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動物企画

動物企画「ナイの大冒険」@久藤雄生

作者: 久藤雄生

 



 オレサマは猫である。名は、ナイ。ただいま絶賛落下中である。

「うにゃあああああああぁぁぁぁぁ」

 何故こんなことになっている。オレサマは屋根の上で昼寝をしていただけなのに。もちろん落下中とは屋根の上からではない。

 むしろここはどこだ。オレサマはどれだけ落ちれば良いのだ。

「ふにゃあああああああぁぁぁぁぁ」

 こんなところで死ぬのか。このオレサマが。天才中の天才であるこのオレサマが。並木町のボスであるこのオレサマが。

 いくら猫でもこの高さ、無事に着陸出来るわけがない。ああああオレサマの猫生ここで終わりか。あっけない。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ?」

 すたん、と肉球をクッションに着地。ありえない。ありえないぞ!どこから落ちたと思ってるんだ!っていうかここはどこだ!

 さっきまでいたはずの並木町は田舎だったが、ここまで田舎ではなかった。田んぼはあったが山も無ければ林もない、そんな場所。それがどうか。今目の前には鬱蒼とした森が広がっているではないか。何これどういうこと。オレサマ拉致疑惑。

 とにかくここでぼーっとしていても始まらない。見知らぬ場所なら探検だ。そして縄張りゲットだ。それが雄の道というもの。


 うむ。うむうむ。良い森だ。昼寝に良さそうな木がたくさんあるし、川には魚が泳いでいる。手頃な鳥も飛んでいるし、オレサマの縄張りにぴったりではないか。ふふん。

 今日からこの森はオレサマのもの。何猫たりとも邪魔はさせん!

 上機嫌で森を歩く。日当たりの良い木の幹に寝転ぶ。さあ昼寝の時間だ。うとうと、うとうと夢の中へ。目が覚めたら狩りに行こう。猫は夜行性と決まっているのだ。

「んにゃ……?」

 せっかく良い気分で眠っていたというのに、騒がしさに目が覚めてしまったではないか。オレサマの昼寝を邪魔する不届き猫、一体どこのどいつだ!

 眠っている木の下で、数十匹の猫が言い争っている。耳を澄ませ、その内容を聞いてみることにした。情報収集は大事だからな。

「……どうします、アイツらの数はハンパにゃいですよ」

「どうもこうも……オレたちじゃアイツらに敵うわけにゃい。逃げの一手しか……」

「そんにゃ! 縄張りを捨てる気にゃの!?」

 何だか穏やかでない。犬か?野良犬の大群でも出るっていうのか?オレサマは犬ごときに怯まない。天才猫だからな!並木でも犬に負けたことなど一度もなかったのだ。この鋭い爪と跳躍力、素早さ、犬などに負けはせん!

「とにかく……対策を……ボス、例の新技を皆に伝授してほしいにゃ」

「そうだにゃ……そうしよう」

 ボスと呼ばれた大柄のトラ猫が、大きく口を開く。その口から炎の塊が連続で飛び出してくる。何だあれは!

 驚きのあまり、落下してしまった。大した高さではないから見事に着地。10.0!

にゃんだ!?」

「ふん、オレサマは並木町の天才、」

にゃんだおまえ、小柄チビだにゃ。危ないからママンのところに隠れてろ」

 何たる侮辱!小柄チビだと!ママンだと!

 野良猫の自分に親は無く、そもそも小柄チビじゃない。おまえらがでか過ぎなんだっつうの!オレサマは普通!標準だ!

 毛を逆立て威嚇すると、鼻で笑われた。何でだ!オレサマと話している猫以外は、皆炎を吐き出し始めた。何これどういうこと。

「まぁ良い。おまえも練習するか? もうすぐアイツらが攻めてくるかもしれにゃいんだ」

 アイツら、に疑問が浮かぶが、それはともかく。

「炎……どうやって吐くんだ?」

 オレサマは今まで炎を吐いたこともなければ、吐いてる猫を見たこともなかったのだが。

にゃんだお前、落ちこぼれか」

「にゃん……だと……」

 今、コイツ、鼻で笑った。オレサマを、このオレサマを馬鹿にしやがったああああああああ!

 天才中の天才であるこのオレサマが!お ち こ ぼ れだと!?こいつらに出来てオレサマに出来ないはずがない!オレサマの怒りは有頂天だ!

 ふるふると奮える体を宥め、逆立ちそうになる毛も押さえ、オレサマは咆えた。

「オレサマ天才☆ファイアー!!」

 出たぞ出たぞ、さすがオレサマ天才的な炎ではないか。素晴らしい、天才だ。

 しっかし炎なんて初めて吹いた。そうか、猫って炎が吹けたのか。知らなかったなんてカッコワルイ、秘密にしてよう。

にゃんだおまえ、落ちこぼれかと思ったらちゃんと魔法使えるんじゃにゃいか。呪文変だけど」

「オレサマは天才だからにゃ」

 胸を張って答える。何だか白い目で見られた気がするが気にしない。気にしてはいけない。

「……そうか。それじゃあ次は水の魔法だ」




 水、風、と魔法で遊んでいると、突然猫共が騒ぎ始めた。

 何だ騒がしい。一体何だと言うのだ。

「ア、アイツらだ!!アイツらが来たぞ!!」

「アイツら?」

「オレらニャンクックを餌にしてるヤツらだよ!ほら、おまえも逃げるぞ!!」

 見ると熊の大群が押し寄せて来ているではないか。熊。熊だと。何故犬じゃない。さすが森。森だから熊が出るんだな?そうかそうか、もちろん知ってたさ。

 しかし、しかしだ。オレサマの辞書に逃げるという文字は、載って、にゃいッ!

 振り向き様、魔法を放つ。逃げると思っていたのだろう、突然の攻撃にダメージを受けている様子。イケる。これはイケるぞ!

にゃにやってんだおまえっ! 相手はハイベアーだぞ! 敵うわけにゃいだろ!」

「オレサマに不可能はにゃいッ!」

 っていうかハイベアーってなんぞ。オレサマは知らん。知らないものは敵ではない。

「朽ちろ、果てろ、オレサマに歯向かうヤツは消滅しろ☆ファイアー!」

 勢い良く巨大な炎の塊がハイベアーを襲う。さすがオレサマ天才的。森が火事になりそうになり、慌てて魔法で雨を降らせたのは秘密である。

 こうしてオレサマは新世界のkげふんげふん、森のボスとなったのである。



めでたし、めでたし?

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