表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
身売りっ娘 俺がまとめて面倒見ますっ!  作者: エール
第14章(番外編) 捕らわれし姫君
194/381

番外編14-8 一大プロジェクト

 紅姫を助け出そうと決めたものの、事はそう簡単にはいかない。

 まず、彼女自身が自分の身に迫っている危険を知らない。


 『しゃべる鏡』を使って伝えたとしても、どうやって信じてもらうのか……。

 たとえ信じてもらえても、どうやって脱出するのか。


 彼女一人だけで抜け出すのは不可能だ。誰かが、迎えに行かなければならない。

 それができるのは、ラプターが使える俺だけだが、誰にも気付かれずに抜け出すことは無理だ。

 ならば、事前にうまく段取りが進むように、例えば浪人達にこの恐ろしい真実を伝えておけばいいのではないか……。

 どうやって?

 ほとんど会話したことさえない俺の言葉を、信じてもらえるだろうか……。


 彼女の身の安全を第一に考えるべきだ、いや、機を逃せばますます状況は悪化し、かえって窮地に陥ることになる……。


 たった四人の相談なのだが、事の重大さと、解決せねばならない問題の多さに、意見がなかなかまとまらない。

 安全策を主張するのは、紅姫とずっと鏡で会話してきた涼だ。

 時に感情を表に出して、


「そんな危険な手段、彼女にさせられるわけがないじゃないですか!」


 と、自分の意見を曲げない。


 対して、紅姫の協力が得られないのであれば仕方が無い、眠らせて担いででも脱出させるべき、と話すのは三郎さん。

 まあ、彼の体術ならばそれが可能なのかもしれないが、あくまでそれは最終、かつ最も危険な手段だ。何らかの陽動作戦を実施して警備を手薄にし、かつ、追っ手を撒く方法を考えねばならない。


 お蜜さんは、外堀から埋める案を勧める。

 つまり、浪人達を味方につける作戦だが……それに最も有効なのは、紅姫自身に彼等を説得してもらうことだ。


 しかし、そのためには紅姫をまず俺達が説得する必要があるわけで……その方法だけでも議論となり、話が前に進んでいかない。


 やがて三人は、


「拓也さんならどうする?」


 と、意見を求めてきた。


 そう言われても、俺にだって絶対的な妙案があるわけではない。

 さらに言うと、ラプターを使って潜入するという時点で、一番重要、かつ危険な役割を負わされている。

 本当は怖いし、逃げ出したいという思いだってある。


 だが。

 あんなに可愛く、あどけない姫君の未来が、薄汚れた大人達の醜い欲望の為に閉ざされてしまうなんて、絶対にあってはならない。


 俺は、三人の意見を、あえて何も反論せず、ただ持ち込んだノートPCに打ち込んでいた。

 意見を求められたので、俺も自分が考えたことを発言し、自分で打ち込んでいく。

 危険な案、突拍子もない案も。

 そのたびに涼が何か言おうとしたが、俺はそれを


「反対意見は後で聞く、まずはどんな理不尽な内容でも構わないから、案を出すんだ」


 と受け付けなかった。


 現代のブレインストーミングの手法であり、ノートPCにはそれをまとめるソフトも入っている。

 これは、俺が嫁達を集めて会議するときにも行っていた手法でもある。

 みんなが意見を出し過ぎてまとまらないことがよくあったから……。


 案を出し切ったところで、それぞれを取捨選択していく。

 三人は、意見をまとめていく俺のその手際に、感心してくれた。

 また、俺が発案した、現代の技術を利用した案は、比較的多く残った。


 夜を徹して議論を重ね、何度も練り直し、ようやく大筋で段取りが決まった。


 お蜜さんを総指揮とし、俺と三郎さん、涼が実行部隊となる。

 無線で互いに連携を取り、カメラやマイク、発信器やその他ハイテク機材を惜しみなく投入し、情報共有を徹底する。


 状況変化に臨機応変に対応できるよう、あらかじめ作戦をパターン分けし、『い』『ろ』『は』と名前をつけておく。


 難攻不落の城砦寺社から可憐な姫君を救出する一大プロジェクトが、数日以内に実施されようとしていた――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「身売りっ娘」書影
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ