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身売りっ娘 俺がまとめて面倒見ますっ!  作者: エール
第13章 妖怪仙女
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第百七十三話 四人での混浴 (江戸の湯屋編)

 その日の夕方、約束通り俺と優、店員の結と里菜の四人で湯屋に行くことになったのだが、実は俺も優も、その近所の湯屋に行ったことがなかった。

 店員の少女二人には驚かれたのだが、


「時空間移動して阿東藩の前田邸で内湯に入っていた」

 なんて事は言っても通じないだろう。


「江戸に来たばかりでこっちの湯屋の仕組みを知らず、体を拭いて済ましていた」

 ということにしておいた。


 さすがに江戸の湯屋、建物はそこそこ立派で二階建て、規模も大きい。

 ところが、番台より奥はかなり薄暗い。

 混浴だし、このぐらいの方が女性にはありがたいのかもしれないが……。


 ちょっと恥ずかしそうに着物を脱ぐ若い女性三人、俺一人ではガードしきれず、どうしても男性陣の視線を感じてしまう。

 だが、幸か不幸かこの薄暗さのため、ぼんやりと体つきが見える程度だ。


 この時代、女性の『裸を見られる』という意識は、現代で言うところの『水着姿を見られる』ぐらいのはずだ。

 死ぬほど恥ずかしい、ということはないようで、三人とも軽く手ぬぐいで隠す程度の裸になった。


「……あれ、優さん……ひょっとして、そのお腹……」


 と、里菜が声を出す。

 それにつられて、三人から目を逸らしていた俺も、彼女たちの方を見てしまう。


「あれ? 里菜ちゃん、結ちゃんから聞いていなかった? 私、身籠もっているの」


 優が、少し照れたようにそう話した。


「やっぱり、そうだったんですね。おめでとうございます」


 と、里菜は祝福してくれた。

 優の体型の変化なんて、まだ俺でも言われなければ気付かないぐらいなのに、この暗がりでそれが分かるなんて、里菜は目がいいんだな。


「……それにしても、里菜ちゃん、その体つき……何か特別な仕事、していたの?」


 今度は優が、驚いたような声を出す。


「私ですか? ええ、まあ……私、すごく貧乏でしたから……結ちゃんのところにお世話になる前は、身を売るか、力仕事するかのどちらかだって言われて、力仕事の方選んだんです。男の人に負けまいと頑張って、こんな風になったけど、結局体の大きな男に人に仕事取られてクビになりました。でも、今はかえってそれで良かったです」


 彼女は明るく答えた。

 そうか、この娘も身を売る寸前だったのか……。


「そうなのね……私も、拓也さんのお世話になっていなかったら……ううん、こんな話、もうやめましょうね」


 優は里菜より年上の分、ちょっとお姉さんっぽく話しかけた。


「……優さんも、里菜も目が良いのね。私、全然分からない……拓也さん、どうですか?」


 結にそう振られて、俺が三人の裸を見ていたことがばれてしまうが、みんな気にしていない様子だ。


「いや、俺も全然わかんないや。優と里菜が目がいいだけだろうな……」

 と話すと、里菜の方は


「それはちょっと残念です。裸を見てもらって、気に入られて、私も拓也さんのお嫁になりたいのに……」

 と、優の前でもあっけらかんと笑って話した。


 うん、嫁が何人もいることはバレているんだな。


 たしかに、結は普通の女の子っぽい体つきだが、里菜のシルエットは幾分細身で、引き締まっている印象。でも、胸のラインはそれなりにしっかり出ていて、ナツに近いイメージだ。


 そんなこんなで、洗い場で体を流した後、柘榴(ざくろ)口という仕切りを潜って浴槽のある間へ。

 そこは一層暗く……人がいるのがやっと分かる程度の明かりしかない。


「暗いですね……拓也さん……」


 と言って、優は俺の腕にしがみついてきた。

 身重である彼女、ちょっと転ぶだけでも体に障りそうで心配だ。俺もしっかりと優の腕をサポートした。


 なんとか大浴槽に入れたが、結と里菜の二人とははぐれてしまった……というか、どこに誰がいるのか全く分からない。うーん、これは阿東藩の湯屋とは比べものにならないぐらい混沌としている。


 と、そのとき。


「ひっ……ひいいぃ、いてててっ!」


 間抜けな男の叫び声が聞こえた。


「私のお尻触るなんて、とんでもない奴めっ! その顔、覚えたぞっ! 一回目だからこの程度で許してやるけど、今度やったらへし折るからなっ!」


 と、若い娘の大声が聞こえた。って、この声、里菜だ……。


「ひいいぃ、ご勘弁を……」

 と、弱々しい男の声が聞こえて、湯屋の中は笑いが起きた。


「……里菜ちゃん、すごいですね……痴漢を撃退しちゃったみたい……」


「ああ……けど、優、この暗さの中で顔まで分かるものなのか?」


「ううん、私でも分からない……こうやって腕を組んでいないと、隣が拓也さんだと分からないぐらいです」


 うーん、目の良い優でもこの程度か。ということは、里菜、本当に暗いところでも目が見えるんだな。まるでネコだ。


 その後、四人とも大浴槽から出て軽く体を流し、また番台の近くへと戻る。


 その途中、結が


「さっきの、聞きました? 里菜、湯屋に入るときはすごく頼りになるんです。今まで何回も痴漢を撃退してくれたんですよ」


 と教えてくれた。

 里菜は「そんなの大したことじゃない」と照れていたが。


 そしてその時、彼女達の方を見た俺は、鳥肌が立つような驚愕を覚えた。

 ずっと暗い場所に居たせいで、大分目が慣れていたこともあり……入ってきたときよりも、ずっと少女達の裸が鮮明に見えたのだ。


 結はまさに、満年齢で十五歳らしい、色白で、弾けるような肌の綺麗な裸体。

 胸もそれなりに大きく、一瞬どきっとさせられ、顔が熱くなる。


 しかし、里菜のそれはまた別種の驚きを俺に与えた。


 細身で、引き締まった体のライン、小ぶりながら形のいい胸。

 そして戦慄を覚えるほどの、鍛え抜かれた肉体。


 ふくらはぎも二の腕も筋肉が盛り上がり、腹筋に至っては、いわゆるシックスパックになっていることがはっきりと分かるほど。


 ようやく、さっき優が里菜の体を見て驚いた理由が分かった。

 彼女は、まるで研ぎ澄まされた現代のアスリートのような肉体だったのだ。

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