6. 次の狩場
現在Lv:2/経験値:2/75】
レベルが上がったことによる変化は、数字以上に実感できた。
体の反応速度は確実に向上し、粘液の動きに“意思”が通じやすくなっている。
粘度も自由度も高くなり、地面を這う速度すら段違いだった。
(これが、成長ってやつか……)
だが、問題もある。
――獲物が減ってきた。
虫たちは俺の気配を感じて逃げるようになった。
ネズミも、捕食者として認識したのか、警戒し始めている。
さっきまで反射的に飛び出してきた奴らが、距離を取って俺を“避けている”。
(つまり、ここはもう“俺の狩場”じゃなくなったってことか)
支配した狩場に獲物はいない。
支配者は常に、次の狩場を求めて動くしかない。
そう、つまり――“階層移動”だ。
◆
第1層の南端。
ダンジョンの中でも特に湿度が高く、地面が泥に変わりかけている場所に、それはある。
――階段。
自然に形成された下り階段のような構造。
ここを越えれば、ダンジョン第2層。
より強い魔物が住み、より豊富な経験値が眠る、未知の世界。
(行くしかない……)
もちろん危険はある。
レベル1の敵を相手にヒーヒー言ってた俺が、そこへ行くのは、正直、無謀とも言える。
だが、俺には“確信”があった。
(俺はもう、最初の“ただのスライム”じゃない)
腐狼を喰い、レベルを上げ、粘液を鍛え、戦術を磨いた。
俺には“生き延びた”という経験値がある。
そしてなにより――
(もっと喰いたい)
レベルを上げたい。
スキルを増やしたい。
進化したい。
もっと、もっと。
貪欲に。執念深く。
それが俺の、生存本能だ。
◆
ズル……ズル……。
階段を下る。
湿った岩肌に粘液が張り付き、ぬめった音が小さく響く。
視界は暗い。だが、わかる。
空気が違う。温度が少し下がり、代わりに魔素の濃度が高くなっている。
――第2層。
それは、第1層のような「無秩序な獣の巣」ではなかった。
地面は硬く、滑らかな石が敷かれている。
壁には何かの爪痕が走り、時おり風が吹くような“気配”が通り過ぎていく。
そして、何よりも――音。
「ゴギャ……」
「キュ……ギ……ィ……」
第1層のようなネズミや虫の鳴き声ではない。
これは……もっと、“異形”だ。
(……くるな)
直感が告げる。
この階には、俺の知らない“強者”がいる。
だが、恐れと同時に――興奮も湧き上がる。
(いいじゃねえか。強くなるには、強い敵が必要だ)
【ステータス表示】
⸻
名前:なし
種族:スライム
Lv:2
HP:15/15
MP:5/5
攻撃:2 防御:2 敏捷:2
スキル:捕食Lv2、粘着質操作、腐食属性:小
称号:一つ上の捕食者
経験値:2/75
⸻
(次は、Lv3。そして――Lv5、進化)
そのための、狩場はここにある。
俺は、音のした方へと――
新たな狩場の中心へと、滑り込んでいった。
――To be continued…




