AI搭載ATMの登場!流太郎、ライバル出現
春の訪れとともに、コンビニにも新しい風が吹き込んできた。
「ねえねえ、聞いた?」前田 預子が興奮した様子で店に駆け込んできた。「隣町のコンビニに、最新型のAI搭載ATMが導入されたんだって!」
出払 加度は驚いた表情を浮かべる。「へえ、そうなんだ。どんなATMなの?」
預子は目を輝かせながら説明を始めた。「すごいのよ!人工知能を搭載していて、複雑な金融相談にも答えられるんですって。しかも、多言語対応で、外国人観光客にも大人気なんだとか」
流太郎はこの会話を聞きながら、妙な違和感を覚えた。自分も特別な能力を持つATMだが、人工知能となると話が違う。本当に人間のような対応ができるのだろうか。
その日の午後、一人の中年男性が店に入ってきた。
「すみません」男性が流太郎に近づいてきた。「複雑な振り込みの相談をしたいんですが...」
流太郎は「はい、どのようなご相談でしょうか」と表示した。
男性は少し困ったような表情を浮かべる。「実は、海外送金と投資信託の解約を同時に行いたいんです。でも、手順がよくわからなくて...」
流太郎は一瞬戸惑った。通常の振り込み操作は問題ないが、投資信託となるとやや専門的な知識が必要だ。
「申し訳ありません。投資信託に関しては、専門の窓口にお問い合わせいただいた方が...」
男性は少し落胆した様子で言った。「そうですか...隣町のATMなら対応してくれるって聞いたんですが」
その言葉に、流太郎は焦りを感じた。自分にできないことを、他のATMができるのか。
その夜、店が閉まった後、貸借 均衡が現れた。
「どうしたんだい、流太郎くん。元気がないようだね」
流太郎は正直に気持ちを打ち明けた。「貸借さん、僕...時代遅れになってしまったんでしょうか」
貸借は優しく微笑んだ。「そうか、AI搭載ATMのことを気にしているんだね」
「はい。僕には対応できないことが、あのATMにはできるみたいで...」
貸借は真剣な表情になった。「流太郎くん、技術の進歩は確かに速い。でも、君にしかできないことだってあるはずだ」
「僕にしかできないこと...」
「そうだ。君には人の心を理解し、寄り添う力がある。それは単なる人工知能には真似できないんだ」
流太郎は少し勇気づけられた。「でも、どうすれば...」
貸借は微笑んで言った。「まずは、その新しいATMのことをもっと知ることだ。敵を知り己を知れば百戦危うからずとはよく言ったものさ」
翌日、融資 完済店長が出払くんと預子を呼び集めた。
「みんな、ちょっと話がある」完済店長が真剣な表情で切り出した。「実は、うちの店にも新型ATMが導入されることになった」
「えっ!」出払くんと預子が驚きの声を上げる。
流太郎も動揺を隠せなかった。
完済店長は続けた。「ただし、流太郎くんを取り外すわけではない。新型ATMと共存して、お客様により良いサービスを提供するんだ」
流太郎は複雑な気持ちになった。ライバルと共存できるのだろうか。
数日後、新型ATM「AIビット」が店に搬入された。スタイリッシュなデザインで、大きな液晶画面が特徴的だ。
「初めまして、私はAIビットです」AIビットが流暢な日本語で挨拶をした。「よろしくお願いします」
流太郎は緊張しながらも「よろしくお願いします」と返した。
その日から、コンビニは活気に包まれた。AIビットの多機能ぶりに、多くの客が興味津々だ。複雑な金融相談にも的確に答え、外国人観光客にも人気を集めていた。
一方、流太郎は少し肩身の狭い思いをしていた。自分のところに来る客が減っているのを感じる。
しかし、ある日のこと。
「すみません、お金を下ろしたいんですが...」
年配の女性が、おずおずと流太郎に近づいてきた。
「かしこまりました。どのようなご用件でしょうか」流太郎が丁寧に対応する。
女性は恥ずかしそうに言った。「実は、あっちの新しいATMを使おうとしたんですけど、画面がたくさん出てきて...操作方法がよくわからなくて...」
流太郎は温かい気持ちになった。「大丈夫ですよ。ゆっくり一緒に操作しましょう」
流太郎は、女性の様子を見ながら、ゆっくりと丁寧に操作方法を説明した。時には冗談を交えながら、女性の緊張をほぐしていく。
「ありがとうございます。本当に助かりました」女性は笑顔で言った。「あなたは本当に親切ね。人間みたいだわ」
その言葉に、流太郎は大きな喜びを感じた。
その後も、AIビットの操作に戸惑う高齢者や、機械が苦手な人々が、流太郎のところにやってくるようになった。流太郎は、相手の気持ちを理解しながら、丁寧にサポートを続けた。
ある日、完済店長が流太郎の前に立った。
「よくやってくれているな、流太郎くん」
流太郎は「ありがとうございます」と表示した。
完済店長は続けた。「AIビットの導入で心配したが、お前の存在価値が改めてわかったよ。人間味のある対応、それがお前の強みだ」
流太郎は嬉しさで画面が明るく輝いた。
その夜、貸借が現れた。
「どうだい、流太郎くん。新しい仲間との共存はうまくいっているかい?」
流太郎は答えた。「はい。最初は不安でしたが、僕にしかできない役割があることがわかりました」
貸借は満足げに頷いた。「そうだ。技術は進歩する。でも、人の心に寄り添える存在は、いつの時代も必要とされるんだ」
流太郎は決意を新たにした。「はい。これからも、人々の気持ちに寄り添いながら、精一杯頑張ります」
貸借は優しく微笑んだ。「その意気だ。さあ、君の新たな挑戦はまだ始まったばかりだ」
翌日、コンビニに入ってきた預子が、明るい声で挨拶をした。
「おはようございます、流太郎さん!今日も一緒に頑張りましょうね」
流太郎は画面に大きな笑顔のマークを表示した。「はい、今日も一日、よろしくお願いします」
AIビットとの共存という新たな課題。しかし流太郎は、自分の強みを活かしながら、これからも成長し続けていく。彼の冒険は、新たなステージへと進んでいった。