第2章:夜の恐怖
太陽は、静かに沈み始めていた。遥人は空を見上げて、ようやく気づいた。昼と夜がある。つまり、時間が流れている。だが、時計もない。空の色だけが、彼に“変化”を教えてくれる。
地面に置いた作業台の前で、遥人は木材を組み合わせて簡単な壁を作っていた。ブロックを積み上げると、それは“壁”になる。だが、隙間だらけで、風も通る。それでも、何かに守られているような気がした。
「夜になったら、どうなるんだろう」
彼は不安を感じていた。この世界には、まだ見えていない“何か”がある。昼間は静かだった。だが、静かすぎた。まるで、何かが“待っている”ような気配があった。
太陽が完全に沈むと、空は濃い青に染まり、やがて黒に近づいていった。星が浮かび、月が昇る。だが、月もまた四角い。遥人はその形に違和感を覚えながらも、目を離せなかった。
そして、音がした。
「……カサッ」
草の上を何かが動く音。彼は振り返った。暗くて見えない。松明もない。光がない。彼は、木材を燃やせないかと考えたが、火を起こす方法が分からない。何も知らない。何も持っていない。
「誰か……いるのか?」
声を出してみる。だが、返事はない。代わりに、低くうなるような音が近づいてくる。
「……グゥゥ……」
遥人は、背筋が凍るのを感じた。音の主は、ゆっくりと姿を現した。それは人の形をしていた。だが、肌は緑色で、目は空洞のように黒い。服も着ていない。ただ、こちらを見ている。
「……人間じゃない」
遥人は後ずさった。その“何か”は、ゆっくりと近づいてくる。そして、突然、腕を振り上げた。遥人は反射的に身をかわした。拳が空を切る。だが、次の瞬間、背中に衝撃が走った。
「うっ……!」
痛みはある。現実のように。彼は転がりながら、木の壁の影に逃げ込んだ。だが、壁は薄い。すぐに壊される。彼は必死に木材を積み上げ、隙間を塞いだ。その間にも、外から“グゥゥ……”という声が響いてくる。
「何なんだよ……この世界は……!」
遥人は震えていた。恐怖が、体を支配していた。だが、同時に、理解し始めていた。この世界には“敵”がいる。夜になると、現れる。昼間の静けさは、嵐の前の静寂だった。
彼は、壁の中で膝を抱えながら、朝を待った。何もできない。ただ、耐えるしかない。だが、心の奥では、決意が芽生えていた。
「次の夜は……負けない」
遥人は、初めてこの世界に“戦う”という意志を持った。




