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転生とかないよ

普通に考えたら分かる話だが、

異世界とかない。

異世界とは、この世界の人間が空想で作り上げた世界なのだから、

異世界が本当にあったとしたら、それはもう、空想好きの誰かがじつは神様でした。

というオチしかありえない。


つまり、私が今いるこの世界は異世界ではない。

そう。

断じて違う。

ちょっと耳が長い色白の人がいたり、

空を飛ぶ大きい鳥みたいのがいたり、

液体状のブヨブヨしたものがいたり、

それだけだ。

そこは多様性の時代。

認めることから始めないと。


ではここはどこなのか?

という疑問が生まれる。

私の最後の記憶では、車に轢かれそうな子供を助けようと車道に飛び出したところまではある。

その後、目が覚めたらここだ。


うん。

まぁ、じゃあ、あれだ。

普通に考えて夢だ。

こんなファンタジーな夢を見るとは。

吉田武夫(42)私もまだまだ若いらしい。

サラリーマン生活22年でこんな夢を見たのは初めてだった。

子供の頃はよくRPGをやっていたので、

なんだか懐かしい気持ちにもなる。


だが、なにか変だ。

違和感がある。

この町を見てみると、冒険者ギルドがあり、酒場があり、教会、宿屋、武器屋まであるのだが、

さっきからずっと、私はこの町中をウロウロしているだけだ。

入りたくても入れない。

これではせっかくの冒険が始まらないではないか。

夢の世界を思う存分満喫できないではないか。

そして、ずっと胸の中にある言葉が引っかかっている。

なんだこれは?


すると、町外れより、冒険者一行と思われる一団が町へ入ってきた。

村人Aが冒険者一向に言う。

『ようこそ、ここはコルネオの町だ!』

先頭の勇者らしき人物が言う。

『やっと着いたな』

『長かったねぇ』

武道家らしき女性が答えた。

僧侶だか魔術師だか、なんかそれっぽいやつが

『宿屋はどこかな?』

と言った、その時だった。

私の心の中にある言葉が土石流のよう流れ出た。


『宿屋まではこの道をまっすぐだよ!』


それを聞いた魔術師っぽいやつは感謝もせずに、

『あっちだって』

と言い、離れて行った。


失礼なやつだ。

せっかく道を教えてやったのに。

だが、

なんだか、怒りより達成感で体が満ちていくのが分かる。

もっと教えたい。

宿屋への行き道を教えてやりたい。

そんな欲求で満たされていた。


ん?

なんだこれは。

これじゃ、まるでゲームの村人じゃないか。

おかしい。

とりあえず冒険者ギルドへ行って、冒険者登録をしよう。

そう思うだが、体がうまく動かない。

違う。

身体中が求めているのだ。

町中をウロウロしたいと。




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― 新着の感想 ―
こんばんは初めまして初見の人です これは奇妙な夢ですね…自分がゲームの村人のように振る舞ってしまうなんて不思議な感覚ですね。戸惑いつつもなぜか少しだけ満たされた気持ちになったのは驚きでしたが、自分だっ…
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