50*交差する心 -01-
お待たせしました。
今回長めです。
楽しんでいただけますと幸いです。
「…………ねぇ。ほんとにこれ?」
「あらいいじゃない」
腕を組んで頷いたのは「カルシディーク」の看板デザイナー、ライリー。今日も首元にはスカーフを巻き、サングラスを頭の上につけている。
「よく似合ってるわよ、アイリス」
彼女の傍で微笑んだのはジェシカだ。
仕立て屋に行こうと言った次の日にはライリーに連絡していたようで、今彼女のお店に来ている。家で過ごす用にと言われたが、今アイリスが着ているのはベルベット素材の深緑のワンピース。質の高さから見ても、部屋着用とは思えない。王族御用達の服を作っているライリーのデザインのせいか豪華に見える。
しかも部屋着にしては身体のラインがしっかり出ていた。首元はVネック。シンプルなデザインだが、ラインが微妙に気になる。もっとゆったりした物の方が着やすいのだが。鏡の自分を見ながら、アイリスは微妙な顔をしている。いや、微妙というか少し気恥ずかしそうにしているというか。あまり自分でこういう姿を見たくはないかもしれない。
いつの間にか隣にライリーが並んだ。
肩に手を置き、耳元で呟く。
「恋人にしか見せないんだからこれくら攻めてもいいでしょう?」
「っ!」
「二人きりの時間を過ごすものね」
ジェシカも追い打ちをかけるように笑っている。
仕立て屋に誘ったのはそういうことか。
「だ、だから、そういうのじゃ」
「私のデザインなんだから文句は言わせないわよ?」
「うっ……」
国一番のデザイナーだ。何か言えば多くの者から厳しい目を向けられることになる。文句はない。いい代物だとは思う。ただ、これをロイの前で着ることに対して少し抵抗があるだけで。
(わざわざラインが出る服なんて……)
恥ずかしいし何と言われるか。
すると察してか、ジェシカが補足する。
「大丈夫よアイリス。あなた、スタイルいいもの。本当に似合っているわ」
「騎士で鍛えているのもあるんでしょうね。本当に綺麗よ」
声色が柔らかく、真面目になっている。
美を追求し合う二人にそう言われると、少しは自信になるかもしれない。もう少し胸を張って、と言われたので、姿勢を正す。すると二人は満足げに頷いた。
「アイリスが好んでそんな服を着るわけがないって、グラディアン教官なら分かってくれるわ。自分のために着てくれたことを喜んでくれるんじゃないかしら」
「あら。アイリス様の恋人は紳士なのね」
「とても愛情深い方です」
「なら、自分のスタイルは武器にすべきね」
ライリーが再度にやっと笑う。
アイリスは照れが出てしまって唇をきゅっとすぼめてしまうが、これで少しでもロイが喜んでくれるなら、本望だ。少しでも彼のために何かしたい、少しでも女性らしくいたい、と思っていたから。
するとライリーがジェシカに向き直る。
「ねぇジェシカ様? 親友のためにというからわざわざ店を開けたわ。今度は私の願いも聞いてもらえるかしら」
「モデルの件ですわね。私でよければ喜んで」
ライリーは嬉しそうに両手を叩いた。
「ありがとう! グレイ様とセットでお願いしたんだけど、どうかしら?」
「え?」
ジェシカは目をぱちくりさせる。
「だってあなた達、恋人になったんでしょう? グレイ様、本当に顔が美しいもの。二人が並ぶと美男美女。素晴らしい広告塔になるにちがいないわ。リアン殿下に許可はもらったんだけど、本人は了承しないだろうと言われて。恋人であるあなたの話なら、聞いてもらえるかしらと思って」
グレイに直接交渉したところで、すぐにやるとは言わないだろう。興味のないものに一切の興味を示さない青年だ。アイリスが納得しながら聞いていると、ジェシカは少しだけ苦笑する。
「分かりましたわ、聞いてみます」
(ジェシカの願いなら、グレイは聞くでしょうね)
後日聞いた話によると。
一つ返事で返ってきたらしい。
愛の力というやつだろうか。
「申し訳ありません」
「アイリス様。顔を上げてください」
目の前に立つモネが苦笑する。
アイリスは顔を険しくしたまま首を振る。
「約束の日に会いに来ないなんて、許せません」
リアンは確かにモネに言った。
帰国前には顔を出す、と。
それが当日。結局彼は来なかった。
アイリスはモネのことが気になっていたこともあり、モネの了承の元、部屋で待機していた。リアンが来なかった表向きの理由は体調不良ということになっているが、それなら詫びの一つや二つ用意しているはず。それさえもないとは。アイリスは追い出されている立場なので、リアンの様子を知ることができない。グレイも、リアンの様子を教えてくれない。
あまりの仕打ちにアイリスは苛立つ。
幼馴染がここまで落ちぶれたかと、怒りがどんどん増してくる。元々こんなことをする人じゃないと分かっているからこそ、どうしたのだと、背中を思い切り叩きたくなる。今度会ったら一発ぶん殴ろうかとさえ思った。
「大丈夫です」
「しかし、」
「リアン殿下はそんな人ではないと、理解しているつもりです」
「……お優しすぎます。モネ殿下は巻き込まれたようなものなのに」
兄弟喧嘩に。
国王同士の策略に、とも言えるかもしれない。
だがモネは顔色を変えなかった。
姿勢を正し、落ち着いている様子だ。
「王家の中でも色々あります。これくらい、些細なことの一つです」
「……」
(……強い方だわ)
何もできない自分が、少し歯痒くなった。
「――失礼します」
「! グレイ、」
急に背後に現れたと思えば、グレイは両手に便箋を持っていた。もしやと思えば案の定、リアンが用意したもののようだ。グレイは真っ直ぐモネに向かい「挨拶ができず申し訳ないと申しておりました」と伝え、手紙を渡した。
モネはそっと便箋を開け、中身を読む。
すると途中、息を呑んだ気がした。
「………………」
(何が書かれているのかしら)
モネはしばらく黙っていたが、手紙を持つ手が震え出した。はっとして顔を見るが、どことなく耐えていた。故にどんな感情でいるのかは、分からなかった。
しばらくしてモネは丁寧に手紙をしまう。
アイリスが様子を窺うような顔をすると、小さく笑った。
「ねぇアイリス様」
「! はい」
「怒りの感情は、口にしていいのかしら」
(ほんと何を書いたのよあいつは)
思わず心の中でツッコミしてしまう。
アイリスはすぐに答えた。
「もちろんです。傷ついたことも伝えていいかと」
モネは面食らった表情をする。
「今から殴りに行きますか」
付け足すようにそう言えば、モネは何度か瞬きをする。そして「ふ、ふふふ」と笑いだす。どうやらアイリスの言葉が面白かったらしい。ひとしきり笑った後、少しだけ遠くを見ていた。
そしてアイリスに目を戻す。
「私のやり方で、怒ろうと思いますわ」
「お手伝いできることはありますか」
「今は大丈夫です。……ですが、頼ってもよろしいですか?」
「! もちろんです」
最敬礼を示す。
騎士として。女性として。
主人より味方であること示した。
するとモネは嬉しそうに微笑む。
「ありがとうございます。その時が来たら……よろしくお願いします」
「で、このままでいいわけがないのよね」
モネが帰国した後。
アイリスは腕を組んでドアを見上げる。
リアンの部屋は相変わらず固く閉じられたまま。リアンとバルウィンはあれ以来顔も合わせてないようだし、焚きつけた国王もしばらく傍観するだろう。
手紙に何を書いたか知らないが、モネを怒らせたことは事実。今すぐではなくても、モネが何か動き出すかもしれない。こちらとしては、それまで何も動かないわけにはいかない。元々これは自国の問題。他国の姫であるモネの手を煩わせる前に(もう煩わせているような気もするが)なんとかしなければ。
(でもどうすれば? 私の話をまともに聞かない状態で……ロイ殿は今別件の仕事で忙しいようだし、そもそもどう動けばいいのかしら)
グレイはこちらに協力的ではない。主人であるリアンの気持ちを尊重する。ジェシカに言って説得してもらっても、さすがに主人のことになるとグレイは首を振るようだ。この時点ですでに詰んでいるような気がしてならない。
「そうよなぁ。このままじゃいかんよなぁ」
「……え」
いつの間にか隣に人がいる。
全身真っ黒の軽装。
黒の短髪、黒の瞳。
全て黒を纏う珍しい風貌。
男性にしては華奢だが背が高い。
「誰?」
アイリスは思わず眉を寄せる。
(というか、いつの間に?)
全く気配がなかった。
音さえ聞こえなかった。
その時点で相手が強者であることを悟る。アイリスは即座に腰にある剣に手をかけ、見知らぬ人物に警戒した。すると相手は苦笑して両手を上げる。
「ああ待って、待ってや〜。そんな警戒せんとって〜」
「あなた誰。どこから来たの」
「待って待って、殺気出しとるやんっ。俺よ俺! ガクやって!」
「ガク…………ガク殿っ!?」
(って、隠密の!?)
「そうそう。会うんは初めてやな、アイリス」
相手はにっこりと笑ってくれる。
一応証拠に、ということで身分証まで見せてくれた。確かにこの城で働き、自身が「ガク・タチバナ」であることを示していた。ちなみにこの身分証は城の者は全員持っており、アイリスも身に着けている。
(この人がガク殿……)
本物のガクであることは分かったが。
アイリスは思わず相手の頭から爪先まで見てしまう。
東洋出身であることは聞いていた。東洋の者は華奢で顔立ちが幼く見え、髪も瞳も黒色なのだという。彼は確かにそれに当てはまっていた。珍しい話し方もする。服装も、この国の物ではないのか、生地が少し違う。縫い付けている糸さえも黒で、彼が持つ色全て真っ黒だ。
しかも。
「もっと寡黙で無表情の人かと思いました」
「あ、それよく言われるんよねぇ」
隠密の仕事は常に「静」。王族以外に正体を明かさないようになっているし、主人以外と話すこともない。常に静かでいることが仕事なら、寡黙な人なのだろうなと思っていた。想像より明るい人だ。あっけらかんとしているし、隠密っぽくない。
ガクとしてもそのように予想されることは多いらしく、会うと必ず驚かれるらしい。本人は話し好きの人好きだそうだ。
「変装することもあるけんね。おしゃべり好きな方が交渉が上手くいくこともあるんよ」
「なるほど……。で、どうして私の前に現れてくれたんですか?」
本来王族の前にだけ姿を見せるはず。にも関わらずこうして姿を見せたのは何か理由があるのだろう。
「いやぁ、だって今変な兄弟喧嘩しとるやろ?」
はっはっは、と屈託のない笑みで言われる。
さすが、王族内の内情は知っていたようだ。
「変って……」
「アイリスも変やと思わん? バルウィンがリアンに王の座を争えって言ったわけやけど、モネ殿下の前では褒めたんやろ? おかしいやん。ここぞとばかりに自分の魅力を伝えた方がいいに決まってるやん。だってリアンがいい奴なんてモネ殿下はすでに知っとるわけやし」
「それは……ってなんでそれ知ってるんですか」
「俺は隠密やで?」
器用にウインクされる。
だいぶ気さくな性格だ。
(ガク殿には隠し事できないかもしれないわね……)
そういえばデビュタントでリアンが「ガクはどこにでもいる」と発言していた。神出鬼没だし気配も音も隠すし、ガクには全て見透かされているような気がする。
しかも王子二人を呼び捨てしている。臣下の一人であるはずなのにこんなにも気さくなのは、本人の性格故か、他に理由があるのだろうか。なんとなく、性格がそうなだけな気もするが。
「二人がどう思っとるかなんて俺には分からんけど、傍から見たらおかしいんよ。互いの能力を認め合ってどうぞどうぞあなたが次期国王になってくださいって譲り合っとるように見える。隣国の姫もとばっちり受けて可哀想やな」
(想像以上に辛辣なこと言うわねこの隠密)
的は得ているが若干棘がある言い方だ。
「野心がないんは王子としてどうかと思うで。この国の未来を引っ張ってもらわんといかんのやけん、俺が引っ張る、くらいの勢いは持ってもらわんと。誰もついていけんやんか」
「それは……確かに……」
(でもあの兄弟は、二人共優しいから)
優しさのベクトルが少し違うだけで、基本は優しい。人をよく見ているし、だけどそこで自分が、とならないのは、確かに時期国王となるには弱い部分かもしれない。
「まずは話し合う必要があると思うんよね」
「話し合い……できる状態ですか?」
まず向き合うことすら難しそうだが。
現に互いに無視し合っているし。
「やから俺はこうして姿を見せたわけよ。今動ける人おらんやろ?」
今まさにそれで悩んでいたところだ。
「具体的にはどうするんですか?」
「あの兄弟が唯一逆らえん人を連れてくるんよ」
「……?」
後日。
「「…………」」
リアンとバルウィンは向かい合って座っていた。
互いに気まずそうに目を逸らしている。
(なるほどね)
アイリスは納得する。
気まずそうな兄弟の真ん中で、二人を交互に見ては腕を組む少女。この国の第一王女であり妹姫であるメイベルが、二人を呼び出したのだ。
「いい加減にしてくださいませ、お兄様方」
「…………」
「メイベル、何の話かな」
「とぼけたって無駄ですわよバルウィン兄様!」
思わず机を叩いたメイベルに、バルウィンは困ったような顔をしている。意見をしっかり持ち、この兄弟とも対等な関係でいられる彼女が、ガクの言う「二人が逆らえない人」であった。
立場的にも性格的にも確かに逆らえない。
彼女は何を言ってもすぐに納得するような人物ではない。それはジェシカの件でアイリスもよく理解していた。ジェシカとグレイが結ばれたことで一番喜んでいたのは彼女だ。
「最近の二人の空気があまりにぎこちなくて過ごしにくいですわ!」
「ほっとけよ」
「腑抜けた様子でかっこ悪いですわね。そんな人にモネを任せられませんわ」
「今彼女のことは関係な」
「関係ありますわよリアン兄様」
急にメイベルは声を低くする。
「挨拶もせずに手紙だけ渡して帰らせたそうですわね。なんてひどいんですの」
「おま……なんでそれを」
「ガクが報告してくれましたわ」
「! ガク! なんでお前、それになんでここに」
「いやぁ、だってこの時間あまりに不毛やんか~」
ガクもこの場に参加していた。
場にそぐわないいい笑顔をしている。
(やっぱり辛辣ね……)
二人の前でもなかなかの態度だ。
メイベルに事情を話し、この場を用意したのはガクだ。二人だけだと話し合いにすらならないということで、仲介人として呼んだらしい。確かにメイベルが間にいれば、ずっと無視するわけにもいかない。
「大体バルウィン兄様のやり方がよくないですわ。悪人面をしてリアンお兄様に何か言ったそうですけれど、そもそも似合わないですわよ」
「うっ」
バルウィンの顔が少し歪む。
妹の正論パンチが効いた音がした。
どうやら身近な人達にはバレていたらしい。アイリスもあの場にいたが、確かにバルウィンらしくはないと思った。
「バルウィンは昔から優しい奴やもんなぁ」
「……追い打ちはやめてくれるかな、ガク」
「リアン兄様の能力を買っていらっしゃるのは分かりますけど……普通に話し合えばよかったのではなくて?」
「誰に何を言われても、俺は国王なんてならない」
きっぱり言い切るリアンに、場が静かになる。それは、彼が一度決めたことは曲げない性格だと理解しているからだ。
(そうか。だから、なのね)
アイリスはあることに気付く。
「だからモネ殿下を呼んだんですか?」
すると一斉に顔がこちらに向く。
リアンは信じられないものを見るような目をしていた。バルウィンは最初黙っていたが、しばらくしてから頷く。
「そうだね」
「な……彼女は関係ないだろ」
「彼女に関することなら、お前も本気になってくれるかなと思ったんだよ」
バルウィンは力なく笑う。
取り繕うのを止めたように。
「リアンがモネ殿下のことを好意的に思ってるのはガクを通して知ってたんだ」
当の本人はすぐにガクを睨んだ。
「てめぇなんでもかんでも言うんじゃねぇよ」
「あくまで俺は憶測の話をしただけやし、リアンの気持ちは知らんかったでー?」
(のらりくらりと逃げるのが上手いわね……)
バルウィンはゆっくり話し出す。
元々モネとの婚約話はあったこと。相手は決まっていなかったが、未来の国王の嫁にすれば、と陛下に相談したら納得されたこと。陛下自身も息子二人について思うことがあったこと。モネを王座の宝にすれば、真面目に話し合う気になるのでは、と考えたようだ。
結局、リアンはその宝を自分の物にしようとは考えなかったようだ。逆に、モネが「王の嫁」になるのであれば、大人しく身を引こうとしたんじゃないだろうか。アイリスは話を聞きながらそんなことを思った。
本心は分からないが、モネへの態度、送った手紙を見ればなんとなく予想がつく。兄は優秀で、必ず幸せにしてくれる。だから大丈夫だ、とでも書いたんじゃないだろうか。
(腹立ってきたわね)
勝手に予想してむかむかしてしまう。
リアンならやりかねない。全てを大人しく受け入れようとしたモネが怒ったのだ。リアンが仮にそのようなことを手紙に書いたとして、はいそうですか幸せになります、と思えないだろう。だってモネの本当の幸せは、リアンの隣にいることだろうから。
「お前が第二王子としての仕事をちゃんとしてくれている……僕のサポートに回ってくれているのは分かってた。それを本当に望んでいることも。……だけどね、僕はお前の方が優れているように思うんだ」
「んなわけねぇだろ」
「そんなわけあるんだよ。実績も残しているし、城下の人達の大半はリアン派だ」
「っ! それは、普段から関わってるから」
「ああそうだ。関わっているからだよ。それが……お前の評判につながり、国民の評判につながる」
バルウィンは項垂れるような姿勢になっていた。
それを見たリアンは、肩の力が抜けたようだ。
「……俺は別に、そんなつもりでやってたわけじゃねぇよ」
アイリスはそんな兄弟を見つめる。
(お互いが、お互いと国を大事にしているだけなのに)
どうしてこうも、上手く嚙み合わないのか。
互いが優れていることに変わりはないのに。
王座が一つしかないせいで。
争いの種になってしまっている。
「……結局平行線かなぁ」
ガクがぼそっと呟いた。
二人の思いが少しは垣間見えたわけだが、結局根本的な解決にはなっていない。確かにこれは、しばらく平行線のままかもしれない。どうしたものか、と思っていると、急にドアが強めに叩かれる音がした。
「入って」
メイベルが返事をする。
焦った様子の使用人が入って来た。
「今しがた、レナード殿下からリアン殿下にお会いしたいという手紙が」
「え……?」
「レナードが?」
「はい。しかもすぐに来られると……あ」
複数の足音が聞こえてくると思えば、すぐに隣国の第一王子、レナードが部屋に入って来る。「無礼を承知で入らせてもらったよ。ごめんね」と早口で話す彼は、いつもより余裕がないように見えた。
硬い表情のままリアンに近付いたと思えば。
勢いよく彼の胸元を掴み、自分に引き寄せる。
「レナード殿下!?」
アイリスは思わず焦った声になる。
「おいリアン。うちの妹に何を言った」
「!?」
「レナード殿下、お待ちください」
「外野は黙ってくれ」
冷たい口調で吐き捨てた後、続ける。
「モネが家出した」
「…………え」
一気にその場が騒然とした。
やっと「ガク」が登場しました。
彼の口調は私の地元の方言です。こんな方言あるんだなぁくらいで認識していただけましたら。




