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アトラの書 1

我が名はアトラ。

人々は我を見てこう言う。

火龍アトラと。


獄炎龍イグニスを父に持つ。

世界で1匹の、哀れな火龍だ。


『、、、退屈だ。』


我は1人だった。

母も一族も皆、父イグニスに殺された。

我のみが生き残った。

生き残ってしまった。


その時の我はまだ幼く、深い傷を負い、

目が覚めたのは里より遠く離れた谷の底だった。


最後の記憶では、父に殺される母の姿、

里を焼き払う獄炎。

それのみだ。

まともに動けるようになるまで何年もかかった。

何故、我のみ助かったのか、生きているのか、

父は何故、あのような蛮行に及んだのか。

どこに消えたのか。

何も分からなかった。

何も知らなかった。

ただ、一つハッキリしている事はある。


『復讐する。』


母を、仲間を殺した理由を聞き出して、

必ず息の根を止めてやる。

それのみが今も我が生きている理由だった。


しかし、情報は何も掴めなかった。

傷が癒、あちこちを飛び回ったが見つからなかった。

今まで里から出た事がなかったので、

我は他の生物に恐れられるほどの魔物であると、この時、初めて知った。

ただ、恐れられ、畏怖されるだけでは意味がない。

情報を集めなくては。

そう思い、情報を集めやすい種族に化けることを思いついた。

それが人間だ。

やつらはとても弱い。

弱いが故に集団で行動する。

弱いが故に独自の発展を遂げていた。

情報に1番強い種族であると判断し、人間に化けて行動した。

人間が得た知識を学び、言語を学び、文化を学んだ。

だが、獄炎龍イグニスの情報は、さほど多くはなかった。


魔物ランクSの伝説の龍。

この世界には5属性の龍が存在しており、5体の龍がそれぞれの属性の頂点に存在する。

風龍、、暴風龍ヴァリア

雷龍、、爆雷龍トニトス

水龍、、豪水龍アウロラ

土龍、、精霊龍ミブル

火龍、、獄炎龍イグニス

都市を一夜で滅ぼせるほどの能力を有している。

魔王とも呼ばれている。


それだけの情報だ。

これでは不足だな。

あらたに書き足さねばなるまい。

火龍は滅び、もはや我のみだと。


一体どこにいるのか。

我の持つ固有スキル〈心眼〉で相手の情報は全て読み取れる。

父が何かに偽装していても、我には分かる。

だが、人の中にも父の姿はなかった。


人の姿では行動範囲が狭く、遅いので、たまに火龍となって飛び回った。

しかし、我が火龍の姿となり、あらわれれば、皆逃げていく。

行動範囲は広がるが、逃げてしまっては情報収集もできぬ。


飛び回っている時に、ウインドウルフの群れを見つけた。

奴らならば、何か情報を持ってないかと近寄ったが、やはり逃げられてしまった。

奴らは足が速い。

、、だけでなく、途中で消えたりもする。

不思議な種族だ。

戻ってこないかと、住処にしばらく住み着いたが、奴らが再び、あらわれる気配はなかった。


やはり火龍の姿ではダメか。

そう思い、人の姿となり、人の住む町や村を回ったが、、

結局、我の纏うオーラに恐れて逃げ出すものばかり。

かと思えば、冒険者らしき一行に、いきなり襲われたこともあった。

無論返り討ちにしてやったが、、

『、、、もう、疲れた。』


この村を調べたら火龍の姿となり、一度人里から離れよう。

人間は嫌いだ。

弱く、群れるしかないくせに、群れになると急に威勢が良くなる。

じつに見苦し。

我に怯えたと思えば、襲ってくる。

襲ってくるものはおかしなスキルを持った奴らばかりで面倒だ。

もう相手にしたくない。


宿屋に向かった。

『はい!いらっしゃい!』

『、、、店主よ。』

『ひぃぃぃぃ』

まだ何も言っておらんだろ。

これだから人間は嫌いだ。

『、、、今日、私を泊まらせろ。

そして私以外の人間は近寄らせるな。

金ならば出す。』

『し、しかし、他のお客さんは、、』

『、、、何か言ったか?』

『はいぃぃぃ』

『、、、では、私は村で情報を集めてくる。

戻るまでに部屋の準備をしておけ。』

『はいぃぃ!それではいってらっしゃいませ!』


しばらくいろいろな村人や冒険者に話しかけたが、やはり皆逃げ出してしまった。

『、、、クソが。』

イライラする。


もう休もう。

そう思い、宿に帰ると、宿屋に人がいた。

我が貸切にしたはずだ。

何か言っているな、鬱陶しい。

『、、、邪魔だ。どけ。』


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