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●第50話(謀)

 ※あらすじはイメージであり、実際の内容と異なる場合がございます。

 ※また、あらすじ、本文、後書きは予告なく変更する場合があります。

 傷口すら閉じる気配がない足の怪我。何が酷いって馬車が揺れるだけで痛くて痛くて、棺桶の中から出たくない日々が続いたり。

 毎日僕の傷を診ていたドゥールは、さすがに魔法で治した方が良くない? って言ってくれてるのに、フリギアに足を治療する許可をもらえないまま、数日が経って。


 やっぱりフリギアは鬼で悪魔だったことを実感した最近、僕らは目的地に到着した。


「シアム、ミノア、悪いんだけど馬車から降りて」

「あ、うん! ちょっと待って! ミノア、行こうね」

「うん」


 馬車の外、前方から聞こえたドゥールの声に、痛む足をゆっくり動かして外へ出る。

 結局、ここまで来ても傷が治る気配がないんだけど。どうなってんの、僕の自然治癒力。

 怪我が治らないのも困るけど、包帯したまま靴を履くのが嫌だったり。なんか感触が、こうね、気持ち悪い…ううう。


「んん…疲れたあ!」


 それでも、久々の地面と幌に覆われてない世界はたまらない。

 怪我に響かないよう気をつけながら大きく伸びをすると…気持ちいい!

 ああ、この開放感! これがたまらない!


「あ、ミノア大丈夫?」

「うん」


 続いて幌から顔を出したミノアの手を取って、ささどうぞと馬車から降ろす。

 鉄壁の無表情で、僕の腕に掴まるミノア。だけど、僕の腕をぶらぶらさせてたり。やっぱりミノアも久しぶりの外が嬉しいみたいだ。 


 そんな久々の外は、ちょっと湿っぽい空気で、生憎の曇り空。雨は降りそうにないけど…と、辺りを見回す前に視界に映った光景。


「うわ……」

「長旅お疲れね、シアム。ここが…」


 ドゥールは驚きで固まる僕の顔を前に、自慢げにソレを指し示し。


「えっと、ほら、ここが……そう! ナントカ王国! どうよシアム! 憧れのナントカ王国だよ! シシシシ!」


 ドゥールは僕の顔を見て、豪快に笑った。豪快に笑って何かを盛大に誤魔化した。


 でも。


「…国って、こんな巨大な門が、ある、んだね。うわぁ…すごい…」


 そんな誤魔化しが気にならないほど、眼前のソレは圧倒的な存在感を持って鎮座していた。

 首が痛くなるほどの高さがある、城門。それが視界一杯に広がっている。所々、魔法陣のようなモノが彫られてる壁が、ずっと奥まで続いている。

 白亜、というには少し汚れているけども、白い城壁と城門は圧巻の一言だ。本当に、凄い。

 ふと気付いたけど、門の上にも動く人影がちらほら見える。多分見張りの兵士なんだろうけど、でも、これって足でも滑らせて転落したら即死、だよね…?


「怖い怖い…」


 それに、この人の多さ! 僕らは割りと城門近くにいるけど、背後にも沢山の人が中に入るために待機している。

 一人旅をしているような人や、集団で商売でもしてるのか馬車を何輌も引いている人。豪華な馬車があると思えば、乗り合い馬車も止まっている。

 その一つ一つに兵士たちが集まり、渡された紙を手にして数人で荷物や素性の検めをしている。


 城門の周囲だけ人が多過ぎて、暑い。ふと見れば、色んな人が、髪の色や肌の色、目の色が異なった人たちが中に入ろうと待っていて。

 ドゥールのようなエルフや、小柄だけど筋骨隆々としたドワーフ、耳が魚の鰭のような形をした人魚など種族も様々で、交わされてる言語も違うものがあったり。

 そんな人たちを目当てにした露店までずらりと並んだりして、ちょっとした市場だ。凄い賑わっている。


 多くの人が行き交うために、見慣れない紋章をつけた兵士の数もかなり多い。

 目にするもの全部が全部珍しくて、つい眺めてると背中を突かれる。


「シアム、ぼへっとしてるとぶつかるよ?」

「あ、ごめんドゥール」

「いいって。そうそう、この城門って昔々、その昔、お偉いドワーフたちが丹精込めて造ったんだってさ」

「へえ…」

「何度かの戦争を耐え抜けた、由緒ある城門と城壁だよ」


 ケラケラ笑い、ドゥールも大きく伸びをする。人の多さに驚くばかりだけど、言われて再度石造りの門を見上げる。

 ところどころ傷があるのが気になるけど、それも深いものはないし、本当に立派なものだと思う。

 ふと近くで声が聞こえて振り向くと、いつの間にか兵士が数人来ていて、馬車の中を検めている。

 ドゥールは後ろ手に、その様子を退屈そうに眺めている。


「あれっ?」

「どしたの、シアム」

「フリギアたち、なんか偉い人なんでしょ? どうしてこんなことしてるの? 前みたいに普通に通してくれないの?」


 嫌々気付かされたことを交えて訊ねてみれば、ドゥールは耳を動かしながらニンマリと笑う。


「規則だから仕方ないんだよ。もしかするとオレらが不審な物、持ってくるかもしれないじゃん?」

「そんなわけないのに……徹底してるんだ。さすがナントカ王国」


 関心しきりな僕へ、エルフの少年も大きく頷いてみせる。

 なのに、続けて放たれた言葉といえば。


「小銭渡せば、目瞑ってくれるんだけどね」

「えっ? うそっ」


 衝撃発言に驚いて叫ぶと、すぐさましてやったりな笑い声。だ、騙されたっ!


「なあんてね。城門任されてる兵は、皆職務に忠実だし?」

「本当に? その言葉、信じていいんだよね?」

「やだなあシアム、人を疑っちゃ駄目じゃん」

「ドゥールには言われたくないんだけど!」

「そりゃそうだね! キャハハハハ!」


 憮然とする僕に、大笑いするドゥール。そんな僕らの元に、兵士たちが一列で揃う。どうやら馬車の点検が終わったっぽい。

 軽装とはいえ胸部を守る鎧を着込み、武器を携えた兵士が並ぶと、結構怖いものがある。

 その腰に下げた武器たちは使い込まれたものが多くて、見せて欲しかったりするけども話しかけづらいし、何より怖い。


 兵士たちの武器も気になるけど…と、今度は兵士たちを前に平然としているエルフの少年を盗み見る。

 あんまり知りたくなかったけど、ドゥールは幼い見た目と軽い口調に反して、偉いエルフらしい。

 日頃の言動からは想像もつかないけど、なんて考えてたら、兵士の一人が代表して口を開いたので思考が止まったり。


「ドゥール様、検め終わりました。どうぞお通り下さい」

「ご苦労ご苦労。そうそう、フリギアは先に行ったから、そこんところよろしくね」


 え? と思ったのは僕だけ。

 確かにフリギアの姿はなかったけど、それは兵士たちと何か打ち合わせでもあるのかと思って。

 まさか、先に行っちゃうだなんて思ってもなかった。


 僕は驚いてたわけだけど、隣にいたミノアは杖を片手に、門を通り抜ける人や馬車を見ていて、何の反応も返さない。

 兵士は兵士で驚くことなく門の内側へ、城下町へと顔を向けて頷いてるし。

 …えっと、これって普通のことなの?


「はい。先ほどクラヴィア様がいらっしゃったので、そうかと」

「やれやれ。いつもだけどクラヴィアは耳が早いなあ。君たちも大変だねえ」

「いいえ。いつものことですので」


 そう言った兵士は苦笑して城門の先へと身体を向ける。

 それに対してドゥールは鷹揚に頷いてみせ、これまた偉そうに手を振って馬車へ戻る。

 でもって、城門を見学していた僕と人ごみを見学していたミノアに声をかける。


「シアム、ミノア、面倒なことは終わったし、とっとと行こ」

「えっ? フリギアは? いいの?」

「大丈夫大丈夫。フリギアの行く場所、分かってるし」

「うん…じゃあミノア、馬車に戻ろってあれ?」


 数秒前まで隣にいたはずのミノアの姿がない。迷子? 迷子なの?


「ミノア? どこいったの? おおい!」


 ちょっと、こんな人ごみの中じゃ小さいミノアなんて見つけられないよ!


「ミノア、ミノアってばどこ?」


 困った困った、ときょろきょろしてたら、馬車から両手に何かを抱えて、ミノアがやってきた。









 お久しぶりでございます。やる気が戻ってきましたので続けてみようと思います。相変わらず色々と後ろ向きですが、よろしくお願いします。

 但し、更新速度は前回、前々回以上に遅くなる可能性が高いのでご了承を。


 また、前回、前々回より続けて目を通して下さった方、有難うございます…有難うございます。

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