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ゾンビネイション

ゾンビはいつも突然現れる。

奴らは人間を襲い、襲われた人間はゾンビとなり人間をまた襲う。気が付けばゾンビは増え続ける。

原因不明のゾンビ化現象は各地で発生しパニックは加速するばかりであり、その数に政府も対応しきれず、もはやゾンビにより人類は滅亡かと思われた。


しかしある日を境に人が襲われる事が減少した。後に社会学者が分析するにはアノミー現象の脱出であったという。つまりゾンビ化によりパニックを起こした人々(ゾンビ共)はパニック状態で無意識に仲間を求めて急襲をくりかえす無秩序(アノミー)状態だったという訳だ。ある程度数が増え落ち着きを取り戻したゾンビ共は人を襲わなくなり一種のコミュニティを形成した。


ゾンビに関する研究も次第に進み意外と彼らにも知性があることが判明した。ゾンビの対応も問題になった。人間ほど品質にこだわらないとはいえゾンビも食事や住居が必要である。国中にあふれるゾンビを食わせる予算は政府にはないし税金で賄うことに国民が同意するとは思えない。そこで提案されたのがゾンビを労働力として使用する事が出来ないかという案であった。むろん反対の声は多くあったが現実に存在するゾンビの前になし崩し的にゾンビたちは労働力として投入されることとなった。


始めはトラブルが多かったがゾンビの労働であったが、文句も言わずに黙々としかも低賃金で働くため次第に重宝されるようになった。またある特定のパッケージの売り上げが伸び始めた。一例をあげると映画であればショーンオブザデッド、ゾンビーノ。漫画であれば流血鬼、さんかれあ、アニメであればこれはゾンビですか。といった具合だ。ゾンビにも可処分所得が増えてきたのだ。逆にデッドライジングなど一部作品には暴力的ではないかというクレームが寄せられた。


意外とゾンビは商売になるのではないか。人々がそう気づくのは時間の問題であった。ゾンビを主人公にしたテレビドラが深夜にひっそりと開始されると意外と視聴率がとれ、ついにはゴールデンタイムにも進出した。人々がテレビを観なくなった今ゾンビは貴重な視聴者となっていた。ゾンビは集団で過ごすことが多く一人のゾンビに伝わった情報はすぐにコミュニティに伝達される。この特性もCM効果が絶大であった。いくら数が多くても国全体から見れば少数派であるゾンビはゾンビ向けと銘打った製品は飛びつくように購入してくれるのだ。金になると擁護する者がつくのは自然な流れである。自称ゾンビ評論家の識者が現れ、したり顔でゾンビについてのロビー活動を始めた。


「我々は生命に関する定義を変える必要があります。ゾンビだって生きているのです(?)今、ゾンビの方々はひどい扱いを受けています。労働に会する対価も人間と比べてはるかに安い。同じ労働をしている以上は同額にするのは当然ではありませんか。ゾンビ政策費用として彼らは税金もとられているのですよ!」


テレビも映画も雑誌もゾンビが金になるとわかると批判の声はなくなりゾンビを持ち上げる情報を流し続けた。今ものを売りたいのならまずゾンビの心をつかむ必要がある。これが広告代理店の合言葉であった。テレビ局も視聴者の区分としてf1層ではなくz1層を狙うべきと考えていった。


ゾンビの消費が増えるにしたがってゾンビ側の知能も上がっていくようであった。生活必需品も次第に品質や機能性の向上が求められ、食事にも生体維持以上の意味づけが求められ始めた。見る映画や小説なども内容レベルも向上していきゾンビはもはや馬鹿ではないという事は周知の事実になりつづあった。


ゾンビ独自の文化が栄えるとゾンビこそかっこいいのだとわざとゾンビになりたがる人間も出てきた。これは新たな社会問題となり文化侵略だなどと騒がれた。しかし所詮人間が作った文化ではないかという反発がついにゾンビ側のクリエイターを生み出すこととなった。知性が進歩するとゾンビに対する別の恐怖が人々の間で芽生えていった。人間がゾンビを襲う事件も目立ってきたが報道はあまりされなかった。


「最近はゾンビが優遇されてはいませんか。これは逆差別といってもいい。ゾンビというだけで仕事をあっせんしてもらったり就職が楽だったりするといいます。これはまったくゾンビたちの忌み嫌う差別ではありませんか。」

とあるコメンテーターが討論番組で発言した。するとその番組に出ていたあるゾンビがスピーカーメディアであるゾンボイス(ゾンビの言葉を翻訳する装置)を通して以下の反論をした。


「そんなにゾンビが優遇されているというのならば、あなたに噛み付いてゾンビにしてげましょうか?あなたも優遇されることとなりますよ」


この発言で開いてコメンテーターを黙らせたゾンビはテレビを見ていたゾンビたちから喝さいを浴びカリスマ的人気を集めた。ゾンビ評論家も含めて彼を祭り上げついにゾンビ議員が誕生することとなった。この時点でゾンビに投票権などは当然なかったのだが。


「もはやゾンビの知性は人間と変わりません。わたしゾンビ議員がなによりの証拠です。大学に行くだけの知性を持った者も既に発見されています。あとは制度と人々の意識を変えるだけです。」


ゾンビ議員は法案を次々と通し、ついにゾンビにも人権が認められた。むろん反感は計り知れないものであったが。しかし人間と異なり死ぬことも老いることも無いゾンビは知性をドンドンと伸ばしていき、要職に就くゾンビも珍しくなくなってきた。数百年後には人間をはるかにしのぐ知性の持ち主になるのではと言われ始めた。


そうするとゾンビこそが生ける屍の名のもとに永遠の生命を得て不老不死となり地上で最も知的な生物となれることに気付いた人々は進んでゾンビなりたがった。


かくしてついにゾンビによる人類の征服は完了したのである。


2015.10.04


書いていて自分はこういう話好きなんだと気づきます(笑)

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