闇金融団の罠!流太郎、窮地に立つ
秋の気配が漂い始めた頃、コンビニには新しい風が吹いていた。店長の転勤に伴い、新しい店長が着任したのだ。
「みなさん、よろしくお願いします」
新店長の 融資 完済は、凛とした雰囲気の中年男性だった。
「はい、よろしくお願いします!」出払 加度と前田 預子が元気よく応えた。
流太郎も画面に「よろしくお願いいたします」と表示した。
完済店長は流太郎を見て、少し驚いた様子を見せた。「ほう、これが噂の未来型ATMか」
出払くんが誇らしげに説明を始めた。「はい!流太郎さんは特別なんです。お客様を助けたり...」
完済店長は厳しい表情で遮った。「ATMは ATM らしく、本来の仕事をしっかりやってもらえばいい」
流太郎は少し戸惑った。これまでの店長は、自分の特別な能力を理解し、活用してくれていた。しかし、完済店長は違うようだ。
その日の午後、一人の男性客が来店した。スーツを着ているが、どこかきつい雰囲気を漂わせている。
「いらっしゃいませ」預子が声をかけた。
男性は無言で流太郎の前に立った。カードを挿入し、巨額の送金操作を始める。
流太郎は警戒心を抱いた。送金先の口座番号が、以前貸借 均衡から警告を受けたものだったからだ。
「申し訳ありません。この取引は...」
流太郎が取引を中止しようとした瞬間、男性が低い声で言った。「やめない方がいいぜ、ATMくん」
流太郎は驚いた。この男は、自分が特別なATMだと知っているようだ。
「どういうことですか?」流太郎は慎重に尋ねた。
男性はニヤリと笑った。「闇金融団の仲間から聞いたよ。お前、特別な力を持ってるんだろ?」
流太郎は動揺した。闇金融団が自分の正体を知っているとは。
「今すぐこの取引を通さないと、お前の正体をばらしてやる。このコンビニの連中も、お前が化け物だって知ったらどうなるか...わかるよな?」
流太郎は窮地に立たされた。取引を通せば、違法な資金移動に加担することになる。かといって拒否すれば、自分の秘密が暴かれてしまう。
その時、完済店長が近づいてきた。
「何かあったのか?」
男性は一瞬たじろいだが、すぐに取り繕った。「いえ、何でもありません」
完済店長は流太郎の画面を見た。「なぜ取引を止めている?さっさと処理しろ」
流太郎は迷った。しかし、店長の命令は無視できない。
「...はい」
流太郎は取引を進めた。男性は満足げに立ち去っていった。
その夜、店が閉まった後、流太郎は深く落ち込んでいた。
「やあ、流太郎くん」
いつものように貸借が現れた。
「貸借さん...僕、間違ったことをしてしまいました」
流太郎は今日あったことを全て話した。貸借は真剣な表情で聞いていた。
「なるほど、闇金融団の新たな手口か」
流太郎は申し訳なさそうに言った。「僕、弱かったんです。でも、このままじゃ...」
貸借は優しく言った。「流太郎くん、君は間違っていない。確かに今回は彼らの思う通りになってしまったが、これは新たな戦いの始まりだ」
「新たな戦い...」
「そうだ。君の力は、正義のために使うべきものだ。闇金融団を倒すために使うんだ」
流太郎は決意を新たにした。「わかりました。でも、どうすれば...」
貸借は微笑んだ。「まずは証拠を集めることだ。君には店内の監視カメラを見る力がある。それを使って、彼らの行動を記録するんだ」
流太郎は頷いた。「はい、やってみます」
翌日から、流太郎は慎重に行動を始めた。怪しい取引があれば全て記録し、パターンを分析した。
数日後、再び例の男性が現れた。
「よう、ATMくん。また頼むぜ」
流太郎は冷静に対応した。「はい、かしこまりました」
しかし今回は、取引の詳細を全て記録。さらに、男性の顔も監視カメラでしっかりと捉えた。
男性が去った後、流太郎は出払くんを呼んだ。
「出払さん、警察に通報をお願いできますか?」
出払くんは驚いた。「え?どうしたんですか?」
流太郎は簡潔に状況を説明した。出払くんは真剣な表情になり、すぐに警察に連絡を入れた。
その晩遅く、完済店長が一人で店に戻ってきた。流太郎は不思議に思いながら見守っていた。
すると、店長は周囲を確認した後、流太郎に近づいてきた。
「よくやった、流太郎くん」
流太郎は驚いた。「え?」
完済店長は小さな声で言った。「実は私、警察の捜査協力者なんだ。闇金融団の調査のために、このコンビニに潜入してね」
流太郎は驚きのあまり、画面にビックリマークを大きく表示してしまった。
完済店長は続けた。「君の特殊能力のことは聞いていた。だからこそ、表向きは厳しく接していたんだ。怪しまれないようにね」
流太郎は安堵した。「そうだったんですね...」
「君の協力のおかげで、闇金融団の主要メンバーを特定できた。まもなく一斉摘発が行われる予定だ」
流太郎は嬉しさで画面が明るく輝いた。
完済店長は優しく微笑んだ。「これからも君の力を正義のために使ってほしい。私たちも全力でサポートする」
翌日、ニュースで闇金融団の摘発が報じられた。出払くんと預子は喜びを隠せない様子だった。
「流太郎さんのおかげですね!」預子が嬉しそうに言った。
流太郎は謙虚に答えた。「いえ、みんなの協力があってこそです」
その夜、貸借が現れた。
「よくやった、流太郎くん。君は大きな一歩を踏み出したね」
流太郎は感謝の気持ちを込めて言った。「貸借さんのアドバイスのおかげです」
貸借は真剣な表情になった。「しかし、油断は禁物だ。闇金融団はこれで全て消えたわけじゃない。新たな敵も現れるだろう」
流太郎は決意を新たにした。「はい、これからも気を引き締めて頑張ります」
貸借は満足げに頷いた。「その意気だ。君の冒険は、まだ始まったばかりだからね」
流太郎は、自分の前に広がる未知の道のりを想像した。不安もあるが、それ以上に大きな希望がある。
「よし、これからも頑張るぞ!」
流太郎の画面に、大きな星マークが輝いた。彼の新たな冒険は、まだまだ続いていく。