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身売りっ娘 俺がまとめて面倒見ますっ!  作者: エール
第3章 時空を超えし妹と花嫁
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第四十六話 パニック

 だが、よく考えるとアキがそういう状況になってもおかしくない。

 自分がもし同じ目にあったら、どうだろうか。


 帝都大学の階段を転げ落ちそうになり、慌てて衝撃に備えて腕を前に突き出し――気がつくと江戸時代、そして壮大な神社での儀式のまっただ中に放り出されていた。


 その時点でなにが起きたかすぐに理解できるはずもない。


 神事をしていた男達に、「どこから来たのか」、「お前は誰なのか」と問い詰められる。

 自分自身、訳が分からない状況にパニックに陥って、何も答えられなくなってしまう……。


 その時の状況が目に浮かぶようだ。

「アキ……」

 心配になり一言、名前をつぶやく。


 隣の優は、それを聞いて悲しそうな、申し訳なさそうな表情になった。

 少し慌てて「君のせいではない」と慰めるが、相当自責の念に駆られているようだ。


「……それに、巫女になっているっていうのも気になるわね。酷い目に遭っていなければいいけど……」

 お蜜さんが心配そうに語る。


「酷い目? 巫女って、そんなにつらい仕事なんですか?」

 そんなふうには考えてもいなかったので、少し慌てて質問する。


「ええ……巫女は、神に歌や舞を捧げるっていうのが主な仕事だけど……一部、有力な氏子の『夜のお相手』をすることもあるの」


「……なっ……ばかなっ! 巫女って神に仕える、神聖な職業なんでしょう? そんな事があるはずがないっ!」


 思わず声を荒げてしまう。

 隣の優も驚きで目を見開き、口元を手で塞ぎ、首を横に振っている。


「神に仕える神聖な職業だから、よ。神聖だから、その価値が高いの。神に仕える少女達と結ばれるって言うことは、つまり、神と結ばれるに等しいという考えなの。もちろん、全員がそういうわけじゃないし、そういうのを禁じている神社の方が多いけど……少なくとも、『明炎大社』は『身売りされた少女』を買い取って、『そういう巫女』にしているわ。そしてそれがこの組織が勢いを強めている一つの要因でもあるわ」


 情報収集に長けた『忍』であるお蜜さんが、淡々と語る。

 信じがたいし、現代ではあり得ない事だが……この時代には、そういうことがあったのか。


 あるいは、優や、他の女の子達も……運が悪ければ『巫女』として『明炎大社』に買われ、氏子達の相手をさせられていたのかもしれない。


 いや、そんな仮定よりも……今はアキの事を考えなければならない。

 まさかとは思うが……アキが、そんな目に遭っていることがあるのか……。


 妹のアキは、まだ中学生だ。


 俺に対しては、ちょっと生意気なところはあるし、たまにケンカすることもあったが、それでも仲はいい方で、二人で買い物に出かけたりすることもあった。


 人見知りせず、可愛らしい顔立ちで、異性にも同性にも親友がいるようだ。

 同級生から告白された、と困惑しながらも、少し嬉しそうに相談されたこともあった。


 小柄な事もあり、俺から見ればまだ子供だと思っていたし……十四歳、思春期を迎えた彼女がそういう目に遭っているなどとは、考えたくもない。

 しかし、この世界、この時代では、俺の常識は通用しないのだ。


 すっと立ち上がり、外へと向かおうとしたが、三郎さん、お蜜さんに止められた。


「今動くときではない。もっと準備を、作戦を練ってからでないと、会うことすらできないぞ。もう夜中だし、大体、『明炎大社』の場所を知っているのか?」


 ……確かに、俺は目的の場所すら知らない。

 しかし、それでも、気が気ではない。

 お蜜さん、三郎さんに必死に説得され、とにかく、今夜は今後の段取りを決めるという事にしたが……ただ、その前に、今の状況を報告しに現代に帰る必要があった。


 母に現状を伝えることは到底できないが、帝都大学准教授である叔父には相談すべきだ、とも考えていた。


 『ラプター』を用い、現代へと帰ると、この日も叔父は家に来てくれていた。

 そこで狼狽しながらも、現状について簡潔に話した。


「……ふむ。『忍』を名乗る男女二人組か。興味深いが、今はそれよりも君の妹の事を最優先で考えるべきだな」

「はい……。酷いことをされていなければいいけど……よりによって、そんな場所に偶然飛ばされるなんて……」


「偶然? その神社の『神事』に彼女が出現したことが、『偶然』の一言で片付けられるものなのか?」

「えっ……そうじゃないんですか?」


「……ずっと疑問に思っていた。君の妹が、なぜ君や優さんと数百キロも離れた江戸に出現したのか」


「……確かに。俺が最初、ラプターで江戸時代に出現したときは、日本の中で、実家とほぼ同じような位置だった」


「そうだ。それは恐らく、時空間移動にあたり、他に外的要因がなかったからだ」


「……じゃあ、まさか……アキが『明炎大社』に出現したのは、その『神事』の影響だと……いや、そんなことはあり得ない」


「『あり得ない』と、なぜ言い切れる?」


 ――叔父の瞳が、いつもに増して鋭く輝いた。


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