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13.苦労性のウェント②

 もさもさと蠢く木々の生い茂る中、ウェントは呆然と突っ立っていた。


 見覚えのある景色、ここは魔界でも有名な湿地帯だ。やたらと繁殖力が強い上、死んでも生き返るゾンビが住んでいるので絡まれると面倒なことこの上ない。というか、既に絡まれている。無数のゾンビがウェントに群がっていた。


「ま、魔王様…?」

 ウェントは構わず、腰にゾンビを縋り付かせたままできょろきょろと辺りを見回した。泣く子も黙る程に魔界では恐れられているにも関わらず、その声は誰にも聞かせられないほど情けなかった。


 今の今まで隣にいた魔王様が消えている。というか、自分が消えたのだが。瞬時に城に戻ろうとするが見えない何かによって阻まれる。そもそも何かお考えがあるにちがいない、何故こんな辺地に飛ばされなければいけなかったのか………と考えた所で、ウェントのポジティブな頭が閃いた。


「そうか…!こ、これが放置プレイなんですね、魔王様…!!」


 その声は潤んでいたが、嬉し泣きの方だったようで顔がにやけている。顔が物凄く整っているだけに、残念でたまらない。


 ウェントは隠れどえむだった。隠していると言うより、魔王の前でしか発揮しない。魔王に寝返ったのも、幼い魔王が重傷の反乱軍の兵を容赦なく踏みつけていたのを見たのがきっかけだったのだから手に負えない。


 今のウェントは、本質を知らない大半の者からしたら別人、あるいは二重人格に見えるに違いない。というか、その存在を否定されるかもしれないほどに、普段のウェントは猫被っていた。


 戦場では、笑みを浮かべたまま魔王の障害と判断したものを斬り殺し、焼き尽くすと畏れられているウェント。魔界の母親の定番の脅し文句にも使われている、冷酷で恐ろしい(と、思われている)ウェント。彼のどえむが魔界中に広がったら、どうなるのだろう。


母「早く寝ないと、怖ーい怖ーいウェント様が切り刻みに来るわよ~?」

子「……………ハッ(嘲笑)」


 ってなるかもしれない。表向きにも、自分がどう思われているかだなんて考えも知りもしないウェントは、ただただ魔王様のことで頭がいっぱいだった。


「ああ、魔王様………いつまでも、喜んで待っています…!」

 魔王よりあたしのほうが綺麗よ、とでもいうように顔を近づけてきた最後の雌ゾンビをあっという間に切り伏せつつ、ウェントは胸を高鳴らせた。



 ところで、魔王には彼を迎えにくる気は更々無い。なのでこれは放置プレイというより、ただの放置、なのだが。ウェントが気づくはずもなく。


 三日後、さすがに長すぎると城に戻ったウェントが見たものは、玉座に残された『代役魔王、ウェント』と『旅に出る』という放置すぎる放置だった。合掌。

次から魔王視点です。やっと人間界へ!

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