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サボリ②

読みに来てくれてありがとう!

是非最後までよろしくお願いしますm(__)


ポイントが40ptくらいいけば続編書こうかと思います!!



希夜香さんとそのまま直接お母さんのところまで行く予定だったのだが、面会は夕方以降ということだったので暇つぶしに学校に来てみた。

ヤンキーみたいな通学理由だが、本当は今日登校する予定がなかったのだから、もはや真面目と言えるかもしれない。

普段は自転車だが、帰りのことも考えて今日はバス通学だ。



「そういえば、保健室の早乙女先生は希夜香さんのことを覚えていましたよ。それで俺思ったんです。全員が全員、希夜香さんのことを忘れているわけじゃないんじゃないですか?」



思い出したかのように希夜香さんに伝える。11時半を回った校舎の時計を眺めながら、校門を潜る。グラウンドには体操服姿のJKどもがわちゃわちゃとソフトボールをしている。ボールの飛んだ方に人が群がっていく。

あれはきっと2年生だろう。うちのクラスの女子も今ソフトボールで、男子は体育館でバレーだ。それにしても平和だ。



「いや、私今週の初めに保健室に行ったわ。だから覚えていたのよ早乙女先生。だってその時「あなた、どこの生徒?うちの生徒から制服借りてきたの?」って言ってたもの。」



あの変態養護教諭め、しっかり忘れてるじゃないか。あんなカッコつけたこと言っておいて、内心ヒヤヒヤだったのか。

早乙女先生の評価を地の底まで落としておいた俺は希夜香さんと屋上へ向かった。授業中の誰もいない階段をいつもと違う高揚感で上へ上へと上っていく。希夜香さんはいつの間にか本に夢中になっており、先生に見つかることなど全く気にせず読書に集中している。無断で遅刻しているんだから、もうちょっと危機意識を持ってもいいと思う。まぁ、この状況で少し高揚している俺も俺だが。

今頃、俺の教室では数学の授業が…ってそういえば何か提出物があったよな。なんだっけか、まぁどうせ教室には行かないんだし関係ないか。


未来のことは未来の俺に任せるとしよう。

屋上に着いた俺たちは、この学校で誰よりも早く昼食をとった。とは言っても、コンビニで買ってきたおにぎりだけど。



「はい、アーン。」



少し暑くなってきた屋上で、世界一無機質なアーンから差し出されたおにぎりを、少し高鳴る胸の鼓動を抑えつつ一口食べる。パリッとした海苔の食感の中からお米が溢れ出してくる。具もかろうじて到達した、これは鮭だ。



「どうかしら?」



表情を変えず尋ねてくる希夜香さんをじっと見る。



「そうですね。さすがコンビニクオリティ。しっかり美味しいです。」



そんな無表情の中に暗雲が漂う。



「何を言っているの宰くん。そんなコンビニの、何の変哲も面白味もないおにぎりの感想なんて訊くわけないでしょう?頭がおかしいんじゃないのかしら。」



え?なんで俺罵声浴びさせられているんだろうか。



「私が訊きたいのは、こんなどうしようもないおにぎりを、この私が食べさせてあげたことによる付加価値は、いったいどれだけあったのか、ってことよ。」



とりあえずコンビニの関係者全員に謝れ。ついでに俺にも。



「先に言っておくけれど、2倍とか3倍とかあからさまな嘘をぼやいたら、私のシャーペンであなたの片目は潰れてしまうと宣言するわ。」



あっぶねぇ。「倍美味しくなりました!」って答えるところだったよ今。というかこの人、自分の力をどんだけ過信してるんだ。そのどこから取り出したかわからないシャーペンはしまいなさい。

ほんの2、3秒の間で肝を冷やしたが、ギリギリ助かった。ええと、それ以上に高く言わないといけないってことだよな。



「そうですね、10倍くらい美味しくーーー」



「ぎゃうん!」



俺の言葉を遮るように、希夜香さんは俺の脇腹へシャーペンを食い込ませた。俺の背筋はピンと伸び、なんか変な声も出た。



「あら、いい反応するわね。これは面白いわ。これから定期的にやろうかしら。」



いじめっ子の本性が見え隠れしている。ていうか最初から聞く気なかったな。

俺は少し頭に血が上ったが、シャーペンを見つめながらニヤついている彼女の顔をみると、なぜだか怒る気が失せる。



「二度とやらないでくださいよ。次やったら仕返しします。」



意識的に語気を強めた俺の言葉で、希夜香さんはゆっくりとこちらを向いた。風が栗色の髪をなびかせ、優しいフローラルな香りがこちらまで届く。



「それは宰くんの今後次第ってところかしら。私にひざまづくのか、屈服するのか、奴隷となるのか。選択によっては助かるかもしれないわね。」



一体どの選択なら”脇腹刺し”を回避できるのだろうか。というかこの選択肢に何か違いがあるのか?なんとか革命を起こすしかないな。



「覚悟しておきなさい。私と交際関係を持ってしまったが最後、あなたはもう逃れられないわ。」



さっきのハグの仕返しなのだろうか、なんだかやたらと言動が怖い。それなのに、放たれる雰囲気は非常にふんわりしているように感じる。

壁にもたれかかりながら残りのおにぎりを間髪入れずに口に放り込んでいる。その様子を見て、なぜだか七海のことが頭に浮かぶ。

いや、あいつはこんなもんじゃない。おそらくおにぎりは二口だろう。



「ごちそうさま。中の下といったところかしら。」



2つ目のおにぎりも平らげた希夜香さんは手を合わせながらそう言った。

何かコンビニに恨みがあるのだろう。異様に辛口な評価を下す希夜香さんの言葉を軽く流す。

俺は横でサンドイッチの包みを開けた。

中身はハムとレタス。非常にシンプルな見た目で2つ入っている。毎年毎年中身が少なくなっていることに目を瞑れば無難に美味しいサンドイッチだ。

俺が一口目を食べようとすると、横には口を開いて待機しているコンビニ辛口評論家がいた。



「あの、希夜香さん?」



「ちょっと宰くん。女の子にいつまで口を開けさせておくつもり?」



開いていた口をこちらに向けていた希夜香さんが謎の問いかけをしてくる。本当に女の子ってわからん。



「えーと。一応聞くんですけど、なんで口開けてるんですか?」



「それはもちろん、宰くんに口移しでサンドイッチを食べさせてもらうからよ。さぁ、かかってきなさい。」



今から戦いでも始まるのか。



「口移しでサンドイッチを貰ってもテンション下がるだけじゃないですか?」



聞く耳持たずの希夜香さんは再度口を大きく開けてこちらに近づいてくる。俺は変な妄想を一瞬で振り払い、サンドイッチを希夜香さんの口元に近づけた。もちろん口移しなんていう破廉恥な行為はしない。

開いた口は犬のようにバクっとサンドイッチにかぶりつく。そしてパクパクとサンドイッチを食い進めていき、俺の指ごと口の中に収めた。



「ちょ、ちょっと希夜香さん?!ゆび!指食ってます!!」



俺は急いで指を引っ込める。指には温かく湿り気のある感覚。希夜香さんはペロリと舌を出して、



「ごちそうさま。美味しかったわ。」



なんとも意味深な言葉を残して俺を動揺させる希夜香さんであった。


最後までありがとうございます!


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