不思議な能力!お金を生み出せるようだ
朝日がコンビニの窓から差し込み、流太郎の画面に反射した。ATMに転生して一週間が経過していた。彼は徐々に新しい生活に慣れつつあったが、まだ多くの謎が残されていた。
「おはようございます、流太郎さん」
出払 加度が明るい声で挨拶をした。彼はもう流太郎のことを普通のATMとは思っていなかった。
「おはようございます、出払さん」流太郎は画面に表示して返事をした。
その時、店の入り口のベルが鳴り、一人の老婆が杖をつきながらよろよろと入ってきた。
「いらっしゃいませ」出払くんが声をかけた。
老婆は流太郎の前までやってきて、か細い声で言った。「あの、お金を下ろしたいんだけど...」
「はい、どうぞカードを入れてください」流太郎は丁寧に案内した。
老婆はゆっくりとバッグからカードを取り出し、挿入口に差し込んだ。しかし、画面にはエラーメッセージが表示された。
「あら?おかしいわね...」老婆は困惑した様子だった。
流太郎は即座に状況を把握した。カードの磁気情報が壊れているようだった。普通のATMなら、ここで取引を中止するところだ。しかし、流太郎にはある能力があった。
「少々お待ちください」流太郎は画面に表示し、内部のシステムにアクセスした。そして、カードの情報を直接読み取ることに成功した。
「お引き出しの金額を入力してください」
老婆は安堵の表情を浮かべ、震える手で金額を入力した。流太郎は「金額」を確認し、出金の準備を始めた。しかし、ここで問題が発生した。
ATM内の現金が足りなかったのだ。
「どうしよう...」流太郎は困惑した。老婆を失望させたくない。そのとき、彼は思い切ったことを試すことにした。
心の中で「お金を生成」と念じると、突然、ATM内部で紙幣が増殖し始めた。流太郎は驚きのあまり、思わず「うわっ」と声を上げそうになった(もちろん、声は出ないが)。
老婆は無事に現金を受け取り、「ありがとうね」と言って去っていった。
流太郎は動揺していた。「俺、お金を生み出せるのか...?」
この発見は、流太郎に大きな衝撃を与えた。同時に、大きな疑問も生まれた。この能力は使っていいものなのか?使えば経済に影響を与えてしまうのではないか?
その日の夜、店が閉まった後、流太郎は一人で考え込んでいた。そんな彼の前に、突然、謎の男が現れた。
「やあ、流太郎君」
流太郎は驚いた。誰もいないはずの店内に、どこからともなく現れた男。しかも、自分の名前を知っている。
「あなたは...誰ですか?」流太郎は恐る恐る尋ねた。
男は微笑んで答えた。「私は貸借 均衡。君の能力に興味があってね」
流太郎は困惑した。「僕の能力...ですか?」
貸借は頷いた。「そう、お金を生み出す能力さ。面白い能力だと思わないかい?」
流太郎は戸惑いを隠せなかった。「でも、こんな能力...使っていいんでしょうか」
貸借は真剣な表情になった。「それは君次第だ。その能力をどう使うか、それが重要なんだ」
「どういう意味でしょうか?」
「考えてみたまえ。お金を生み出す能力は、使い方によっては世界を変える力になる。しかし同時に、大きな混乱を招く可能性もある」
流太郎は黙って聞いていた。貸借は続けた。
「君はこの能力を使って、何がしたい?」
この質問に、流太郎は答えられなかった。貸借はにっこりと笑って言った。
「答えを急ぐ必要はない。これからの君の行動が、その答えになるだろう」
そう言うと、貸借は来たときと同じように、突然姿を消した。
翌日、流太郎は昨夜の出来事に困惑しながらも、通常のATM業務をこなしていた。そんな中、一人の男性が慌ただしく店に飛び込んできた。
「すみません!急いでるんです!」
男性は流太郎の前に立ち、カードを挿入した。しかし、残高が足りないようだった。
「くそっ、給料日前なのに...」
男性は頭を抱えた。流太郎は昨日の老婆のことを思い出した。そして、貸借の言葉も。
「この能力を使うべきか...」
流太郎は迷った。しかし、困っている人を助けたい気持ちが勝った。
「少々お待ちください」
流太郎は画面に表示し、内部で必要な金額を生成した。男性は無事に現金を引き出すことができ、ホッとした表情で去っていった。
その後も、流太郎は本当に困っている人に限って、この能力を使うことにした。しかし、それでも心の中には不安があった。
「本当にこれでいいのか...」
その日の終わり、流太郎は決意した。この能力の正体を突き止め、自分が何のために転生したのかを知らなければならない。そして、この能力を正しく使う方法を見つけなければならない。
画面に小さな「!」マークを表示しながら、流太郎は考えた。
「よし、明日からは積極的に行動しよう。きっと、何かが見つかるはずだ」
こうして、ATMに転生した流太郎の、不思議な能力を巡る新たな冒険が始まろうとしていた。