冒険の書 4
翌日、ウインドウルフ討伐隊が結成された。
ウインドウルフはランクCの魔物らしい。
この辺りには、ランクEやFの魔物ばかりなので、
騒ぎになっても当然だろう。
もちろん私も討伐隊に参加した。
参加して無事討伐できたら、
1人あたり8000ポイントがもらえるからだ。
貢献度に応じて更にプラスでポイントが付くという。
討伐してやる!!
という、熱い思いは微塵もなく。
私は案内スキルで、
ウインドウルフの元まで連れて行けばいい。
それで8000ポイントはうますぎるだろ?
参加しない手はない。
問題は私のスキルをどう、説明したものか、だが。
『昨日森で見たので、そこまで案内します!』
と、言ったら、
あっさり討伐隊に参加させてもらえた。
ウインドウルフ自体の情報が少なかったので、
私の目撃情報(実際に見てはいないのだが)はかなり重要らしい。
ボコボコにやられた腹いせに、
アニキを連れてくるザコキャラの気持ちだが、、。
まぁ、今はザコキャラでいいさ。
私は事実は素直に受け止めるタイプなんだ。
『君が案内人かい?』
ザコキャラの私に、
主人公みたいなやつが話しかけてきた。
『へい、そうでやんす。』
『やんす?』
しまった、ザコキャラ感を出し過ぎてしまった。
『すみません、ディーと言います!
俺が案内人です!』
『そうか、私はこの討伐隊のリーダーを任されている、戦士のヤソップだ!
よろしく頼むよ!』
変な名前。
『彼女は武道家のヤンヤンと、
こっちの無愛想な子が魔術師のリネアだ!』
『ちょっと、誰が無愛想よ!』
『事実だろ?』
『、、殴るわよ?』
『すみません』
『武道家の私より、リネアの方が強そうだね!』
『なによ!ヤンヤンまで!』
皆で笑い合う。
えーと、置いてけぼりなんですが。
無視しないでくださーい。
この感じ、なんか既視感があるな。
『よ、よろしくお願いします、、』
討伐隊は彼ら3人と私、
それとタンク1人、ヒーラー1人の6人パーティだ。
ちょっと少ない気がするが、
辺境の村だ。
今いる人間で集まればこんなものだろう。
早速、討伐に出ることになった。
村を出てすぐに、
『マッテタヨー』
と、スラ丸があらわれた。
まずい!
今私の後ろには戦士や武道家がいる!
魔物のスラ丸は討伐されてしまう!
と、焦ったが、
『これは珍しい!
スライムイーターじゃないか!
こんなところで会えるとはな。』
ヤソップが驚いている。
スライムイーター?
スライムをイートしちゃうのか?
え、、もしかしてこの子、
仲間食べちゃったの?
だから1人なの?
怖すぎる。
『スライムイーターって、
スライムを食べるんですか、、、?』
『あははは、そんなわけないじゃんー』
リネアが笑う。
『こいつはスライムの希少種で、
スライムイーターというんだ!
通常の個体と違って、知能が高く、
なにより、なんでも食べる!
そして食べたものをそのまま力に変える能力があるんだ!
だが、仲間は食べないね!』
そうなの?
ただの食いしん坊じゃなかったのキミ?
すごいやつなのか、、
でも、それならなおさらヤバいではないか!
希少種といえばレアアイテムやレア素材になる。
スライムだし、簡単に倒せる。
このままだとスラ丸は、、
『待ってください!
信じてもらえないかもしれませんが、
こいつは俺の大事な仲間なんです!
希少種かもしれませんが、
今回は見逃してください!!』
まだ一緒に過ごした時間は少ないが、
スラ丸のおかけで、
やっとこの世界を楽しいと思えてきたんだ!
こんなところで諦めてたまるか!
何をしても守ってやる!
『、、何を言ってるんだ?
討伐なんてできるわけないだろ』
『君の従魔じゃないか』
『え、、?』
従魔ってなに?
『それに、たとえ従魔契約していなくても、
残念ながら我々に敵う相手ではないよ』
『あんた、どうやってこんな強い魔物と契約できたのよ!?』
え?
なになに?
情報が多すぎて分からない。
、、でも、なんだろう、
なんか、すごく、恥ずかしい。
『あのー、従魔契約ってなんですか、、?』
『そんなことも知らないの!?
あんた、冒険者ってより村人の方がお似合いよ!』
『まぁまあ、リネア、
彼はまだ新人よ?
知らないことがあったっていいんじゃない?』
『こんな事も知らないで冒険者なんて名乗らないでほしいわね!』
『従魔契約っていうのは、魔物と契約を結んで、一緒にパーティを組むってことだ!
従魔契約を結んだ魔物は人を襲わないし、共に戦ってくれるぞ!
だから、誰かの従魔に他の冒険者が攻撃するなんてありえないよ!』
そうなのか、、
いつの間に従魔になったんだろ?
でもよかった。
これでスラ丸は討伐されずにすむ。
しかし、スラ丸、お前は本当に何者なんだ?
この人達はランクDの冒険者だぞ?
それより強いなんて、、
『オナカヘッター』
このブヨブヨちゃんのどこにそんな力があるのか。
人は見た目に寄らないな。
つくづく思う。
バタバタしたスタートだったが、
その後は順調に進んだ。
ルートを最短に設定したので、魔物と出くわす可能性が高かったが、今のところまだ大丈夫だ。
すると、突然、分岐点が現れた。
矢印は左を指しているので、そう伝えようとしたら、
『これは分岐点だな!
どっちだろう?』
先を行くヤソップが悩んでいた。
『ねぇ、どっちなの?
てかあんた案内人なんだからもっと先行きなさいよね!』
と、リネアが怒声を浴びせてきた。
『すみません、左のルートです。』
それを聞いたリネアは感謝もせずに、
『あっちだって』
と言い、離れて行った。
ん?
この既視感、
やはり覚えがある。
この腹の中から湧き上がる怒りは、、
、、そうだ!!
私が村人Dのころ、
初めて村で案内をしたパーティだ!
お前らだったのかっ!!