プロローグ「混沌の幕開け」
「エスティさんって、ホントに美人だよなー……。お前もそう思うだろ、ラルフ?」
「そうだね」
「相変わらずそっけないよなー、ラルフって……。あ、ほら! エスティさんがこっち見たぞ……!?」
横で男友達が鼻息を荒くしているのを完全に無視して、ラルフ・グラースは、今日も魔法の参考書と向き合う。
父のような偉大な魔法使いになるために、日々、魔法の研鑽を積むラルフだが……。人生、思うようにはいかないのが、最近の悩みだ……。
――そう、主に"彼女"たちのせいで!
ラルフが顔を上げると、そこには教室中の男子たちから注目を浴びる、一人の女子生徒の姿が。
「皆さん、おはようございます!」
その女子生徒が元気よく挨拶するだけで、教室中が男子たちの歓喜の声で埋め尽くされた。
「うおおお!! 俺、エスティさんに挨拶されたぞおおお!!」
「エスティさん!! やはり、今日も清楚で美人だ!!」
男子たちがメロメロになる理由は、分からないわけではない。
エスティ・アインレスト……。美人で成績も良くて性格も優しい、学園に一人はいる皆の憧れの的……。
そんな彼女は、腰まで伸びた鮮やかな紫紺の髪を靡かせながら、自分の席へと着いた。
その瞬間――。
「エスティさん! お、俺、紅茶買ってきます!」
「いや、ここはコーヒーだろ! 一番高いの買ってきます!」
彼女の席の周りに、男子たちが群がる。
すると、エスティは――。
「あらあら、ふふ♡ 皆さん、ご親切にありがとう♡」
美の女神ですら、鼻血を出して堕天するほどの愛嬌に満たされた笑みで、上手く下心丸出しの男子たちに対応するのだった。
そんな彼女の殺人的な笑みを目の当たりにした男子たちは、昇天する勢いで宙を舞い上がった。
「くだらない……」
恍惚とする男子たちの群れから外れた席で、ラルフはそう呟き、席を立ってからお手洗いへと向かう。
そして、ラルフが教室を出た瞬間――。
「ふふ……。ラルフ君……♡」
さっきの女神のような微笑みから一転して、小悪魔のようなイヤらしい笑みを浮かべるエスティ……。
そして、彼女もまた、席を立つのだった――。
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