表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

闇金融団の罠!流太郎、窮地に立つ

秋の気配が漂い始めた頃、コンビニには新しい風が吹いていた。店長の転勤に伴い、新しい店長が着任したのだ。


「みなさん、よろしくお願いします」


新店長の 融資ゆうし 完済かんさいは、凛とした雰囲気の中年男性だった。


「はい、よろしくお願いします!」出払でばらい 加度かど前田まえだ 預子あずこが元気よく応えた。


流太郎も画面に「よろしくお願いいたします」と表示した。


完済店長は流太郎を見て、少し驚いた様子を見せた。「ほう、これが噂の未来型ATMか」


出払くんが誇らしげに説明を始めた。「はい!流太郎さんは特別なんです。お客様を助けたり...」


完済店長は厳しい表情で遮った。「ATMは ATM らしく、本来の仕事をしっかりやってもらえばいい」


流太郎は少し戸惑った。これまでの店長は、自分の特別な能力を理解し、活用してくれていた。しかし、完済店長は違うようだ。


その日の午後、一人の男性客が来店した。スーツを着ているが、どこかきつい雰囲気を漂わせている。


「いらっしゃいませ」預子が声をかけた。


男性は無言で流太郎の前に立った。カードを挿入し、巨額の送金操作を始める。


流太郎は警戒心を抱いた。送金先の口座番号が、以前貸借たいしゃく 均衡きんこうから警告を受けたものだったからだ。


「申し訳ありません。この取引は...」


流太郎が取引を中止しようとした瞬間、男性が低い声で言った。「やめない方がいいぜ、ATMくん」


流太郎は驚いた。この男は、自分が特別なATMだと知っているようだ。


「どういうことですか?」流太郎は慎重に尋ねた。


男性はニヤリと笑った。「闇金融団の仲間から聞いたよ。お前、特別な力を持ってるんだろ?」


流太郎は動揺した。闇金融団が自分の正体を知っているとは。


「今すぐこの取引を通さないと、お前の正体をばらしてやる。このコンビニの連中も、お前が化け物だって知ったらどうなるか...わかるよな?」


流太郎は窮地に立たされた。取引を通せば、違法な資金移動に加担することになる。かといって拒否すれば、自分の秘密が暴かれてしまう。


その時、完済店長が近づいてきた。


「何かあったのか?」


男性は一瞬たじろいだが、すぐに取り繕った。「いえ、何でもありません」


完済店長は流太郎の画面を見た。「なぜ取引を止めている?さっさと処理しろ」


流太郎は迷った。しかし、店長の命令は無視できない。


「...はい」


流太郎は取引を進めた。男性は満足げに立ち去っていった。


その夜、店が閉まった後、流太郎は深く落ち込んでいた。


「やあ、流太郎くん」


いつものように貸借が現れた。


「貸借さん...僕、間違ったことをしてしまいました」


流太郎は今日あったことを全て話した。貸借は真剣な表情で聞いていた。


「なるほど、闇金融団の新たな手口か」


流太郎は申し訳なさそうに言った。「僕、弱かったんです。でも、このままじゃ...」


貸借は優しく言った。「流太郎くん、君は間違っていない。確かに今回は彼らの思う通りになってしまったが、これは新たな戦いの始まりだ」


「新たな戦い...」


「そうだ。君の力は、正義のために使うべきものだ。闇金融団を倒すために使うんだ」


流太郎は決意を新たにした。「わかりました。でも、どうすれば...」


貸借は微笑んだ。「まずは証拠を集めることだ。君には店内の監視カメラを見る力がある。それを使って、彼らの行動を記録するんだ」


流太郎は頷いた。「はい、やってみます」


翌日から、流太郎は慎重に行動を始めた。怪しい取引があれば全て記録し、パターンを分析した。


数日後、再び例の男性が現れた。


「よう、ATMくん。また頼むぜ」


流太郎は冷静に対応した。「はい、かしこまりました」


しかし今回は、取引の詳細を全て記録。さらに、男性の顔も監視カメラでしっかりと捉えた。


男性が去った後、流太郎は出払くんを呼んだ。


「出払さん、警察に通報をお願いできますか?」


出払くんは驚いた。「え?どうしたんですか?」


流太郎は簡潔に状況を説明した。出払くんは真剣な表情になり、すぐに警察に連絡を入れた。


その晩遅く、完済店長が一人で店に戻ってきた。流太郎は不思議に思いながら見守っていた。


すると、店長は周囲を確認した後、流太郎に近づいてきた。


「よくやった、流太郎くん」


流太郎は驚いた。「え?」


完済店長は小さな声で言った。「実は私、警察の捜査協力者なんだ。闇金融団の調査のために、このコンビニに潜入してね」


流太郎は驚きのあまり、画面にビックリマークを大きく表示してしまった。


完済店長は続けた。「君の特殊能力のことは聞いていた。だからこそ、表向きは厳しく接していたんだ。怪しまれないようにね」


流太郎は安堵した。「そうだったんですね...」


「君の協力のおかげで、闇金融団の主要メンバーを特定できた。まもなく一斉摘発が行われる予定だ」


流太郎は嬉しさで画面が明るく輝いた。


完済店長は優しく微笑んだ。「これからも君の力を正義のために使ってほしい。私たちも全力でサポートする」


翌日、ニュースで闇金融団の摘発が報じられた。出払くんと預子は喜びを隠せない様子だった。


「流太郎さんのおかげですね!」預子が嬉しそうに言った。


流太郎は謙虚に答えた。「いえ、みんなの協力があってこそです」


その夜、貸借が現れた。


「よくやった、流太郎くん。君は大きな一歩を踏み出したね」


流太郎は感謝の気持ちを込めて言った。「貸借さんのアドバイスのおかげです」


貸借は真剣な表情になった。「しかし、油断は禁物だ。闇金融団はこれで全て消えたわけじゃない。新たな敵も現れるだろう」


流太郎は決意を新たにした。「はい、これからも気を引き締めて頑張ります」


貸借は満足げに頷いた。「その意気だ。君の冒険は、まだ始まったばかりだからね」


流太郎は、自分の前に広がる未知の道のりを想像した。不安もあるが、それ以上に大きな希望がある。


「よし、これからも頑張るぞ!」


流太郎の画面に、大きな星マークが輝いた。彼の新たな冒険は、まだまだ続いていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ