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身売りっ娘 俺がまとめて面倒見ますっ!  作者: エール
第17章 漆黒の幽霊船
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第283話 急展開

 この日の午後、俺は城内の表御殿で現阿東藩主、郷多部元康公に謁見した。


 内容は、もちろん蛇竜海賊団の壊滅を実施することになった顛末の説明だ。

 一応、事前に非公式に直接説明はして了承を得ていたのだが、想像以上に黒煙が立ち上ってしまい、どうやら隣の藩からも問い合わせが殺到する事態になってしまったらしい。


 もちろん、同じ阿東藩内の家臣達はそれ以上の大騒ぎになっていた。

 一口に藩内と言っても、現代で言うところの大阪府の半分ぐらいの大きさはある。道が整備されていない地域もあり、連絡が届くのが一日遅れになる箇所だってあるのだ。


 後で分かった話だが、そんな地理条件なのにも関わらず、立ち上る無数の黒煙は、藩内のほぼ全ての箇所から見えてしまったという。城が海に近い立地条件と言うこともあり、突然の他藩の侵攻を受け、戦に巻き込まれて城や街が燃えたのではないか、と心配した地主もいたそうだ。


 海賊団に対する攻撃方法については、


「どうせ聞いてもはぐらかされるのだろう?」


 と、本気で聞かれなかったが、一応、元々は兵器でも何でもなく、空を飛んで荷物を運ぶだけの物を利用して、上空から油と火種を落とした、とだけ説明した。

 それでも十分に驚かれたのだが、


「これは悪用されると危険なため、今後は滅多なことがない限り、今回のような使い方はできません」


 と正直に告げ、納得してもらった。

 また、今大騒ぎになっているこの状況、困った事態ではあるが、大きな被害が出る前に海賊団を壊滅させたということで、俺は褒められることはあっても、叱責されることはなかった。


 そして対外的には、阿東藩の総力をもって海賊団を退治したことにした。

 藩内にも同様だが、俺の秘策(仙術とは言わない)も有効活用した、と説明するのが落としどころとなった。


「まあ、そのように公式発表しても、拓也殿の大仙術で海賊団を滅ぼしたという噂が広まってしまうことになるのだろう、それは仕方がないな」


 と、元康公は豪快に笑って済ませてくれた。


 その予想は的中し、松丸藩の重鎮であり、盟友でもある東元安親公から、会って話しがしたいという旨の(ふみ)が届いた。

 もちろん、無視するわけにはいかない相手だ。

 しかも彼は、『黒鯱』および『蛇竜海賊団』の存在も知っているので、余計に説明が面倒臭い。どうやって倒したのか、などを、根掘り葉掘り聞かれるんだろうな……。


 とりあえず、阿東藩主への謁見をなんとか無事終わらせた俺は、やはり薰の事が気になって、前田美海店に立ち寄ってみた。


 夕方である今の時間は、まだ『夜の部』の準備中で、客はいないはず。少しぐらい話をしても大丈夫だろう、と思ったのだ。


 暖簾が出ていない店の引き戸を開けると、そこには、何なぜかナツの他に、凜、ハル、ユキ、そして優と涼……つまり、俺の六人の嫁達が勢揃いしていた。

 もちろん、薰もいたのだが、その他の従業員は誰もいなかった。

 そして、その光景に唖然としている俺を、嫁達は一斉に見つめて、次に揃ってその視線を薰に向けた。


「……ほら、言った通りでしょう? 拓也さんは、必ずあなたの事が心配になって様子を見に来るって……」


 涼が、戸惑っている様子の薰の肩に手を置きながら、彼女にそう話しかけた。


「あ……でも、その……他に用事があっただけかもしれませんし……」


 なんか、今までに無いぐらい、薰はモジモジとしていた。


「……拓也さん、薰の様子が気になって来たんですよね?」


 と、凜が、そうじゃない、と言わせないような視線で、俺に語りかけてきた。


「えっと……まあ、そうだけど……どうしたんだ、みんな揃って……」


 特に否定する理由もないので、俺が素直にそう言うと、なぜか嫁達の表情が、ほっとしたような明るいものに変わった。

 状況が理解できない俺が戸惑っていると、


「ね、薰ちゃん、私達が言った通りだったでしょ? 後は薰ちゃんが勇気出すだけだよ」


「そうですよ。私達も応援するから、頑張って!」


 と、ユキとハルの双子まで、薰に言葉をかけていた。

 それに勇気づけられたのか、彼女は何かを決断したように頷くと、俺の方を向いて、真っ赤になりながらこう言った。


「拓也さん、あの……わ、私を……拓也さんの(めかけ)にしてくださいっ!」


 そして頭を九十度近く下げた。


 ――あまりの出来事に、俺は二、三秒、意識が飛んだように固まった。

 どうしていいか分からず、戸惑っていると、それを見かねたナツが、


「……私達は、『新しい嫁にしてください』って言った方がいいって忠告したんだけどな……そんなこと、恐れ多くて言えないんだってさ。で、私達は、妾じゃなく、嫁だったら、拓也さんがいいって言うなら反対はしないっていうことになったんだけど……どうする?」


 と、またもや衝撃的な事を言ってきた。


 その言葉に、さらに俺は数秒間固まった――。

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「身売りっ娘」書影
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