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螺旋の夏  作者: 八夜
3/11

――螺旋② 野次馬



「ゆず葉! やっと来た!」

 利佳子のもとへ着いたころには、人だかりは結構な人数になっていた。

「どうしたの。こんなに集まって」

 私はキョトンとした顔で、あまり興味なさげに尋ねる。

 さっきの彼のことでまだ頭がいっぱいなのだ。


 第二校舎は入り口が封鎖されて、関係者以外立入禁止となっている。

 入口奥の校舎内では、カメラやマイク、レフ板をもったスタッフたち、忙しそうにあちこちへ動いているスタッフたちが窺えた。

 撮影でもはじまりそうな雰囲気だ。

「ドラマの撮影で、ここの校舎だけ貸切になってるんだって」

 利佳子が楽しそうに話す。


 どうりでこんなに野次馬が集まるわけだ。田舎にテレビ関係者が来ているとなれば、あっという間に噂になるだろう。

 めずらしいその様子をちょっとでも拝みたいのは、田舎だけの光景ではないだろうけど。

 ドラマの撮影ということは、さきほどの男性はここの関係者だったのだろうか?


「さっき、男の人がここに入って来なかった?」

 彼はここを通っていったのか氣になる。

「男の人って、白いTシャツにキャップかぶってる人?」

 利佳子が不思議そうに返してきた。

「うん」

「んーさっき来て、中に入っていったよ。ここの関係者ぽかったけど、その人がどうかしたの?」

「ああ……なんかさっき走ってたから」

 

 やっぱりあの人は、大学生じゃなかったんだ。

 なんだ……同じ大学の人かと思っていたのに、残念。

 また会ってみたかったけど、今日この撮影が終わればもう帰ってしまうのだ。こんな氣持ち、はじめてかもしれない。

 目の前のめずらしい光景よりも、彼との接点がなくなってしまうことに寂しさを覚える。


 ガヤガヤと騒がしい音に、いよいよ授業開始のチャイムが対抗し始めた。

 学生たちは慌てて、各々の方面へ散らばっていく。

 めったに見られない光景をまだ見ていたい数人の学生は、授業などお構いなしにその場へとどまっているが、私たちは急いで目的の教室へ走った。




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