5.魔王様のごはん
注意※最初のほうちょっとグロ表現(?)があるかも。ご注意を!
「ぐあっ、…うがああああっ!」
豚の身体が、纏わりつく炎によって焼き焦がされていく。かなりの高温な炎が体を這い、豚は炎を消そうと床にのた打ち回る。
しかし、魔力によってつくられた炎が消えることはない。熱さで我に返ったらしい豚は、立ち上がるとなお禁術らしき魔法を放つ。全てが私の張ったバリアに吸収された。
豚は魔法が通じないことに気づくと、自棄になったように半分焦げたような腕で剣を振りかざしてきた。
ウェントが盾となり、私を守る。前に立ったウェントが剣を抜き、振り下ろされる大剣を弾いた。
豚の剣は真っ二つに折られ、それと同時に豚の身体中を炎が覆い尽くす。火達磨のような姿で踊り狂う豚がおもしろくて、思わず噴出した。
「えげつない…さすがウェント!」
こんがりと焼かれていく豚からはなんともいえない良い香りが漂ってきていた。豚肉たべたい、もっとおいしそうな豚を希望するけど。
…しかし、何時もなら数秒で消えるはずの炎は、やけに長い。
「ねえ…いつもより長いお仕置きじゃない?」
でも可哀想なんて思わない。ウェントはにっこりと答える。
「いえ、この程度を防げぬような者が魔王様に楯突こうなどというのですから、つい。」
…要するに苛々していたらしい。椅子をけしかけたりなんかして悪かった…。だって暇だもの。
やがて炎は消えたが、豚はピクリともしなかった。どこかの神殿に封じられていたのを取って来ました!との報告は聞いていたが、私も初めて見た。消滅の呪いに頼って今までの戦いはほぼ一撃だったのだろう、実力は全然大したことがなかった。
「魔王様、雑魚はいかがいたしましょう?」
「いらない、ウェントにあげる。どうせ大した魔力でもないでしょうから。」
どうせ取り込むなら美味しいのがいい。まあ、もう満腹っていうのもある。
「…有難く頂戴します。」
ウェントは予想していたらしく、苦笑しつつも久々の食事に嬉しそうだった(まあ、笑ってる顔がデフォルトなんだけど)。その辺りに漂うものより、奪った魔力の方が美味しい。それに濃い魔力が簡単に手に入るから。
ウェントは、踊り狂う豚へと手を差し出し、囁いた。
「いただきま…」
「ちょっと待って貰おうか」
第三者の声がウェントを遮り、ウェントは眉をひそめ振り返った。その姿を目にした途端、おやと眼を見開く。そこには、いかにも高そうな装備で全身を固めた勇者とそのパーティーが揃っていた。
「仲間割れか知らないけど…今はこっちを相手してもらうよ」
どうやら魔族というだけでみんな同じに見えるらしい勇者は、いかにも自信ありげな口調で言い放っあ。自信満々な勇者を見下ろしつつ、ウェントがにこやかに告げた。
「魔王様、お客様がお見えになったようです。」
……こっちがお客だったのか…。先に言って欲しい、先に。
なかなか進まず…。次からようやく、動き始めます。