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覚悟の強さ

「一夜限り、か……結局、話が一回りして戻ってきただけだな……」


 俺は苦笑した。


 これだけの大きな戦に巻き込まれ、大変な目に遭いながらも、如月が選んだのは村のしきたりに従う、ということだ。

 彼女たちは、村に新しい血を残すために、村を訪れた見ず知らずの男達の相手をしなければならない。


 それは奥宇奈谷が隔絶された世界であったからだ。

 それで子を宿し、産んだなら、その子は村全体で大切に育ててもらえるという。

 二十五歳をすぎたならば、村の好きな男性と結婚し、家庭を持つことができる、という点も、そのしきたりでは考慮されていた。


 隧道が完成し、行き来がしやすくなった今、それに従う必要も無い。

 もっというならば、彼女は奥宇奈谷に留まる必要すら無いのだ。


「拓也さんは、それは嫌……ですか?」


 俺の瞳をのぞき込むように、可能はそう尋ねてきた。

 彼女は俺の心を読める。

 本音を、正直に言う。


「俺は、本当に如月に、ずっと一緒に居てもらいたいと思っていたから……そういう意味では、ちょっと残念、かな……」


 如月は、奥宇奈谷でも随一の美女だ。そして、俺が「女好き」というのも、実は噂だけでは無いのかも知れない。


 奥宇奈谷、崖登りをして最初に彼女と出会った日。

 そして月下の温泉にて、彼女と混浴し、裸を見てしまった時から……俺の中のどこかで、いつかそうなることを望んでいたと思う。


 しかし、今の嫁達に、さすがにこれ以上増やすのはどうかという気まずさもあり……複雑な心境だった。


「私は、弥生姉さんが酷い目に遭っているところを見てしまいました……正直、怖いです。でも、拓也さんなら……」


 涙を溜め、覚悟を決めたようにそう言う如月。

 そう、彼女にとっては、単に村のしきたりに従うというだけでは無く、受けてしまった心の傷を克服する機会にしたいと思っているのだ。


 さらにいうなら、この時代で仙人としていろんな人と接してきた俺も、ある程度、相手の心が読める。

 そして気づいていた――如月が、俺に対して憧れ、恋心を抱いていてくれていることに――。



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「身売りっ娘」書影
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