして言えよう。レポートを眺めつつ教師は頭を抱えた。
完
2016.08.20
読んで頂きありがとうございます。




