7.魔王様の御考え・前
「さあ、たのしいたのしい、殺し合いを始めましょ?」
魔王は愉しげに言葉を放つ。悪意を感じさせないその無邪気さはまるで子どものようで、勇者は心が冷えるのを感じながら大声をあげた。
「……いくぞ、皆構えろ!」
同時に爆発するような攻撃の嵐が魔王を襲う。しかし既に展開されていた障壁によって、衝撃は簡単に全て吸収されてしまう。
魔王が心底がっかりした様子でため息をつく。歴代の勇者の中にはやすやすと破った上、魔王に数発食らわせた猛者だっていたのに。どうやら今回のは暇潰しとは程遠そうだ、と魔王のやる気を下降させた。
どうやら雑魚キャラだった、と判断された勇者は完全に無視され(考えが伝わったのか涙目だった)、魔王はぐったりと王座に寄りかかる少女の頭を優しく撫でた。
時間の経過とともに、その呼吸はみるみる荒くなっていく。しかしやつは空腹だったのか、いつもよりスピードが速い。これは思ったよりも持ちそうに無いな、と魔王は眉をひそめた。
闘争心を燃やさせるために気まぐれに攫ってみたのはいいが、もはや雑魚な一味の彼女に人質の価値はない。魔王としてはさっさと全滅させたい気持ちだった。
うんざりな魔王の下でちびちび魔力を吸う玉座。魔王はその枝を掴み、そこから多量の魔力を流しいれ少女とのリンクを切らせた。今日はツイてるぜ!と黙る玉座。実は魔王から魔力を貰えるのは王座だけなので、実際魔王城で1番の待遇をうけているのはこいつである。
さて、魔王がこのパーティーが城に現れた時から思いついていたある計画。数百年に渡って、大概のことは暇潰しにし尽くしたと思っていた魔王の最高の暇潰しともいえる。どうしてこんなに面白そうなことを思いつかなかったんだろうか、と思いながら、魔王は勇者を見つめた。
勇者らが思っていたより弱かったのは想定外だが仕方が無い。魔王は計画の軌道を変更することにした。