第一話 高校生活の始まり
「おはよう」
「お、光鷹起きたか。今日の朝飯はなんだ?」
「ん〜具材あんまないから味噌汁と卵かけご飯だな」
そう言うと俺は早速朝ご飯の仕度を始めた。父は新聞を眺めている。テレビよりも新聞のほうが父には合っているらしい。
「ご飯できたよ」
テーブルの上に朝ご飯を置く。少し質素だがお腹を満たすには充分だ。父は新聞を読むのをやめ、目の前のご飯を眺めた。
「いただきます」
と言って俺と父は朝ご飯を食べ始めた。
(うん、我ながらこの味噌汁はめちゃくちゃ美味しい。)
父の方を見ると父も満足そうに食べていた。そして10分もしない内に食べ終わると俺は手早く片付け、学校に行く準備をする。
「お〜い俺もう行くからな。戸締りしっかり頼んだぞ。」
玄関から父の声が聞こえてきた。
父の片瀬博道は工事現場の作業員をやっている。毎日のように朝早く出勤し、夜は遅くまで働いている。そのためかなり疲れている様子だ。しかし、俺の前では仕事に対する愚痴などは決して言わない。こういう所は息子ながら尊敬している。
「あぁ、分かってるよ。」
「今日は高校の入学式なんだからシャキッとしていけよ!あんま暗い感じだと彼女どころか友達もできないからな。気をつけろよ。」
「大丈夫だよ。…多分。」
「それと、ちゃんとお母さんにも挨拶してから行くんだぞ。それじゃ頑張れよ。いってきます。」
「いってらっしゃい。」
そして父は一足先に仕事に出かけた。時計を見ると現在7時20分頃だった。8時半までに登校しなければならないのでそろそろ自分も出発しなければならない。隣の町の高校なので登校に時間がかかるのだ。しかも、バス代が結構高いので自転車で登校しなければならなかった。こういう時は給料が安い父にがっかりするが、一生懸命働いて稼いでくれているので文句は言えない。
(よし、準備できたな。)
準備を終えた俺は仏壇の前に座り、手を合わせた。
俺の母は俺が幼稚園に行っていた時に事故に遭って死んでしまった。なので母のことはあまり覚えていない。だが、すごく優しい人だったということははっきりと覚えている。
(お母さん、今日からの高校生活見守っていてね。いってきます。)
母への挨拶も済ませ、いよいよ高校へ出発した。