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冒険の書 1

無事旅人となった私だが、気になっていることがあった。

金、、ではなく家族だ。

旅人になった途端、宿屋の息子でなくなったのではないか?


不安になった私は、宿屋へと向かった。

『半額キャンペーン開催中だよ!泊まってくかい?』

満面の笑みで出迎えてくれた父親に、

『父さん、俺が分かるか?』

と聞いた。

『おお!旅人になったのか!見違えたぞディー』

よかった。

どうやら私のかね、、家族との繋がりは切れていないようだった。


『父さん、俺、冒険者になろうと思うだ、

 宿屋の経営も落ち着いただろうし。』


『何を言っている。旅人なんだから、冒険をしないといかんだろ。みんな役割を果たしてこそだ。

頑張ってきなさい。』

ついこの間まで一人パン祭りを開催していた父親とは思えないほど、父親らしいことを言う。

人間、食べるものは大事だなぁと、つくづく思う。


『いってらっしゃいディー兄ちゃん!』


いつのまにか背後にいた妹に声をかけられた。


『宿屋への案内は私に任せて!』


そうか、宿屋への案内というとても大事な役割は我が妹に託されたのか。

いつの間にか村人D子(宿屋の娘)になっていた。

なんだか感慨深いな、、。


『宿屋への案内はいろいろ大変だと思うが、、

任せたぞ、D子!

しっかり案内してくれよ!』


申し訳ないが、おそらく宿屋の案内人は嫌われている。

信用を回復してくれ。


宿屋を後にした私は、冒険者ギルドに向かった。

『こちらに記入をお願いします』


必要事項を記入し、簡単に説明を受けた。

冒険者にはS〜Eまでランクがあるようだ。

私のランクは当然D!

、、ではなく、Eランクからだった。


やっと村人Dから抜け出したのに、今度は次のランクである冒険者Dを目指すことになるとは。

複雑だ。


ランクによって受けられる依頼が変わってくる。

自分の今のランクの依頼を一定数こなして、認められたらランクアップだ。


今受けられるのは、薬草の採取くらいか。

まぁ、私のステータスでは魔物退治などまだまだ不可能なので、丁度いい。


その後、装備品一式を揃えるためにゴリラに会いにった。

『いらっしゃい』

どうだ、ゴリラよ。

私は冒険者になったぞ!

と、胸を張っていたが、

『何にする?』

と、普通に接客をされた。

まぁ私のことなど覚えていないか。

少し、寂しい思いもあったが、仕方ない。


装備品を整える瞬間はやはりワクワクする。

軍資金は確保していたが、

ステータス的に私は戦闘向きではないようなので、

とりあえず防具を揃えた。

『革の防具一式だな。全部で8万マニーだ』


うぅ、用意はしていたが、一気に金欠になった。

道を案内するという稼ぎ方ができない以上、早く依頼をこなさなければ。

武器はまた今度だな。


革の防具一式を受け取り、お金を払った。

店を後にしようとした時、

『忘れもんだよ』

と、背後から声をかけられた。

ん?全部受け取ったが?

『はいよ』

と、手渡されたのはナイフだった。

『いや、これは買ってません』

というか買えません。


『こいつを買いに来たんだろ?

あん時は笑って悪かったな。

まさか本当に冒険者になっちまうとはな。』

『これはあん時笑った詫びと思って受け取ってくれ!

頑張れよ!』


思わず泣いてしまうところだった。

ゴリラと言ってごめんよ。

なんていい奴なんだ。


礼を言い、ナイフを受け取った私は、ゴリラの武器屋を後にした。


よし!準備万端!

これでやっと冒険のはじまりだ!

この村から出たことがないので、外の世界がどうなっているか、不安はすごいが、

それより何より、早くいろいろ見てみたいと思う気持ちの方が何倍も強かった。


『えっと、薬草はどの辺りだ?』

たしか、近くの森に生えていると言っていたな。

とりあえず向かってみるか。


しばらく歩いて、森が見えてきた。

ここまで魔物と出くわすことはなかったので、戦闘にはならなかったが、少し試したいこともあった。


お?前方に見えるあのブヨブヨの液体はまさか!

定番中の定番!スライム様だ!


『キュッキュイ?』

どうやらまだ気付かれてはいないようだ。

近くで見ると不思議な物体だな。

どうやって生きてるんだろ?


などと観察している場合ではない。

私のHPは10しかないので、

下手すりゃ一撃で死ぬ。

死んでしまったらどうなるか、

元の世界にもどる?

それとも教会で目覚める?

気にはなるが試すわけにもいかないので、

慎重に行動せねばなるまい。

いのちだいじに、だ。


とりあえずスキルを使ってみよう。

スキルを選択。

スキル〈やぁ、〉

、、、

何も起こらない。

スキル〈お疲れのようだね〉


ここでスライムに変化が起きた。

急に慌てだしたのだ。

頭には???が浮かんでいるようだ。

『ナニ?ナニ?』

ん?

『ツカレテナイヨ?ダレ?』

喋った。

スライムが喋ったぞ!

一瞬この世界のスライムは喋るのか?とも思ったが、

先ほどまでは何かキュッキュッ言ってただけだったはずだ。

なんで急に、、


そうか、スキルか!

このスキルを使ったから喋るように、、

じゃない、俺がスライム語で喋りかけたことになるのか。

このスキルを使うとその魔物に、その魔物の言語で話しかけることができるようだ。

そして、一度話してしまえば私にも向こうの言語が理解できるようになる、と。


うん、

多分そうだろ。

ハズレスキルだこれ。

魔物と話せても意味ないよな、、。


まぁいいか。

とりあえずフリーワードスキルを使って会話してみよう。

『君は何してるの?』

『ゴハン、タベテタ』

『草?美味しいの?』

『クサ?ウン、コレオイシイヨ』

『そっかぁ』

『ちなみにそれ、薬草って言うだけど、俺にも少し分けてくれないかな?』

『イイヨ、アッチニモットタクサンアルヨ』

『ツイテキテー』

スライムを追いかけると、

『わぁ、ここは群生地?すごいたくさんあるね』

『タクサン、タクサン!』

『ありがとう。じゃあ少しもらうね?』

『ウン、イイヨー』


これは思ったより使えるぞ。

魔物と戦闘を避けたい今の私にとってはありがたい。

上手く使っていけばなんとかやっていけるかも、、。


スライムのおかげであっさり依頼分の薬草を回収できた。

『君は一人なの?』

『ウン、ボクヒトリ』

仲間とはぐれたのだろうか?

『ゴハン、タベテタラ、ヒトリニナッチャッタ』

なるほど。

んー、このまま帰ってもいいが、世話にもなったし、何とかこの子を仲間のところに送ってあげたいな。

でも仲間の場所が分からない。

というか、スライムの見分けがつかない。


そうだ!

もう一つのスキルも試してみよう!

特殊スキル〈案内〉発動!


なんだこれ、

使った瞬間に道に矢印が現れた。

カーナビみたいだ。

もしかして、この矢印に従って行けば、仲間のところにたどり着けるのか?


『仲間のところまで案内するよ』

『ホント?』

『うん、だから着いてきて』

『ワカッター』


しばらく歩くと、ブヨブヨがいっぱいのところに辿り着いた。

『ナカマー』

『君の仲間?』

『ウン、ボクノナカマ』

『アリガトー』

『いやいや、俺も助けてもらったしお互いさまだよ』

『じゃあもう行くね?食べ過ぎには気をつけるんだよ?』

『ワカッター』


手を振り、ブヨブヨ軍団と別れた。


冒険者ギルドに報告をすませ、依頼は無事完了した。


明日からもこの調子でどんどん依頼をこなしていくぞ!



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