ダンジョン都市『ラビリンス』
簡単な設定。
世界―少し昔にダンジョンが発見されて、現代の人々の暮らしにダンジョン資源は無くてはならないものになっている。その為、ダンジョン探索をする職業として探索者が出来た。
――地球連合ダンジョン都市・ラビリンス
全ての始まりにして全ての終わり。一番最初に始まり、最後に終わる特別なダンジョン。
地球に存在する国の全てが運営に関わり、半分以上の人類を賭しても未だ攻略されていない。
大海に創られた大陸¨カオスエデン¨。その中心部にある巨大な球体。もう一つの世界とも言われているこのデカい球体こそが、始終ダンジョン『ラビリンス』。
その『ラビリンス』の周りをぐるっと囲む様に大陸全土に都市がある。
「――ここが、全ての探索者が目指す楽園にして終点。」
長い船旅を終えて、ダンジョン都市唯一の港に降り立つ。港からは防壁があって見えないが、中心部行きの魔導列車に乗れば、『ラビリンス』の一部が見える様になる。
――ここからが始まりだ。
「今、この場所から俺は夢に向かって進めるんだ。」
ここから、天大想月の物語は始まる。
何度も夢に見て、何度も願って、その為に鍛えて、故郷を捨てて、家族に背を押されて此処まで来た。
ダンジョン都市で探索者に成ると、よっぽどのことが無いと都市外にでる事が出来ない。と言うよりか、出ようとすることが無い。
全てが揃っているのだ。生活と探索、生きる為に必要なものがこの都市だけで完結している。この都市で生まれた者は都市外に出る事無くその一生を終える。
故に、探索者の楽園にして終点。
――ここで、俺は自由に気ままな最強に成る。
全てが叶うと言われ、努力次第で何物にも成れる。なら、男なら最強を目指したくなるのは当たり前。
都市が出来てから五百年。生死含め、ラビリンスに挑んだ探索者は優に二十億を超える。……なのに、今だに制覇した者はいない。
昔は量より質を取っていたが、今は質より数を以って挑むが都市の方針だ。その事から、都市に入れさえすれば老若男女誰で在ろうと探索者に成る事が出来る。
「……さて、とりあえず中心街に向かうとするか。クラスとスキルは中心街のギルドからしか発現できないからな。」
探索者必須の力……と言うか、クラスとスキルが無いと真の意味で探索者に成る事が出来ない。
¨クラス¨は、可能性の具現化した力。
剣の才能があり、剣聖に至る可能性がある者には¨剣士¨のクラスが発現し、器が成長するにつれてクラスもまた進化する。その進化の果てが剣聖かもしれないし、また別の剣の頂かもしれない。そう言った可能性が具現化した力が¨クラス¨と呼ばれている。
¨スキル¨は、技術と才能が具現化した力。
剣技や弓術、鍛冶や工作などの技術から、家事や掃除などの日常的なモノまで幅広くあるちょっとでも才能や技術があれば具現化する力が¨スキル¨と呼ばれている。
初めて発現させる者は、必ず¨探索者¨と¨探索技術¨と言ったクラスとスキルを発現する事が出来る。
そこからダンジョン探索を重ねて、自分の可能性と向き合う事で新たなクラスとスキルを発現、又は進化させる事が出来る。
「待ってろよ、『ラビリンス』。俺が最初の制覇者に成ってやる。」
ダンジョンへの期待。己が何処まで行けるかの挑戦。此処からの人生全てを賭けた願い。
――最強になって、『ラビリンス』を制覇する。
夢と想いを心に宿して、ダンジョンに挑むために俺は港を後にした。
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「――年齢十六歳。身長160㎝。体重は…別に良いか。容姿は男にしては長い黒髪に年齢より幼く感じる童顔。体は良く鍛えられている。性格は良いが、自己鍛錬に精を出している為か友は少ない。精神性は若者らしい所もあるが、一本の線が入っている様な曲がらない意思を持っている。小学校から中学校まで国立探索科で、今年の春に卒業。学校からの評価は最上のA+。小中の探索科責任者からの推薦で、国内ダンジョンの探索をせずにこのダンジョン都市にやって来た。……成る程、この子は進める者だな。」
ダンジョン探索ギルド――探索者を増やし、支援して管理する。ダンジョンと探索者に関する全てを担う組織。
そのギルド内の一室にて、探索者に成る者を見極める役割を持った男がつぶやく。
「近年は豊作も豊作、滅多にいない筈の¨進める者¨がこうも現れるとは。……これは、新たな波がやってくるな。」
ニヤリと笑いながら、次々と書類を処理していく。
歓迎と歓喜と期待を込めて、男は探索者に成る者に願う。
「願わくば、お前たちでの世代で辿り着け。ダンジョンの真実に。ダンジョンの想いに。そして、どうか叶えて欲しい――」
――この星が望む願いを。
「まっ、別に世界が滅ぶわけでも無いし、自分のしたい事をやればいいさ。探索者は欲深く自由でこそなんだからな。」