アトラの書 2
獄炎龍ってなに?
絶対ヤバいやつだ。
というか、獄炎龍の子って事はこの子は龍なのか?
龍が人に化けているのか?
なるほど、、
どうやって謝ろうか。
このままでは殺されてしまう。
思いきり叩いてしまったし。
『、、、おい。』
ひぃぃぃぃ
『、、、私の話を聞いていたか?』
ダメだ、ここで引いたらもうダメだ。
食べられちゃう。
、、、いや、ちょっと待て。
今さら自分以上の存在に怯えてどうする。
私は現状最下層の存在だ。
自慢ではないが、大体の魔物に1撃で殺されてしまう。
龍だからって他の魔物と大差ないではないか。
他より偉そうなだけだ。
『そうか、、まぁ、でもあれだ、うん。
名前くらいは名乗りなさいよ!
俺はディーだ!君は?』
『、、、我が名は火龍アトラだ。』
『アトラか!いい名前だ!
ご両親に感謝だな!』
すごい空気になった。
『でも、悪いがすぐにはアトラの父親探しにはいけないよ?
先約があるからね!』
『、、、なに?』
『火龍に住処を襲われた、ウインドウルフ達を、彼らの住処まで案内しないといけないからね!』
〈おい、ワレのハナシをするな!〉
〈え?だって君らを案内するために行動してるんだよ?〉
〈ワレラのコトはよい、カリュウのキゲンをソコねないでくれ!〉
〈そういうわけには、、〉
『、、、ウインドウルフだと?』
『、、、何故貴様とウインドウルフが繋がる?
いや、まて。』
また私をジロジロと見定め始めた。
目がカッとなって怖いんだよな、これ。
『、、、なるほど。そういうことか。』
また何か分かったらしい。
『、、、出てこい。
ウインドウルフ、スライムイーター。』
〈ヒィィィィ〉
〈ピィィィィ〉
2人とも情けない声を上げる。
ちょっと笑える。
風月とスラ丸がおずおずと風纏いから出てきた。
『カリュウサマ、オハツにオメニかかります、、』
『オハツデスマス、、』
ずいぶん怯えているな。
まぁ、火龍だもんな。
無理もない。
『わっ!!!』
『ヒィィィィ』
『ピィィィィ』
脅かしてしまった。
『あはははは』
面白い。
『、、、何をしておる?』
『いや、この2人がこんなに怯えるのがおかしくてね。』
『ごめん、ごめん。』
『、、、貴様は怯えぬのか?』
『そりゃ怖いよ。
でも、俺からしたら、この風月やスラ丸だって敵に回したら1撃で殺されてしまうからね。』
『これ以上はどんなに強くても、もう一緒だよ。』
『、、、ふっ。
たしかに、貴様のステータスはスライム以下だしな。』
失礼なやつめ。
まぁ事実だからいいんだけども。
『あ、この2人に手を出したら案内はしないからな?』
『、、、分かっておるわ。』
『、、、じゃが、ウインドウルフの住処まで案内と言ったな?』
『い、いえ、ワレラのコトはよいので、サキにカリュウサマのヨウケンをすませて、、』
『、、、アトラだ。』
『はい、、?』
『、、、二度も言わせるな。
この先、しばらく共に行動するのだ。
いちいち火龍様と呼ばれたくはない。』
『ワカリました、、。』
『アトラー!』
『、、、うむ。』
スラ丸はいつも元気でいいね。
『アトラ、それじゃあ先に風月達を住処まで案内するってことでいいかい?』
『、、、異論はない。
今さら急ぐこともないでな。』
『ありがとう!』
ふんっと、鼻息を鳴らしたが、アトラ、
なかなか、話のわかるやつじゃないか。
両親のこともあるし、
なんとか力になってやりたい。
もちろん、仲直りさせるために、ね。
『でも、アトラが風月達の住処を襲ったんだろ?
よくよく考えれば君が悪いんじゃないのか?』
『なっ、、ナニをイウ!ワレラはオソワレテなどおらぬ!
たまたまタチヨラレタだけだ!』
取引先のお偉いさんかよ。
接待感が半端ないな。
そんなに怯えなくても。
『、、、まぁ、話を聞きたかっただけじゃが、結果的には追い出す形になってしまったな。
すまぬ。』
あらら?
この子、本当はとても良い子?
『と、とんでもない!!』
こいつはずっとこの調子で大丈夫だろうか?
心配になるほどだ。
『ボク、スラマルダヨー!ヨロシクネー』
一方のこちらはすぐに怯えがなくなったな。
相手の感情に反応しやすいのかな?
場が和んで助かる。
『、、、うむ、よろしく頼むぞ。』
こうして、また1人パーティが増えた。
目的地も増えた。
冒険の形は様々だと思うが、これはこれで面白い。