5. レベルアップ
腐狼を喰らってから、どれくらい時間が経っただろう。
体内ではまだ、あの肉と骨、腐った血液がぐつぐつと分解され続けている。
俺の核が、それを全て“自分”として取り込みながら、静かに熱を帯びていた。
【現在経験値:39/50】
あと、11。
ネズミなら4匹。虫なら11匹。
ただ、それだけのはずだった。
けれど――その“ただ”が、どれだけ遠かったことか。
(絶対に……達成してやる)
◆
俺は再び狩りへと戻った。
今回は慎重に、けれど確実に、獲物を仕留めていく。
1匹目。
《ダンジョン虫》を粘液で包み込み、すぐさま分解。
【捕食成功/+1EXP → 40】
2匹目。
《ダンジョンネズミ》を壁際に追い詰めてから圧縮捕食。
【捕食成功/+3EXP → 43】
3匹目、4匹目、5匹目。
ネズミ×2と虫×1で、合計+5EXP。
【現在経験値:48/50】
(あと、1体……!)
そして――運命の瞬間は、思いがけず唐突に訪れた。
◆
視界の隅に、羽音が響いた。
《ダンジョンガ》――この階層では希少な、空を飛ぶ虫型モンスター。
だが、弱い。体は脆く、捕食には向いている。
俺は粘液を天井に張り、待った。
羽音が通り過ぎたタイミングで――“跳躍”。
ズバッ。
捕食成功。
【経験値+2】
【現在経験値:50/50】
その瞬間――
全身に“衝撃”が走った。
◆
【LvUP:Lv1 → Lv2】
【ステータス更新】
名前:なし
種族:スライム
Lv:2
HP:10 → 15
MP:0 → 5
攻撃:1 → 2
防御:1 → 2
敏捷:1 → 2
【スキル:捕食(未熟)→ 捕食(Lv2)】
【スキル:粘着質操作(Lv1)/腐食属性:小 継続中】
【副効果:吸収効率+5%】
(……ついに、上がった)
確かに、“何か”が違う。
核が澄み、魔素の通り道が拡張されている。
筋肉も、骨もない俺の身体が、それでも“強化された”のがわかる。
体内の粘液が、より鋭く、よりなめらかに。
思考が早くなり、視界――というより“世界”の解析精度が上がっている。
(これが……レベルアップ……!)
感動と、達成感と、そして――
(もっと……欲しい)
狩ること。喰うこと。
その先にある進化。
それを、俺はもう“快楽”として感じ始めていた。
レベルアップ、それが全て。
数字が上がる、それだけで、この世界が俺に微笑みかける気がする。
だから――
(次は、Lv3だ)
進化条件はLv5。まだ遠い。
だが、その“始まり”を、俺は今、確かに踏みしめた。
――To be continued…