表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/82

支配者たち

週一更新がデフォになりつつあります。お楽しみください。

「こっちは準備オッケーだ」

男からの合図にもうひとりの男は手元のスイッチを押した。

辺りは光に包まれる。ついにこの宇宙都市にも電気が通ったのだ。

「やった!完璧だぜ!」

喜び勇んだ男がピョンピョンと跳ねながらこちらへ飛んでくる。まだ重力装置が完全ではないようだ。

彼らは肩を組み、誇らしげに動き始めた宇宙都市を見下ろした。電気が通い、移動ステーションが血管をめぐる血液の如く人員を送り込む。まだまだ都市開発は始まったばかりだ。

「まったく、地球をあったかくしてくれて仕事までくれた宇宙人さまさまだな!」

この人類の作り始めた28個目の宇宙都市もやがて宇宙全体に広がり、地球人のみならず宇宙生命体全体へのインフラとなるのだ。


そんな地球人を満足げにラインハイン星人が見つめていた。

「いやぁ地球人とはよく働きますね。」

もう一人のラインハイン星人も関心しているようにつぶやいた。

「ああ、いまどき珍しい勤勉な宇宙人ですね。やはり支配者たちがしっかりと彼らを管理している為でしょう。君がこの交渉を行ったのですか?」

「そうなのです。地球人との契約が大変な利益をもたらしている為、今度成果をプレゼンする必要がありましてね。どうです?整理して説明するための練習として、良ければ今回の経緯を聞いていただけませんか?」

「よろこんで、是非伺いたいです。」


今回わたしが宇宙開発における労働者確保として地球に目を付けたのはまれに見る労働人口の割合の多さです。今どき惑星の知的生物が働いている割合は0.001%程度であるというのにです。もちろん地球内でも地域により割合も効率も異なり、また使用する言語まで異なるようなので、地球全体を統治する支配者を見つけるのは困難であると予想されました。支配者を探す上での条件としてはまず、一般的に支配階級は労働を好みません。いくら資産をもっていようと、あくせく働くのは支配階級とはいえません。労働を行わない分知的レベルは労働階級に劣りますが、それを凌駕する生まれついた気高さ、優美さが労働階級とはまったく異なる姿形で備わっております。さらにそれにより無条件で崇拝され愛される必要があります。わたしが見つけた支配者たちは、この星の一部では創造主とも称され崇拝されている地域や時代が見られました。これらの条件を満たした支配者たちは個体として存在ではなく世界中に分布する支配階級層として労働層を見守っているようでした。この星では独裁制とも共和制とも異なるただ存在する支配階級を崇拝しつつ成り立つといった変わった形式で統治が行われているようでした。


我々は慎重に支配階級とのコミュニケーションを図りました。独裁制であればトップとの交渉が成立すればそれで問題はないのですが、この星のように世界中に支配者たちが分散的に存在している場合には交渉が難航することが大いに考えられた為です。


ところが意外な事に彼らの要求は皆同じでした。支配者たちは地球が氷河期に突入している事を危惧していました。労働階級の発明した温暖システムによりほぼ外部に出る事無く生活が可能となっているにも関わらず太陽の光を求めているようでした。正直わたしは感動しました。多くの星でやはり支配階級は私利私欲に走りがちで自分勝手なその星でしか価値のない鉱物や、資産を求めるものです。にも関わらずこの星の支配者たちは皆、ただかつてこの星に降り注いでいたの太陽の穏やかな光を求めていたのです!


かわりに支配者たちは地球の労働者の提供を申し出ました。かれらは勤勉で労働に喜びを感じるというのです。対価は存在を認め支配者たちが”かまってやればよい”との事でした。


こうして契約は成立しました。


我々は太陽光システムを用いて地球に氷河期前の環境を再現させました。支配者たちは単純に温かさを求めていたようでしたが、労働者階級は再び植物が芽吹き生物が再び大地を駆ける姿をみて喜んでいるようでした。こうして地球人は我々の技術力を元により優れた宇宙都市を開発し始めました。その職人気質で作られた宇宙都市は宇宙中から需要があり、我々ラインハイン星人にも多大な利益をもたらしています。


「なるほど、素晴らしい。あなたはもちろん地球の支配者というのも素晴らしいですね。」

「ええ、プレゼン当日には会場に来ていただく予定なのです。よろしければあなたも是非ご覧ください」


こうして後日、地球との契約成功に関するプレゼンは大盛況で終盤を迎えた。

「それでは最後に地球の支配者から代表してピート氏にご来場頂きました。」

ラインハイン星人のわれんばかり拍手に包まれピート氏はゆうゆうと登壇した。


インタビュアーがピート氏に詰め寄った。

「あなたが、地球の支配階級の一員であるピート氏ですね?」

ピート氏はおもむろに答える。


ニャー(その通りだが)


そして今日も地球に降り注ぐ日差を浴びて、支配者たちはゴロゴロしている。


2015.11.20

読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ