冒険の書 2
とりあえずの目標をランクアップとし、
どんどんクエストをこなす事にした。
討伐系は逆に討伐されてしまうので、
採取系に絞り、受けてみよう。
『えっと、薬草採取のクエストは、、
まだあるな。
他には、、』
『満月草、流水草、解毒草、
マンドラダケ、マヒダケ、アイアンダケ、、
いろいろあるな。』
これは助かる。
しばらくクエストに困る事はなさそうだ。
ん?
よく見ると、
クエスト依頼表にポイントが書いてあるぞ。
これを貯めていくのか?
『なになに、、
薬草採取は3ポイント』
『満月草8ポイント、流水草5ポイント、
マンドラダケ6ポイントか。』
さらに規定数採取したらプラスでポイントがもらえるらしい。
私が昨日採取した薬草は10個で、
規定値も10個なので、
30ポイント➕ボーナス10ポイントで40ポイントか。
『えー、ランクアップに必要なポイントは、、』
10万ポイント。
薬草としたら33,333個分か。
もうそれ農家だろ。
村人が農業って、
それ、もうただの仕事だろ。
ふざけるな。
私は冒険者になったのだ。
討伐系ではゴブリン1体で100ポイントか。
それでもキツいが、
上位種になれば1000ポイントもある。
『それで採取系のクエストがたくさん残ってるってわけね、、。』
冒険者様は血の気の多い人間ばかりで嫌になる。
もっと平和にいこうではないか。
まぁ、私もゲームの中では採取系のクエストなんてほとんどやらなかったが。
しかしまいった。
とくに急いでいるわけではないが、
毎日薬草ばかり届けていたら、そのうち、
本当に農家だと思われてしまう。
そのうち、生産者の顔とか載せられそうだ。
なんとかせねば、、。
と、悩んでいたら、
採取系でも高ポイントの依頼を見つけた。
龍月草というらしい。
規定値はないが、
なんと、1個1万ポイントと書いてある。
これはすごい、10個でランクアップじゃないか。
早速その依頼を受けようと思い、
詳細を確認すると、
『幻の草、煎じて飲めば万病に効く』
『火龍の生息地にあると言われている』
火龍の生息地?
そんなところに行ったら私が幻になってしまう。
これはないな。
と、思いながらも、
受注してしまった。
1回で1万ポイントは惹かれる。
火龍のいなくなった隙に採取すればよいではないか。
火龍の卵を取ってくる、
どこぞのハンター達よりは楽だろう。
それに、クエストは複数受注できるようなので、
いつかタイミングがあれば、、
という気持ちでもいいだろう。
どうせ幻だし。
そう、気楽な気持ちで受注した。
後にこの判断が私の冒険者人生を大きく変える事になろうとは、
この時の私には知る由もなかった。
とりあえず、今からは満月草を探そう。
なかなかのポイントだし、
薬草よりはいいだろう。
しかし、情報が雑だ。
これも森、としか書いていない。
見た目は絵で分かるが、
探すとなるとどの辺りから探せば良いか分からない。
『まぁ、行ってみるか』
私はクエストを受注して、森に向かった。
内心試したいこともあった。
しばらく歩くと、
昨日のスライムがいた場所まで来た。
『さすがにまたいたりは、、』
いた。
また食べている。
この食いしん坊さんめ。
『こんにちは』
『!?』
あれ?昨日のスライムではないのか?
『君は昨日のスライムだよね?』
『スライム?ウン、ボク、スライムー』
本当に分かってるのか?
『また食べてるの?』
『ウン、マタタベテルノ』
『オイシイヨー』
『タベルー?』
まだ草を食べて飢えを凌ぐ段階ではない。
『そのときが来たら食べるよ、、』
『?』
『ソノトキガキタラ、イッショニタベヨー』
なんとも想像したくない絵面である。
『またはぐれたの?』
『ンー』
『ハナレテキタ』
ん?群れを抜けたのか?
『ボクハ、ジユー二タベタイノ』
『ダカラハナレター』
なんてことだ。
私は村人から自由になりたくて、村を抜けてきた。
このブヨブヨちゃんも自由になりたくて、群れを抜けてきたのだ。
なんか、愛着が出てきたな。
飼いたい。
これ、ほしい。
『一緒に来ないか?』
『もっとたくさんの草を食べさせてやるよ?』
『ホントー?』
『ジャアイクー』
子供を誘拐した気分になるな。
まぁ可愛いから仕方ない。
こうして、スライムが仲間に加わった!
『んー、スライムと呼ぶのもなんか嫌だな』
人間に人間!と呼ばれてるようなものだ。
『スラリン、スラミチ、スラゾウ、、』
『いや、食いしん坊だし、
丸っこいからスラ丸でいいや』
『スラマル?』
『そ、キミは今日からスラ丸だ!』
『ワカッター』
『俺はディー、よろしくな!スラ丸』
『ヨロシクネ、ディーマル』
『マルはいらんよ』
『?』
まぁいいか。
『スラ丸は満月草って見た事ある?』
こんなやつ、
と、絵を見せた。
『オイシイノ?シラナーイ』
『そうか、、』
だが、落胆はしていない。
何故なら私には試してみたい秘策があるからだ!
特殊スキル『案内』発動!
〈対象を選択して下さい〉
お?選べるのか?
なになに、、
〈薬草、満月草、龍月草〉
龍月草!?
これは受注したクエストの対象を選択できるのか!
やはりこれは、探索スキルだ!
しかも対象まで案内してくれるという、
チート級のスキルじゃないか!
魔物と会話できるようになり、
探し物まで案内してくれる、、。
これ、使い方次第では無双できるんじゃないか?
宝箱とか、すぐだし。
危ない魔物とは交渉次第で戦闘を避けられるし。
なんてこった。
平和にこの世界で勇者になれるかもしれない。
もともと争いごとには向いていない性格だし、
ステータス的に即死だから、
私はこの道を極めることにしよう。