冒険の書 5
まさか、あの時の冒険者一行と同じパーティを組んで討伐に出かけるとは、、
世の中何があるか分からんものだな。
にしても、ここまで気付かないものか。
彼らとは何度も話した。
というか何度もぶつかりに行った。
それなのに、全く気付かないとは、、
いかに冒険者は、我々、村人の顔を見ていないかが分かる。
どうせ違いなどないと思ってるに違いない。
村人だってそれぞれ個性がある。
自慢じゃないが、私はそこそこイケメンだ。
村人の中では、村人Fの次にイケメンだと思ってる。
村人Cはどちらかというと可愛い系だし、
村人Aだって頼れるアニキ顔だ。
村人Eに至っては、ほぼゴリラだし、
村人Gのあの目元のホクロには色気を感じる。
みんな違うのだ。
一度見たら覚えろよ。
まったく、、
まぁ、私も彼らを忘れていたのだから、
そこは許してやろう。
だがしかし、
このリネアという失礼女は許せん。
あの頃から何も変わってないじゃないか。
このままだと、純粋な村人たちが、
またこの女の失礼な態度に傷付けられてしまう。
私は見た目な青年だが、
中身はしっかり(42)なのだ。
ここはビシッと大人である私が彼女を正さねば!
『リネアさん、ちょっとよろしいでしょうか?』
私は彼女の前に立ち塞がり、説教をはじめた。
『なによ?』
『俺は道案内はしてますが、あなたの奴隷でもなんでもないんですよ?』
『もう少し礼儀ってものを、、』
『グルルルル、、』
あ、ウインドウルフだ。
『ささ、どうぞ、リネアさん、、』
私は彼女の後ろに隠れた。
『ダッサ』
という彼女の声は聞かなかったことにして。
ウインドウルフは見た目から、もう強そうだ。
風を纏っている。
あれは遠距離攻撃もあるかもしれない。
そう思い、
私はさらにスラ丸の後ろまで下がった。
『ドウシタノー?』
『スラ丸を後ろから見たくなったんだよ』
『ワカッター』
『ミテテー』
強くなろう!
そう、決意した瞬間だった。
即座に戦闘体形になった。
タンクとヤソップが前衛を張り、
中衛にヤンヤン、リネアと続く。
後衛にスラ丸とヒーラー。
最後衛に私という陣形だ。
だが、睨み合いが続いて一向に戦闘にならない。
『まずいな、囲まれている』
ヤソップが珍しく弱音を吐いた。
『これ、ヤバくない?』
リネアも心配そうに呟く。
気付かなかった。
いつのまにか、ウインドウルフの群れに囲まれているではないか。
囲まれてしまっては、前も後ろもなくなる。
つまり私も前衛だ。
戦闘において、1番弱いものから襲うのは鉄則だ。
あ、これやばいかも。
そう思った次の瞬間ーー
『ガウッ』
一匹のウインドウルフが真っ直ぐ私に向かって襲いかかってきた。
あ・・・
『ビリビリー!!』
と、
一瞬辺りが真っ白になったと思ったら、
スラ丸が電撃を放っていた。
電撃魔法?え?そんなん使えるの?
なんて思って聞いてみれば、
『ナンカ、
ビリビリデキソウダッタカラ、ヤッテミター』
らしい。
これだから才能があるやつは嫌だね。
ビリビリできそうって、、
あれ?
昨日、満月草食べた時にそんな感じのこと言ってなかったか?
これがスライムイーターの能力か。
恐ろしい。
ともかく、助かった。
だが、スラ丸の攻撃で怯んだウインドウルフたちだったが、
すぐに体勢を立て直している。
依然としてピンチに変わりはない。
ヤソップ達の様子を見たが、
完全に怯えてしまっている。
無理もない。
彼らのランクはD、ウインドウルフはランクCだ。
単体なら勝機はあるかもしれないが、
群れになれば敵うはずもない。
頼みのスラ丸の電撃は、相手を一時的に麻痺させるもので、
討伐するほどの威力はないようだ。
このままでは全滅だ。
『試してみるか、、、』
私はウインドウルフの前に出た。
『え?』
『ちょっと、なんでアンタが前に出んのよ!
弱いんだから引っ込んでなさい!』
スキル<やあ>
『アンタ何言って、、』
。。。
『ナゼ、キサマはワレラのコトバをハナせる?』
先頭の一匹が答えた。
よし!
あとはフリーワードスキルを使用しよう。
『降参する、俺たちでは君らに勝てない。
命以外なら何でも渡すから、見逃してくれないか?』
しばらくの沈黙の後、
『ワレラのコトバをハナス、フシギなニンゲンよ。
キサマにメンじてミノガしてやる。』
え?いいの?
『しかしフシギだ。
コトバもそうだが、
ナゼ、ワレラのイバショがワカッタ?』
『えーっと話せば長いんだけど、、』
。。。
『ナント!?そんなコトができるのか!?』
『ナラバ、キサマにタノミたいことがある。』
『命以外で協力できることなら聞くよ?』
『キサマのイノチなどトったところでナンのヤクにもたたぬわ!』
また笑われた。
最近よく笑われるな。
『ワレラのスミカまでアンナイしてもらえぬか?』
『君らも迷子になったのか?』
『いや、スミカをオソワレてしまい、
ニゲルうちに、このモリまできてしまったのだ。』
たしかに、こんな辺境の村に、
ランクCの魔物がいるのはおかしいと思っていた。
そんな理由があったのか。
しかし、
ランクCのウインドウルフを襲う奴って一体、、
『ワレラでもカリュウにオソワレてはひとたまりもないわ。』
あ、火龍ね。
え?火龍?
え?その火龍に襲われた住処まで案内しろってこと?
え?それ命取ってるのと変わらなくないか?
『ではイコウか』
ええええ、、、