旅立ちの書 1
『いやいやいや、そんな急に、、』
『そうか?ならアスまでマトウ』
『だが、ワレラもハラがヘっている。
いつまでもキサマらのイノチがブジあるとオモうなよ?』
脅すなよ、、。
これ、行かなきゃダメなやつだ、、。
『分かったよ、明日、また来るから。
それまで人間食べちゃダメだからな!』
『ワカっておるわ。』
本当かよ。
『ディーくん、ちょっといいか?』
ヤソップがおずおずと声をかけてきた。
『はい?』
『君は今、何語を話していたんだ?
もしかして、彼らと会話していた!
なんて言わないだろうね!?』
『はい』
『なんてことだ、、』
『ちょっとアンタ!いい加減な事言わないでよ!
魔物と話せる人間なんて聞いた事ないわ!』
そうか、リネア。
お前の世界はずいぶんと狭い世界だな。
私はもう魔物語ペラペラだ。
『俺はペラペラだよ』
『アンタの防御力の話なんてしてない!』
失礼な。
『とにかく、彼らと交渉して、
見逃してもらえることになりました!』
『交渉って、何を差し出すんだい!?』
『ボクのこの鋼の剣かい!?』
いらないよ、そんなの。
魔物が剣もらってどうすんだよ。
『彼らを、火龍に襲われたという住処まで案内することが交渉の材料です!』
『なに言ってんの?』
何言ってんだろうね、本当に。
事情を説明した。
私のスキルについても説明しなくてはならないので、
時間がかかりそうだ、、。
しばらくして、
『そんなスキルがあるのか、、』
と、やっと理解してもらえた。
『でもディーくん!
それでは君が犠牲になってしまうではないか!』
『ランクCの魔物の住処、
さらに火龍もいるかもしれない危険な場所に君1人で向かうなんて!』
あ、付いてきてくれないのね。
『アンタ、、』
え、なにこのしんみりした空気。
死亡フラグなのか?これは。
『ボクモ、イクー』
スラ丸、、
この子がいればなんとかなる気がする。
強さだけではなく、
きっと仲間ってそういうものだ。
一旦村まで帰ることになった。
討伐はできなかったが、
村近くの森からは追い出すことができそうなので、
一応依頼はクリア扱いとなった。
私にとっては代償が大きすぎたが。
家に帰り、またまた説明することになった。
しかし、家族への説明が1番キツい。
Cランクの魔物がいるような場所だ。
簡単には帰ってこれないだろう。
『そんな、、』
父親が青ざめている。
『ごめんね、父さん、D子、
でも行かなくちゃいけないんだ。』
『しかし、そんな危険な場所に、、』
『何でディー兄ちゃんが犠牲にならないといけないの!?』
『そんなの、納得できないよ!』
D子が泣きながら言った。
『D子、、』
どんな世界でも、家族は家族だ。
たとえ役割として決められたものでも、
一緒に過ごして、助け合って生きた時間は、
紛れもなく家族だった。
さよならも言えずに別れてしまった以前の私の家族のことを思う。
きっと、こんな風に泣いてくれたのだろう。
きっと、こんな風に心配してくれたのだろう。
そう思うと、
なんだか急に感情が溢れてきた。
私も泣いていた。
父さん、母さん
親不孝な息子で、
『本当にごめんなさい』
『謝るなっ!!
お前は家族やみんなの為に行くんだろ!?』
『誰かの為に行動してるんだろ!?』
『謝る必要なんて何一つない!』
『父さんはな、ディー!
お前と言う息子を持って誇らしいぞ!』
『だから胸を張ってなさい!』
『そうよ!ディー兄ちゃんはすごいよ!
納得できないけど、ディー兄ちゃんならちゃんとやり遂げて帰ってくるって信じてる!』
『私の自慢のお兄ちゃんだもん!』
なんだよもう。
温かいな、ここは。
『必ず帰ってきてね?』
『いってらっしゃい』
『いってきます!!』
今度は言えた。
ちゃんと、行ってきますが。
父さん、母さん、行ってきます
翌朝、村の出口にヤソップたちがいた。
なんだ、付いてきてくれるのか?と思ったが、
『お別れを言いにきたよ!』
縁起でも無い。
『これ、僕の鋼の剣だ!
君にあげるよ!』
んー、、いらないけどなぁ。
まぁ、高く売れるか。
『あ、、ありがとうございます』
『私からはこれね、薬草と地図、必要になるでしょ?』
ヤンヤン、、
『ほら、リネアも言うことあるでしょ?』
ん?
『いや、私は、べつに、、』
『それでいいの?リネア』
ん?ん?
告白でもされるのか?
『、、、ごめんなさい。
アンタのおかげでウインドウルフのところに辿り着けたし、命も救われたわ。』
『その、、ありがとう。』
なんだ、ちゃんと言えるじゃないか。
『言える時にちゃんと言っておいた方がいいよ?
きっと、それが後悔しない生き方だと思う。』
『え?』
『じゃあまた!』
私は振り返らずに進み出した。
後ろを向いていたって変わらないさ。
『前進あるのみ!』
『ゼンシン!ゼンシン!』
いつのまにか合流していたスラ丸が言う。
『そうだな!前進!前進!』
進もう!
この先の冒険に向かって!