刑罰
フレドリックの緊急脱出装置がその惑星に不時着したとき事件は既に始まっていた。
異星人との友好関係を結び、文化的経済的交友関係を結ぶ。そんなミッションの為に地球から派遣されたフレドリックであったが宇宙船の事故により乗組員は散り散りとなってしまった。一人ぼっちで宇宙を彷徨い、もはやこれまでかと覚悟を決めてた最中偶然にもこの惑星を発見し不時着をすることが出来たのだ。フレドリックは辺りを見回して驚愕した。この星に生物がいるのかなど確認する暇もなく四方を異星人に囲まれていたのだ。
遠くに見える建造物からかなりの知的水準の生物であることがわかる。計器で確認すると酸素もあり気圧や温度など十分人間に耐えられそうな惑星だ。
フレドリックは思い切って脱出装置から飛び出し交流を試みた。なにしろ異星人との交流を目的として派遣されているのだ。未知の生物との交流に関しても訓練済みだ。両手を挙げて戦う意思が無いようゆっくりと話す。
「わたしは地球という太陽系の惑星からきた。戦う意思はもちろんない。あなた方と友好関係を結びたい。」
翻訳機が同時に複数の宇宙言語をあらゆる周波数で翻訳して伝える。意味がないかもしれないが笑顔は絶やさないようにする。
辺りの異星人はみなフレドリックの方を指さし何やら話しているようだ。あまり雲行きが良くない。そんな予感がしたフレドリックであった。だが彼らが指さしているのがフレドリックの後方である事に気付き、そちらを振り向いた瞬間、フレドリックは事態を飲み込むことが出来た。と同時に彼の作り笑顔は引きつった。
異星人の一人が脱出装置の下敷きになっていたのだ。
フレドリックは捕えられ投獄された。時は流れたがどのくらい経過したかはまったくわからない。地球とは位置も大きさも公転速度も異なるの為太陽を見て判断という訳にもいかない。体感的にはそれは何年にも感じられたが、一週間程度の事だと言われるとそうかもしれないと思われる。
捕えられた監獄は壁がすべてグミのような弾力性をもつ不気味な部屋であったが、その部屋が突然形を変えフレドリックを円卓の中心とするような構造になった。円卓には異星人たちが並んでいる。
『貴様の名前はフレドリックで間違えないな』
異星人の一人が話しかけてきた。それはあの時下敷きにした異星人ではないだろうか。驚いたフレドリックが
「あなたはあの時下敷きにしてしまった方ではないか?申し訳ない。それにしても地球の言語を理解しているのか?」
というと、異星人はさも当然だといった態度で話を続けた。
『質問に答えろ。我々は貴様らとは文化レベルが違うのだ。言語を習得するのなど簡単だ。』
渋々フレドリックは名前に間違い無いことを認めた。
『フレドリック、貴様はわたしを負傷させた。これは許されぬことだ。我が星のルールにのっとり貴様には刑罰を下す。』
「わざとじゃない、過失だったんだ!」
『過失であったも罰は下される。貴様の星でもそうであることは調べがついている。我々は今回の事態により貴様の星の文化を調査したのだ。逃れることは出来ん。』
フレドリックは絶望した。いったいこのままどうなってしまうのだ。いったいどんな罰が。
『むろん罰も貴様らの星の文化圏に併せて行われる。貴様らの星では時代や地域により様々な苦しみが記述されていた。我々はその中であらゆる時代地域で普遍的なものを一つ抽出した。その罰を貴様に下す』
フレドリックは震えた。いったいどんな酷い目にあわされるのか。すると円卓の端から複数の異星人が現れた。といっても他の異星人とは異なり地球人によく似ている。それもすべて女に見える。
やけに艶めかしい異星人に囲まれフレドリックはどぎまぎした。
『貴様にはこいつらと結婚をしてもらう。我々は貴様の星の普遍的な言葉の中から以下を選択した
”結婚は人生の墓場である”
この言葉により貴様は結婚の刑に処する。それも相手は1人ではない、罪の重さに併せ結婚相手は7人用意した。甘んじて罰を受けよ!』
異星人であったが7人の彼女らはみな可愛らしい顔をしており、嬉しそうにフレドリックに話しかけてくる。
話してみると皆やさしく愛情が溢れていた。
まったく、文化交流が目的だったのに少し歪んだ形で地球の文化が伝わってしまったな。そう思いつつもフレドリックは顔がニヤケてしまうのを隠すのに必死であった。
完
15.09.21




