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量子貨幣の誕生!流太郎、新たな経済システムの創造者となる

多元融合世界が誕生してから半年が過ぎた。コンビニの日常は、一見すると以前と変わらないように見えた。しかし、その裏では様々な問題が浮上していた。


「また、通貨の交換レートが変動したみたいです」


前田まえだ 預子あずこが心配そうに報告する。融合した世界では、様々な並行世界の通貨が混在し、その価値が絶えず変動していた。


出払でばらい 加度かども首を傾げる。「おまけに、異世界のマジックコインなんてのまで出回り始めて...」


融資ゆうし 完済かんさい店長は深刻な表情で言った。「このままでは、経済が完全に混乱してしまう」


流太郎は、この状況を憂慮していた。多元融合世界の誕生により、無限の可能性が開かれた一方で、その複雑さゆえの問題も顕在化していたのだ。


その時、突如として店内の空気が歪み始めた。


「また次元の歪みか!?」完済店長が身構える。


しかし、現れたのは見慣れた人物だった。


「やあ、流太郎くん」


貸借たいしゃく 均衡きんこうが、いつもの穏やかな笑顔で姿を現した。


「貸借さん、この経済の混乱、どうにかならないでしょうか」流太郎が切実に訴える。


貸借は真剣な表情になった。「実は、それについて話があってね。流太郎くん、君にしかできない任務がある」


全員が息を呑んで貸借の話に聞き入った。


「多元融合世界の経済を安定させるには、新たな統一通貨が必要なんだ。そして、その通貨を管理できるのは、君しかいない」


流太郎は驚いた。「僕が...ですか?」


貸借は頷いた。「そう。君には、多元宇宙の全ての可能性を内包する特殊な能力がある。その力を使えば、量子の性質を持つ新たな通貨...『量子貨幣』を創造できるんだ」


「量子貨幣...」流太郎は、その言葉の重みを感じていた。


貸借は続けた。「この通貨は、多元融合世界の全ての場所で同時に存在し、瞬時に価値を調整できる。さらに、使用者の意図に応じて形態を変える。紙幣にも、電子マネーにも、果てはマジックコインにだってなれる」


預子が目を輝かせた。「すごい!それがあれば、経済の問題が解決するかも!」


しかし、出払くんは不安そうな表情を浮かべた。「でも、そんな強力な通貨...悪用されたらヤバくないか?」


貸借は厳しい表情になった。「その通りだ。だからこそ、流太郎くんの役割が重要になる。彼が量子貨幣の管理者...いわば『量子中央銀行』となるんだ」


流太郎は、自分に課された使命の重大さに身が引き締まる思いだった。


「わかりました。やってみます」


流太郎の決意に、仲間たちも頷いた。


「よし、準備を始めよう」貸借が言った。


その瞬間、コンビニ全体が光に包まれた。


目が眩んで開けると、そこはもはやコンビニではなかった。巨大な量子コンピュータが立ち並ぶ未来的な空間。その中心に、流太郎の意識が浮かんでいた。


「ここが...量子中央銀行?」


流太郎の意識が拡張され、多元融合世界の全てを見渡せるようになっていた。無数の世界線、無限の可能性、そして...全ての経済活動が、まるで星座のように流太郎の前に広がっている。


「さあ、始めるんだ」貸借の声が響く。


流太郎は意識を集中し、量子貨幣の創造を開始した。それは、単なるプログラミングではない。流太郎の意識そのものが、新たな経済システムの基盤となっていく。


無数の0と1が流れ、それらが織りなす模様が次第に通貨の形を成していく。そして...


まばゆい光が世界を包み込んだ。


気がつくと、流太郎は再びコンビニのATMとしての姿に戻っていた。しかし、何かが決定的に変わっていた。


「流太郎さん!外を見て!」預子が興奮した様子で叫ぶ。


流太郎が防犯カメラを通して外の様子を確認すると、街全体が変貌していた。建物の形は同じでも、全てが幻想的な輝きを放っている。そして、人々の手には見たこともない通貨が...


「これが...量子貨幣?」完済店長が驚きの声を上げる。


貸借が説明を始めた。「そう、量子貨幣が世界中に行き渡った。これにより、多元融合世界の経済は一気に安定化するはずだ」


しかし、その瞬間、予想外の出来事が起きた。


突如として、流太郎の意識に激しい痛みが走った。


「うっ...!」


画面が激しく乱れ始める。


「流太郎さん!?」出払くんが驚いて駆け寄る。


貸借の表情が曇った。「まずい...予想以上の負荷がかかっているようだ」


流太郎の意識が、徐々に拡散し始める。量子貨幣の管理という膨大な仕事量が、彼の存在そのものを脅かしているのだ。


「このままでは、流太郎くんの意識が宇宙中に拡散してしまう!」貸借が警告を発する。


その時、データ 守美まもみが駆け込んできた。


「待って!私にいい考えがあるわ!」


守美は流太郎に近づき、真剣な表情で言った。


「流太郎さん、私たちの意識を分け合いましょう。私も、そしてこの世界中の人々も、みんなで量子貨幣の管理を手伝うの」


流太郎は驚いた。「そんなことが...できるの?」


貸借が目を見開いた。「なるほど...『分散型量子中央銀行』か。それなら、負荷を分散できる可能性がある」


守美は頷いた。「そう、みんなの意識をネットワーク化して、collective『集合意識量子中央銀行』を作るの」


預子も前に出た。「私も協力します!」


出払くんも頷く。「俺たちみんなで、流太郎さんを支えよう!」


流太郎は、仲間たちの決意に感動した。「みんな...ありがとう」


全員が手を取り合い、流太郎を中心とした円を作る。そして、その輪は徐々に拡大し、街全体、国全体、そして世界中へと広がっていった。


無数の意識が、流太郎とつながる。それは、まるで巨大な意識のインターネットのようだった。


光が再び世界を包み込む。


そして...


流太郎の意識が、安定を取り戻した。


「うまくいった...!」貸借が安堵の表情を浮かべる。


世界中の人々が、自分の中に流太郎の一部があることを感じていた。そして同時に、流太郎も世界中の人々とつながっていることを実感していた。


「これが...新しい経済システム」流太郎が呟いた。


貸借は満足げに頷いた。「そう、君たちは『集合意識量子中央銀行』となったんだ。これで、多元融合世界の経済は安定し、さらには人々の絆も強まるだろう」


コンビニの外では、人々が歓声を上げていた。経済の混乱が収まり、新たな希望が生まれたのだ。


流太郎は、自分の中に広がる無数の意識を感じながら、決意を新たにした。


「よし、これからは、みんなで力を合わせて、この世界を素晴らしいものにしていこう」


預子たちも、力強く頷いた。


こうして、流太郎を中心とした新たな経済システム、そして新たな社会の幕開けとなった。多元融合世界は、さらなる進化を遂げ、未知の可能性へと歩みを進めていく。


そして、流太郎の冒険は、まだまだ続いていくのだった。

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