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拓也の回想 その19 ~ 夜襲の計画 ~

 睦月と二人で、彼の右腕であるクロウのこと、そして実の妹たちについて語り合った俺は、それが一段落したところで、盗賊団『山黒爺』との対決に向けて、まずは二人だけで作戦を練った。


 その方が話がまとまりやすい、ということもあるが、俺の「仙人としての能力」すべてを明かすのは、なるべく限られた信頼の置ける人物だけにしたかったからだ。


 まず、瞬間移動能力について。

 腕時計型の時空間移動装置『ラプター』を両腕に、計二個装着している俺は、江戸時代と現代を瞬時に往復することができる。その際、『事前に登録している場所への移動』も可能であるため、それが結果的に瞬間移動、という形で実現する。


 ただし、いくつか制約がある。

 まず一つが、その『場所の登録』のためには、一度はその場所にたどり着いておかなければならない、ということだ。


 また、二つ目が一度に運べる荷物の重量制限。

 ラプターで時空間移動するためには、自身の体重も含めた総合計が約80キロ以内でないといけない。

 俺の場合、体重は60キロなので、運べる荷物は20キロ以内、ということになる。

 ということは、必然的に「二人で同時に移動」ということは無理だ (小さな子供は除く)。


 三つ目が、一度往復すると、ラプターの使用は3時間できなくなってしまうということ。

 つまり、一日に往復できる回数には制限が出てしまう。

 これらの欠点を説明すると、頭のいい睦月は、


「そうすると、かなり周到な事前準備が必要だな……」


 と理解してくれた。


 俺が現時点で考えている盗賊団『山黒爺』の撃退方法は、簡単に言えば『夜襲をかける』だ。

 しかしそのためには、「いつ、どこに奴らがいるのか」を正確に把握する必要がある。


 ラプターの使用回数に制限がある以上、ある程度ピンポイントで場所を絞っておかないと行けないのだが、幸いなことに、奴らがねぐらとしている場所は、数カ所だが把握できている。

 俺ならば、一日6カ所ぐらいは巡回することができる。

 そこで一つでもヒットすれば、その情報を元に狩人衆や松丸藩士達を誘導し、一気に包囲したり、おびき寄せて一網打尽にする、というのが俺のシナリオだ。


 だが、如何に状況を有利に進めて不意打ちしたとしても、そのままでは味方にも怪我人がでる。

 そこでさらに策を考える。


 以前、海賊団を壊滅に追いやったときは、ドローンでガソリンと火種を投下して船を燃やす、という荒技をやってのけた。


 しかし、今回は山岳地や廃村、山寺など、火事になりやすい場所なので同じ手は使えない。

 また、重いものを上空から落とすというのは有効な攻撃方法であるが、下手をすれば直撃した者の命を奪う。


 現代に生まれた俺が、三百年前の人たちを殺してしまうことはあってはならない。

 直接時空が繋がっているわけではないので、現代に影響が出ることはないが、そこは気持ちの問題だ。


 また、盗賊団といっても、村人全員を皆殺しにするような極悪非道、というわけではない。

 抵抗さえしなければ、命までは取られないことの方が多いという……もちろん、それは善意からのものではなく、その方が次回また襲撃したときに楽に略奪できるための悪知恵なのだろうが。


 とにかく、滅多に人を殺めることがない……いや、殺めたことがないような盗賊を、俺がいきなり殺すことはできない。


 甘いと言われるかもしれないが、それが俺の決意だ。

 睦月からは、


「生け捕りの方が難しいと思うが、なにか手段があるのか?」


 と、当然のように聞かれたのだが、そこで俺はある道具の説明をした。


「……そんなもので、本当にあいつらを屈服させることができるのか?」


「いや……もちろん、それだけで戦うことはできない。それとは別に、もう一つ、武器を使う」


「武器? ……この奥宇奈谷では、武器や防具の類いに困ることはないと思うが……」


「いや、そういう『相手を傷つける武器』を必要としているんじゃない。相手を動けなくする武器だ……さっきのあれにも同じ仕組みを使う」


 俺は、その原理を簡単に説明した。


「……雷を落とす、だと? ……そんなことができるのか?」


「あんたは、俺が嘘を言っているかどうか分かるんだろう?」


 自信を持ってそう言い切る俺に、睦月は、目を見開いて驚いていた。 

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「身売りっ娘」書影
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