表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

7. 異形と罠と、初の毒

第2層の空気は、第1層とまるで違った。


ひんやりとした風が通るたび、体が無意識にすぼまる。

粘液の表面がざわつく。――空気中に、敵意がある。


(警戒してる。生き物の空気じゃない、“環境”そのものが敵だ)


ゴギャ……ゴギッ……


奥の方で、骨が砕けるような音がする。

獣の咆哮でも、虫の羽音でもない。

それはまるで、何か“歪んだもの”が蠢くような、不快な音。


(でも……行く)


もう俺は、後戻りできない。

第1層は喰い尽くした。第2層こそ、次のステージだ。


慎重に、粘液を延ばしながら進む。

暗がりに目はないが、音と震動、魔素の流れで“感じ取る”感覚は磨かれてきている。


ズ……ズ……ッ。


岩の裂け目、そこに何かがいた。


体長40cmほどの球体。

全身がトゲのような殻に覆われており、中央にひとつだけ口のような裂け目がある。


(新種……?)


――ブシュウッ!


突然、その口から液体が噴き出された!


(――毒!?)


俺は咄嗟に跳ねるように身を引いた。

だが、粘液の先端がわずかに触れてしまう。


【状態異常:毒(軽度)】


ぴりぴりと、内部から焼けるような感覚。

粘液が“濁り”始めた。明らかにおかしい。


(やばい……!)


毒という概念が、ここまで“明確”なのか。

俺の中では、生物的な腐敗程度にしか思っていなかった。


だがこれは、“スライムの構造そのもの”を破壊する猛毒だった。


【HP:15 → 12 → 10(持続ダメージ)】


一刻も早く処理しなければ死ぬ。


俺はすぐさま粘液を分離し、毒に侵された箇所を物理的に切り捨てた。


ジュウ……


焼けるような痛み。だが、これで毒の進行は止まった。


【状態異常:解除】


(……危なかった)


だが、これでわかった。この階層には――


「罠と毒」がある。


もはやただの力押しでは通用しない。

知恵が必要だ。策が必要だ。


……だが。


(だからこそ、面白い)


成長には、障害が必要だ。

捕食には、リスクがあるほど旨味が増す。


俺は、毒を吐いた球体モンスターに向かって、一気に跳ねた。


「ブシュウッ!」


再び毒を吹きかけるが、こちらはすでに動きを見切っている。

体を分割し、二方向から挟み込む!


【捕食発動:両面展開】


トゲの殻ごと、ゆっくりと――だが確実に、溶かしていく。


「ギギ……ギィイ……!」


口がひきつり、もがくように震える。

中から粘液を浸透させ、核ごと“喰らい尽くす”。


【捕食成功】

【異形種《トゲ胃虫》を撃破】

【経験値+9EXP】

【現在経験値:11/75】


(よし、悪くない……!)


しかも――


【新スキル取得:耐毒(初級)】

【スキル効果:毒系ダメージ10%軽減/反応速度向上】


(スキルまで拾えるのか……!)


毒の苦しみ、そして勝利。

この一戦だけで、俺は明らかに“進化の匂い”を手に入れた気がした。


第2層――

ここは危険で、理不尽で、死と隣り合わせだ。


だが、それでも俺は――


(もっと喰らいたい)


ここは間違いなく、“成長できる場所”だ。


 


――To be continued…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ