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4. 狩り返し

HPがようやく8まで戻った頃、俺は考えていた。


(このままじゃ、いつまで経っても同じだ)


ネズミを食って、虫を食って、レベルを上げる?

そりゃ確かに安全策だ。だが、効率が悪すぎる。


【現在経験値:21/50】


この数字が物語っている。

腐狼との戦いで失った体力、戦意、そして「自信」――

全部を取り戻すには、“あれ”を喰うしかない。


(もう一度、あの腐狼を倒す。それが俺の――狩り返しだ)



スライムに、足音はない。

にじるように地を這い、粘液の一部を薄く延ばし、岩壁に張りつかせる。


まるで自分がダンジョンの一部になったように溶け込んでいく。


腐狼は警戒心の強い獣だ。

ただ突っ込んでも、逆に返り討ちにされるだけ。


だから、俺は“罠”を仕掛けた。


【作戦名:捕食トラップ】

1.俺の体の大半を岩陰に隠す

2.粘液を床に薄く伸ばし、反応領域を広げる

3.音に反応した腐狼が近づいた瞬間、脚を絡め取って分解開始


問題は、腐狼の“脚力”だ。

少しでも反応が遅れれば、逆に引きちぎられてこっちがやられる。


(仕留めるなら……一撃で)


そのために、俺は“溜め”をしていた。


粘液を一点に集中させ、瞬間的に粘度と吸着力を高める“圧縮捕食”。

通常の捕食より速度と濃度が3倍。

成功すれば、どんな敵でも“逃げられない”。


それは、俺がここ数時間――

失敗を繰り返し、虫とネズミで試行錯誤しながら編み出した“俺なりの必殺技”だった。



そして、時は来た。


「グルル……」


あの低い唸り声。間違いない、腐狼だ。


このダンジョン第1層に同時に複数体も存在しない中ボス級。

前と同じ、3本爪と腐食した毛皮。

鼻を利かせ、警戒しながら岩の間を進む――


ズッ――


足を踏み込んだ。


(今!!)


【圧縮捕食:発動】


地面に薄く広げていた粘液が、一気に集中・締め付け!


「ギャッ……!?」


腐狼の前脚が床に張りついた。

引き剥がそうと暴れるが、その動きごと粘液がねじれ、内部へ浸透していく。


ズズズズ……!


【捕食進行:前脚→肩→胴体】


だが腐狼も黙っていない。

咆哮とともに身体を回転させ、無理やり粘液の一部を引きちぎった!


「ガルルッ!!」


【本体損傷:軽微】


核には触れなかった。

なら、こちらのターンは終わっていない。


飛びついた腐狼の腹部に、俺は全身を叩きつけた!


粘液を一気に硬化させ、外殻ごと包み込み、内側から分解開始!


「ギャギャギャァッ!!」


どこかで聞いたことのある叫び――

だがそれも数秒で、喉の奥から泡立つ音に変わっていった。


【捕食成功】

【腐狼(Lv5):撃破】

【経験値+18】

【現在経験値:39/50】


(……喰った)


ついにやった。

強敵を、正面から――自力で狩った。


喜びよりも先に、体の芯が震えている。

この世界の、最弱だったスライムが、ようやく“格上”を倒したのだ。


それは、単なる経験値じゃない。

“この命が、確かに何かを超えた証拠”だ。


 



【新スキル獲得:粘着質操作(Lv1)】

【捕食スキルの追加特性:「腐食属性:小」解放】

【称号:「一つ上の捕食者」獲得】


ステータス画面が更新されていく。

レベルはまだ上がらない。でも、次の一匹で、ついに届く。


(もう“最弱”じゃない。次は――進化だ)


レベルアップ、それが全て。

その扉が、今、指先――いや、粘液先に触れようとしている。


 


――To be continued…


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