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手紙シリーズ

再びの出会い

作者: 尚文産商堂

彼から手紙を受け取ってから、私はずっと港で待ち続けた。

捕虜になりながらも、生き延びていた彼は、私がずっと待っていることを知っていた。

だから、あの手紙を送ってきてくれたのだと思う。

私は、そんな彼の気持ちに応えるために、港に立ち続けている。


「復員船がきたぞ」

港の人がそういうたびに、私は船の降り口へ押し合っている人の群れの中へ飛び込み、彼を探した。

でも、彼はなかなか現れなかった。

復員船の後姿を見る度、次こそ来ると祈っていた。


私は、毎日、復員船が来ると聞くたびにそのことを繰り返していた。

だけど、彼は帰ってこなかった。


復員船はいくらでも来る、そのたびに、私は港に立ち続けている。

いつの間にか、私はちょっとした名物女として、来る人から言われるようになった。

それがいいことなのか悪いことなのか、私にはわからない。

でも、そんなことを言われ続けようが、私には関係ない。

ただ、彼が来るまで、待ち続けるだけだから。


2通目の手紙が来てから1年が経った。

「復員船が来たぞー」

私はこの1年、ずっとこの声が聞こえてくると、走って彼が着ていないかを探し続けた。

だが、着いていないことが分かると、肩を落として帰ったものだったが、この日は違った。

最後のほうになり、降りてくる人もまばらになったころ、最後の望みをかけておるてくる人をじっと見つめ続けた。

しかし、最後の一人であろう人が降りてくると、私はあきらめて背を向けようとした。

その時、目の端に、懐かしい顔が見えた。

それは、船から降りてきた本当の最後の人だった。


その人は、船から降りてくると、私はすぐに彼の元へと駆け寄った。

彼もすぐに私を見つけたようで、復員服を着たままで私に言った。

「ごめんなさい、長い間お待たせしました」

私は、その人の声を聞くと、涙で前が見えなくなった。

「まだ、自分と一緒にいてくれますか」

「…はい」

彼の言葉に、私は心の底からの正直な返事をした。

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