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保健室

読みに来てくれてありがとう!

是非最後までよろしくお願いしますm(__)


ポイントが40ptくらいいけば続編書こうかと思います!!



「裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者。」



遠くの方で、誰かがずっと叫んでいる。俺の頭には、その言葉がこびり付いて取れない。



「裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者、裏切り者。」



だんだん近づいてくる。音量と怨念のようなものが伝わってくる。

頼む、来ないでくれ。

耳を塞ぎたい一心なのに、なぜか俺の腕は言うことを聞いてくれない。俺はその場で立ち尽くす。



「裏切り者!裏切り者!裏切り者!裏切り者!裏切り者!裏切り者!裏切り者!裏切り者!!!!」



「ぁぁああああああ!!!!!」



俺は目を覚ました。

気が付けば汗がびっしょり、俺とシャツを密着させている。呼吸も荒い。

体を起こして、頭を強く押さえる。



「ちょっと大丈夫?!小太刀くん。」



心配してカーテンレールを開けて中を確認したのは、養護教諭である早乙女先生だった。



「なんかひどくうなされていたけど、何かあったの?」



俺は必死に思い出す。けど何も出てこない。夢の内容は悪夢だったこと以外はすっかり忘れてしまっていた。

早乙女先生は俺の目の前まで来て、おでことおでこを合わせる。優しくて大人の魅力、というか色気を漂わせており、男子生徒から絶大な人気を誇る美人教師だ。意識しないのは男として恥だ、だから俺は言う。ちょっと意識した。



「いえ、大丈夫です。すみません、迷惑かけてしまって。」



俺はベットの上で後ずさりながら距離を取る。

そんな俺を少し心配そうな目をしている早乙女先生は、切り替えて少し笑顔を作る。



「いいえ、私の仕事は学生が健やかに生活できるようにすることなの。だからあなたが謝る必要はこれっぽっちもないわ。むしろ最近は人が少なくて寂しいくらい。」



元いたであろう席に戻った早乙女先生は何やら資料の作成をしている。



「今日は送っていくわ。さっきまで月ヶ瀬さんがいたんだけど、何か思いつめた顔して帰って行ってしまってーーーー」



「希夜香さん、さっきまでいたんですか?!」



ベットから這い出るようにして、俺は問いかけた。驚いた顔をした早乙女先生はこくりと頷く。

今から追いかけたら、間に合うかも!

確かに微かに漂うこの優しく可憐な匂いは希夜香さんに間違いない。

こんな時にも反応する自分の癖に少々飽き飽きする。



「あぁ、ごめんなさい。さっきと言っても30分ほど前なの。ずっとベットの前に座っていたんだけどね。もう家についてる頃じゃないかしら。」



俺の体は静止する。それじゃあ追いつきようもない。よく眠れたおかげで、頭が冷静になっているのがわかる。

まったく。今くらい、衝動的に動いてもいいってのに。



「月ヶ瀬さんね、ものすごい剣幕で保健室に来たのよ。私ずっと、大人しくてお淑やかな子だと思っていたから、びっくりだったわ。それで「倒れている子がいるからきてくれ」って言うから見に行ったら、あなたが倒れていたのよ。」



特に質問してくるわけでもなく、早乙女先生は状況だけを教えてくれた。

曖昧だった記憶が戻ってくる。あの時の希夜香さんの顔、あれは一体どういうことだったのか。悲しそうだったのか、見限ったような顔にも見えた。

やはり分からない。



「先生、希夜香さんのこと知ってるんですね。」



俺は素朴な疑問を投げかける。

早乙女先生は不思議そうに首を傾げた。



「それはもちろん。入学する前から、全校生徒の顔と名前は一致しているわ。私、そういうの得意だし。いつ何時でも保健室が誰の居場所でもなれるようにね。そうしてみんなが安心して青春を謳歌してくれれば、私も嬉しいし。」



まさに、これが白衣の天使ってやつか。こちらに近づいてくる早乙女先生に、俺はそう思ってしまった。



「でもまぁ、来てくれるのが筋肉質な男子だと一番いいわね。そういうタイプはなかなか保健室にくる機会がないから、ちょっと残念だけど。そういう意味では小太刀くん、あなた結構良いから出してるわよね?」



”そういう意味”ってどういう意味だよ。同時に俺の中で急上昇していた早乙女先生の評価が元に戻る。

チラチラと俺に変な視線を送ってくる早乙女先生に身の危険を感じる。もはや評価はマイナス域に達しているかも。

窓の外は真っ暗、人の気配はほとんどない。

あ、そうだ。



「先生、俺ちょっと教室に帰らないといけない用があるんで、自分で帰りますよ。自転車通学だし、体調もすっかりよくなったんで。」



ハンターのような目が俺を見る。



「あらそう?私が送っていっても...」



「大丈夫です。」



「そう。じゃあ気をつけて帰るのよ。また体調悪くなったら来てちょうだい。」



少し微笑みながら先生は俺を保健室から送り出した。なんか、少し残念そうだった。

九死に一生とは、まさにこのことだ。俺は背後に気をつけながら教室へ向かった。今後、保健室を使うことがないように願いながら。





時刻は19時15分。しまったな、約束の時間より少し遅れてしまった。いや、むしろ気絶していたのに15分の遅れで済むのは幸運か。

早乙女先生と話していなければちょうどよかったかもしれないが、先生との会話で収穫もあったのでまあよしとしよう。


早乙女先生は、月ヶ瀬希夜香を知っていた。先生なら当然、むしろ知らない方がおかしい。でも、この月ヶ瀬希夜香という人間の現状において、それはとても稀有な事例である。

先生がなんで希夜香さんのことを覚えていたのかは不明だが、それさえ掴めれば呪いの解消方法も見つかるかも知れない。ってあれ?


そこで、俺の中には1つの疑問が浮かび上がる。



ーーー希夜香さんの両親は、希夜香さんのことをどう思っているのか。



その辺りも含めて、何か情報を聞ければいいが。

俺は自分の教室の扉を開ける。そこには机の上にに行儀悪く座っている1年JKがいた。



「すまん、待たせてしまったな。」



「珍しいな、先輩が約束に遅れるなんて。」



文面だけを見ると至って普通の会話だが、1年JKの目は細く俺を睨みつけている。少なくとも俺にはそう見える。

夜空に照らされた銀色で長い髪。そこそこの体格の良さに加えて全体的に発育の良い体。それは制服姿でも存分に伝わってくる。でも決してジロジロ見ているわけではないからその辺は誤解しないように。



「ちょっと気絶をしてしまってな。」



正直に答える。なかなか聞かない遅刻理由に、彼女もさすがに驚いて机から降りる。



「何かあったのか?」



「ちょっと寝不足でな。」



「…。」



なんだかものすごく気まずい雰囲気が漂っている。真っ暗で静かな教室であるからだと、自分に言い聞かせる。



「それで頼んでいた件、できたか?影島。」



彼女の名前は影島忍かげしましのぶ。同じ尾根中学出身の1つ下の後輩だ。訳あって中学時代は一緒にいることも多かった。けど、彼女がこの学校を選択したのはすごく意外だった。


なぜなら、俺がいるから。



「あぁ、ある程度はな。」



ボソッとそう呟くと、影島は3枚の紙をよこしてくる。妙に大人びた細い指から、俺は紙を受け取る。

現代の進んだ技術なら、データをもらってもいいところだ。だが、俺と影島はお互い電話番号しか知らない。今後もそれ以外で連絡を取ることはおそらくないだろう。



「これが月ヶ瀬希夜香に関する資料だ。人間関係について一通り洗い出してある。」



「あぁ、助かる。」



彼女はいわゆる”情報屋”というやつだ。調べてほしいことを言えば、大抵の情報は調べてくる。

一度、「一体どうやって調べているんだ?」と聞いたことがあったが、彼女の目が怖かったのでそれ以上深堀りできなかった。


彼女は「用が済んだ」と言わんばかりにさっさと俺の横を通り過ぎていく。



「私は先輩に恩があるし、頼まれれば何だってやるつもりだ。それはいい。でもな、鵤にやったことを許しているわけではないから、その辺は履き違えないでくれ。」



「あぁ。」



俺は後輩の帰り際の言葉に力なく答える。また一つ、嫌なことを思い出した。

一人取り残された教室で夜空を見上げる。月は三日月型でくっきりと光っている。


雲がかかってきたな。


最後までありがとうございます!


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