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人気がないよ

無事、村人D(宿屋の主人)になった私に面白いことが起きた。


なんと、勇者っぽい奴らが利用した宿屋の宿泊代金の何割かが、私に入ってくるようになったのだ。

レベルが上がってジョブが変わったのだろうか、、

気になった私は、じつはまだ一度も訪れていない宿屋へと向かった。


『お邪魔します、、』

そっと入ると、そこには中年の男性が受付に立っていた。

『おかえり、D』

『今日はお客さん、多くてよかったな!』

と、笑顔で話しかけてくる。

顔を見て分かったが、この中年は私の父親だ。

つまり、私は村人D(宿屋の息子)であり、宿屋の主人は彼であった。


なんということか、

私は実家である宿屋まで旅人を案内する家族思いの好青年だったのだ。

それが村人Dか。

泣けてくる。

盆と正月にしか帰らなかった現世の私にはこの設定は刺さる。

元の世界に戻れたら、実家に帰ろう。

そして、高級宿屋へ両親を連れて行こう。

などと、感傷に浸っていると、

『全然多くない!』

と、ため息を吐きながら奥から女の子が出てきた。

『D兄ちゃん、ちゃんと呼び込みしてる?』

そうか、こいつは私の妹らしい。

それにしても、親からも妹からもDと呼ばれるのはなんか切ない。


『してるさ』

『今日だって40組も案内しただろ?』

誇らしげに言ってやったが、

『12組しかきてないよ』

と、あきれた顔で言われた。


おかしい。

確かに、私は40組に案内したはずだ。

、、いや、まてよ。

案内したというか、無理やり声をかけられに行ったのもある。

それに、普通に案内しても、ただ、場所を聞いただけの奴らもいるかもしれない。

案内=宿泊客ではないのだ。

なるほど。

まさか、こんな世界に来て、呼び込みの難しさを学ぶことになるとは。

人生なにがあるか分からんな。


『どうすんの?このままじゃ今日もパンだけだよ!』

妹が言う。

『今日は12組も来たし、スープくらいは付けてもいいんじゃないか?』

と、父親がなんとも悲しい提案をしていた。


そうか、宿屋というのは儲からないのか。

考えてみたらそうだ。

私がやっていたゲームでも、

序盤は全回復する為に宿屋を利用するが、

レベルが上がってきたら回復魔法や道具などが使える。

そうなると、頻繁に宿屋を訪れる機会もなくなる。


だが、そう、、

需要が完全になくなることはない。

私がゲーム内において、最後まで使っていた宿屋というものはあった。

それは、他の町より安くて気楽に泊まれる場所だ。

ワープ魔法がこの世界にあるかどうかは分からないが、もしあれば、

ここの宿屋の宿泊代金次第ではいけるかもしれない。


『父さん、ここの宿泊代金っていくらだっけ?』

私が聞くと、

『600マニーだよ、泊まってくかい?』

と、お決まりのセリフを満面の笑みで言ってきた。

本能なのだろう、かわいそうに。

私も宿屋への道を尋ねられたら、それが誰であろうと、彼のように満面の笑みで案内したに違いない。


とにかく、600マニーか、、。

絶妙に高い。

これはイメージの問題だが、薬草が一つで20マニーな事を考えると、なんか高い。

なんか損した気分になる。

これが城下町のような立派な町なら納得するが。

こんな田舎町で600マニーとは。

東京で1万払うのと、田舎で1万払うのでは意味合いが変わってくるのと同じだ。

これでは客は増えまい。


価格設定から見直す必要がありそうだ。

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