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ノイズ

久しぶりにホラー風味です。お楽しみください。

ブツッ……ブツッ……


イヤホンから聴こえるお気に入りの曲にノイズが入り、梨香は思わず「あれ?」と呟いた。4年前に友人の愛佳(まなか)教えてもらったバンドに夢中になりそれから流行りも追いかけずに毎日聞き続けている曲たちだ。本当にわずかなノイズだが気づかない訳がない。


--イヤホンが切れちゃったのかな?


そう思い、イヤホンを買いなおしたが相変わらずわずかにノイズが乗っている。という事は音楽プレーヤーが壊れてしまったのか。急な出費を思い、憂鬱な面持ちで電気屋に向かった。

電気屋のお姉さんは優しかったが音楽プレーヤーを渡すと困ったような表情で、ノイズは特に入っていないと言われてしまった。一応メーカーに送りましょうかと言われたがなんとなく梨香は断ってしまった。その間音楽が聞けないのも嫌だった。


「えー、だったら修理の間スマホで聴けばいいじゃん」

これまでのいきさつを学校で愛佳に話したところ、あっさりと解決策を言われてしまった。

「違うの。わたしは音楽プレーヤーで聴きたいのよ。」

「なんで?」

「うーん、理由はないけど、なんかスマホで聴くのはしっくりこないの。わたしのポリシー。」

そういう梨香を見て、愛佳は笑った。「相変わらず梨香はこだわりが強いね。私が教えたバンドずっと聴いてるのだってそう」


ブツッ……ブツッ……


相変わらずノイズが聞こえる。心なしか途切れる時間が伸びていく気がしてきた。嫌だな。やっぱ修理してもらえば良かったかな。

「梨香ー!梨香ー!」

一階から母親の呼び声が聞こえてくる。全くうるさいなと思いつつイヤホンを取り外した。「もう、聞こえてるのに」

「梨香ー……香ー!」

一瞬母親の声が途切れた気がした。ノイズの入った音楽を聴きすぎたせいかなと思いつつも梨香はあまり気にすることく、一階へ向かった。


ブツッ……ブツッ……


「ねぇ、梨香大丈夫?」

愛佳ともう一人の友人である栞が心配そうに話しかけてきた。

「最近ぼーっとしている事多いよ、何かあったの?」

「そうかな?うん大丈夫だよ。眠いのかなぁ?」

そういったが実はあれからノイズが常に聞こえてくるようになっていた。一日に数回から数十回ブツブツとノイズが入り周囲の音が途切れるのだ。途切れて聴こえるのは音楽プレーヤーのせいではなく自分の耳のせいであったのだ。病院に行ってもよくわからずにうやむやにしてしまった。そのことが気になりついうわの空になってしまう。

そんな梨香を見て栞は愛佳に耳打ちした。

「なんか最近ぼーっとしているときの梨香、いつもと表情が全然違って別人みたい。」


ブツッ……ブツッ……


「梨香、昨日夜駅前歩いていなかった?」

突然、隣のクラスの女子に言われた。しかし全然記憶にない。それだけではない。記憶にないことが、沢山ある。いつのまにか知らない本やCDが机に置かれていたり、親から昨日変な事を言っていたなどと言われることが日に日に増してきたのだ。ノイズが入る度に記憶が飛ぶような気がする。怖くなった梨香はついに愛佳に相談した。相談を受けた愛佳はすぐに梨香の家に泊まりに来た。

「私が見張っててあげる。」そういう愛佳に感謝しつつも自分の記憶が消えてその間に何が起きているのかと考えると梨香は不安でしょうがなかった。

何も起こらずに夜が更けてきた。二人は緊張感もゆるみつつ、眠りについた。

「結局、何も起こらなかったね」そいういう愛佳に対して梨香の顔は沈んでいた。


怖い怖い怖い怖い怖い。ノイズが入る度に記憶が飛ぶのが愛佳が帰ったとたん再発した。つまりこれは偶然ではない。だれかが意図的に操作しているんじゃないのか。だれかが私の記憶を奪っている。怖い怖い怖い怖い。怖い。


次の日から梨香は学校を休んだ。次の日も次の日も彼女は学校を休んだ。結局そのまま1週間休み、学校は冬休みに入った。愛佳たちは心配してメールをしたが返事が無く、家を訪ねたが体調が良くないからと親に断られてしまった。


結局、梨香からの返事が無いまま新学期になった。しかし意外な事に梨香は登校していた。

「どうしたの梨香、全然連絡取れなくて心配してたんだよ」

駆け寄った愛佳と栞に対して、梨香は意外なほど冷静だった。

「ごめんなさい。調子悪くて返事が出来なかったの。」

「そうなんだ、ノイズが聞こえるのは大丈夫なの?」

「ええ、もう大丈夫。もうあいつは消えたから。」


--アイツ?そういう梨香の顔つきは見れば見るほど今までと違う気がする。まるで別人のような……

本当にこの娘は梨香なのだろうか。妙によそよそしくなった梨香を不審に思う愛佳であったが初めはまだ調子が悪いだけかと思った。昼休みも周りとあまり話さずに音楽を聴いている。だが前の音楽プレーヤーは使っていない。


スマホで音楽を聴いている。


ただ気が変わっただけだろう。愛佳は自分にそう言い聞かせながら教室の隅にいる梨香であるはずの友人を見つめ続けている。


2015.12.5

もう少し練った方が良かった気もします。難しい。

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