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22.魔王様、乗り切る

忘れていたミニア視線(ぎみ)です。

レオのイメージが優男|(ムンクと被るが)だったので、話し方をちょっと変更しました。

 空気が澄みグラフィックのように青い空の下、どっしりと構える石造りの屋敷。古めかしく荘厳なその佇まいは、屋敷の前を通る商人でさえも緊張気味だ。


 各代必ずと言っていいほどに名のある騎士を輩出し、ちやほやされ生ぬるく育つ貴族の中では珍しく、実力でのし上がった正統派な貴族、ハルツハイム家。


 それだけに、屋敷に仕える兵士からして堅苦しい者が多い。

 奉公に出せば礼儀作法やその他なんでもをみっちりと叩き込まれると有名で、王宮に出るものの登竜門としても知られる公爵家でもあった。


 そんな規律正しいハルツハイムの屋敷の中。客室では、ミニアとムンクがだらしなく話していた。ミニアがベッドの上ということで、側近のムンクは一段下のふかふかの床に直接座り込んでいる。


「レオニードっていうのはここの息子で、道に迷っていた私を泊めてくれたの」


 面倒くさいという理由から至極簡単に、一言で説明してやる。ムンクは納得いかない様子だったが、一応頷いた。


「そうなんですか…。でも、これからはどうするんです?…何かお考えでも?」

 長年の付き合いから考えなしに行動するとは思っていないらしいムンクに、さらりと答えた。


「一応種は蒔いてあるわ。とりあえず、今はレオニードに保護されていましょう」



「おはようございます、お嬢様。お着替えをお手伝いしますわ」


 そのうち、朝とは別のメイドがやって来た。ムンクはとっくに屋敷から抜け出している。支度を手伝われ、そのまま部屋から食堂まで案内されてそこでレオニード、ローザと朝食をとった。


「おはようございます、ミニアお嬢様」


 起きてきたミニアを見て立ち上がったレオニード。貴族同士な手前、姫にかしずく騎士のような丁寧さでミニアを席まで案内した。


「…いやねぇ、もう友達なんだから気軽に呼び捨てでいいじゃない!」


 レオニードの堅苦しさに吹きだすローザ、けっこう自由人だ。一般人として暮らしたいミニアも便乗し、それを見たレオニードが苦笑する。


「…呼びにくいなら、レオで構わないよ」

「よかったわ。じゃあよろしく、レオ」


「あっ、私のことはローザではなくて、お姉様って呼んで!」

「お……お姉様?」


 レオニード、は長くて呼びにくかったから助かった。

 そして和やかな朝食が終盤に入った頃、執事がレオに来客を知らせた。


「ミニアお嬢様をお迎えに来たとお伝えください、とのことで…」


 皆の注目を集めたミニアは、口裏を合わせておいたセリフを口にする。


「きっと、父上お抱えの魔術師が探索の魔術を掛けたんだわ。もう見つかっちゃった」

「…さすがフォーレ家だね。いい、通せ」


「ミニア様!お探ししましたよ!」


 観音開きの扉をバーン!と開けて入ってきたのは、茶目茶髪の若い男だった。先ほどよりもかなりランクは下げているが、ムンクである。


「…ごめんなさい」


 しおらしく謝るミニアを見て、ムンクは安堵のため息をついてみせた。どうやら過去にも何回かあったらしい家出に、レオが若干同情する。…幼少期にローザが抜け出すたびに連れ戻していた頃を思い出して。


「お嬢様、叔父上が心配されています。…ともかく連絡を送りますので、少々お待ちください」


 魔術師だったらしい使いを、レオが空き部屋へと案内する。魔術師は魔法陣を描くため、広い場所が必要なのだ。


「あら、無事が分かったのならもう少しミニアちゃんと遊びたいわ」

 残されたローザが物足りなそうに言う。


「……私も、お姉様と城下町を見たかったわ」

 ぽつりとこぼしたミニアの呟きに思ったとおり、というかそれ以上激しく反応するローザ。


「本当?!じゃあ、魔術師さんを丸め込んで一緒に城下町巡りをしましょう!」


 さすがは貴族、ちょうど戻ってきたムンクをそれらしい理由を捲くし立て(というかそう仕向けたのだが)、レオも巻き込んで城下町巡りは決定したのだった。





 一方その頃、魔王城。


「ムンク、遅すぎるわねぇ……」

「あの子がいちばん人間界を行き来してたから行かせたのに~!役立たずねっ」


 同じ部屋にてまったりしていた。仕事から逃げていたとも言える。こうしている間にも、各々の仕事机には書類や問題の山ができつつある筈だ。

 そして、その奥では。


「ミニア様ッ…!今、会いに行きます……!」


 猛烈な勢いでウェントが仕事を片付けていた。手の動きは早すぎて見えず、かすかな音しか聞こえない。その横では、これを片付けたらミニアを探してきてもいいとウェントを騙し、自分の代わりに仕事を片付けさせている長身マッチョの姿があった。


 それを見た側近二人が感心する。


「ホント、ウェントはミニア様が関わると馬鹿になるわねぇ…」

「無駄骨って分かんないのかなぁ?…でも、私もやってもらお~っと!」

「あっ、ずるいわよ!」


 …けっこう、ミニアが居なくても平気なメンバーだった。(酷)

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