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第一話

 俺は勇者エメルソン。

 苦労の末、強大な魔王を倒し、囚われていた姫を救出した。

 今、姫を馬の後ろに乗せて王が待つ王城へと凱旋するだけだ。

 するだけなのだが、何だろう、さっきから姫が一言も喋らない。

 何だろう、やっぱり俺にがっかりしたのか?

 俺、格好悪いとは思ってないが、姫が気に入るほどの美形でもないし、俺みたいなのが助けに来てがっかりしてるのか?

 だってさ、俺も見て驚いたけど、姫、めっちゃ美人じゃん?

 絶対心に決めた美形がいるって!

 何だかんだで姫を助けた勇者って、そのまま王に許可されて姫と結婚するんだよな?

 俺みたいな勇者ってだけの十人並の面の奴が、こんな姫みたいな美人と結婚してさ、王族に入って生涯幸せに暮らすって。壮大なサクセスストーリーだけどさ。

 それに巻き込まれる姫ってどうなのよ?

 俺みたいな奴と結婚して、一生俺に尽くして終わるんだぞ?

 ちょっと油断して魔王に攫われたことを一生後悔して行くんだろうな。

「はあ……」

 溜息ついた!

 今、姫が溜息ついた!

 やっぱ俺に救われたのが嫌なんだ!

 もっと格好いい王子様みたいな奴に救われたかったんだ!

 ごめんなさい、俺なんかが救ってごめんなさい!

 ……いや、何で俺がこんな卑屈になってるんだ?

 俺、こう見えて魔王倒したんだぞ?_

 魔王自体そんなに強くなかったけど、魔王城の雑魚はそこらのボスクラスだったし、四天王は本当に強かった。

 何とか倒してもう、息も切れ切れの時に魔王が現れた時は卑怯くせえと思ったが、何だか長い口上言い始めたので、そこで息を整えて何とか倒した。

 そこまでの事をやったんだ、もうさ、何かご褒美くらい欲しいよな?

 とりあえず、一生食うに困らないくらいの財産と、俺を心の底から尊敬し、生涯を共にしてくれる美しい伴侶は欲しい。

 いや、もちろんそれ目的で魔王を倒したわけじゃないけどさ、それくらいしてもらってもいい事したと思うんだ。

 そうなるとさ、まあ、財産は王がくれるとしても、伴侶はやっぱり助けた姫じゃね? セオリー的にもさ。

 それが嫌ならそりゃあ仕方がないけどさ、多分空気的にお前こいつと結婚しろよってプレッシャーになると思うけどな。

 もうさ、姫が心で嫌がってても、くっつく運命にあるんだって、お気の毒だけどさ。

 魔王から姫を助けた勇者が姫とくっつくのはもうさ、伝統芸? お約束? そういうもんじゃんさ。

 だからもう、ここはあらかじめうろたえないように姫にも言っていこうか。

「姫よ」

「は、はい?」

 突然話しかけられた姫が戸惑いながらも返事をする。

「これも運命だ、諦めてくれ」

 もう、あなたの恋する美形とは付き合えないんだよ……。

「え……?」

 俺は、残酷なひと言を告げる。

 重く苦しそうに告げる。

 本当に、心から申し訳ないとは思っているんだ。

 姫は最初、何の事だか分らなかったんだろう、だけどすぐにはっとなって息を呑む。

「そんな……」

 姫が物悲しげに、呻くような声で言う。

 残念だけど、イケメン王子は諦めてくれ。

 貴女にはもう、俺しかいないんだ。

 そして、俺とあんなことしたり、こんなことしたりして、生涯退廃的に暮らしていこう。

 もうね、その胸とか俺のもんだからさ!

 今から揉ませてもらってもいいんじゃないか?

 俺は手を伸ばしてみる。

「もう、あなたと生涯を共にすることは出来ないのですね」

「はい?」

 俺は思わず手を引っ込める。

「あなたには、運命の人がいらっしゃるのですね」

「え? いや、そんな人別に──」

「いえ、おっしゃられなくても分かります。先ほどから私に何か言いたそうでしたし……」

 なんかだ姫は、俺が口をはさむ暇もなく言葉を繰り出す。

「確かに私は助けていただいた方と将来を共にするつもりでおりました。おそらくお父様もそれをお許しになると思います。ですが、あなたに運命の人がいらっしゃるのでしたら、話は別です。私は諦めます」

 あれ? なんでこんな勘違いしてるんだ、この人?

「いや、あのですね、別に私に運命の人なんて──」

「もちろん、お父様にもそのように説得いたします。どうか安心して、お国にお帰りください」

 なんだか反論を許さない姫の表情。

 俺は圧倒されて、それに従うしかなかったわけで。

 そして、王城まで到着すると、「お父上にお会いするとそんな話が出るかもしれませんわ」とのことで、俺は姫を送るだけ送って王城を後にした。

 そして、何の報酬も手にしないまま、いもしない運命の人に会うために、再び旅に出た。

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