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異能なんて関係ない、素ですごいんだ。マジで

 答えは出ない。そんなのは考えたこともなかった。自分の行いが正しいと信じているしみんなのためになると思っている。


 そんな自分が誰かを苦しめてまでやりたいことなどあるのだろうか。


 信也が答えられなかったことで今度は別のことを聞いてくる。


「お前はどうなんだ。どうしてそこまでランク至上主義反対にこだわる。いや、反対する理由は知っているし理解も出来ているが。でもお前はランクAだろ、わざわざ自分が有利の体制を否定するのか?」


 深優は不思議そうに聞いてくる。だがその質問なら答えられる。


「そりゃそうだろ。自分だけがいいだなんて思わない。それにランク至上主義は俺の友人を否定する考えだからな」

「友人?」


 信也は頷いた。


「この学園じゃないけどさ、俺の友達にすげーやつがいるんだよ。異能なんて関係ない、素ですごいんだ。マジで。いろいろ難はあるけど、でもすごいやつだって認めてる。生徒会の掲げるランク至上主義は遠回しにその友人を否定しているんだ。姫宮だってそうさ。アイドル部にいた胡桃色の髪をした子だよ。彼女は本気でアイドルを目指しててその情熱は本物だ。ダンスや歌だって上手い。なのにランクで否定されるなんておかしいだろ。それで許せなくてな」

「そうか。それは悪かったな」

「ふん。まったくだ」


 どうして自分がランク至上主義に反対するのか。それは人間の可能性を知っているから。

 そして、それを教えてくれた友人を否定されているから。だからこれは認められない。

 認めて、いいわけがないんだ。


「そんなお前がなにをしている? こんなところで時間を潰していていいのか?」

「俺は……もう手遅れだよ、負けちゃったからさ」


 思い出す。忘れていたわけではなかったが胸の重さがぶり返してきた。


「ああ、そうか。なら琉衣はうまくやってくれたんだな」

「ああ、ご丁寧に三人がかりでな」

「さすがイレギュラー、モテモテだな」

「誰一人としてお断りだ」

「はっはっはっは! 今のは黙っておいてやる」


 そこで深優が大きく笑った。そんな彼女を見るのは初めてでこんな風に笑うんだと驚く。だけどすぐに信也も小さく笑った。


 少しだけだけど、心が通じた気がした。


「でもな、私の立場から頑張れなんて言えないが、今のお前でもやれることはあると思うぞ」

「無理だって。一か月以上かかる課題を提出されたんだぞ?」

「ふむ」


 深優は少々訝しむ顔になる。


「お前は私を分からないと言ったが、私もよく分からないな。人間の可能性、それを声高に叫び生徒会に反抗するほどのやつがずいぶん呆気ないじゃないか」

「そう言ったって」

「お前は、諦めないやつだと思っていたんだがな。少なくともまだ全力を出していないと思ってる」

「全力?」


 それはどういう意味だろう。全力とはどういうことだ。それを聞こうと口を開いた時だ。


「ん?」


 深優のスマホから着信音が鳴り響く。ポケットから取り出し画面を確認している。


「すまんな」

「ああ、いや別に」


 深優は電話に出た。


「もしもし、どうした」


 深優は話をすると表情が険しくなっていく。


「分かった」


 電話はすぐに終わり急いだ様子でスマホをしまう。


「時雨さんからだ。今すぐ来いとさ。……ふん、おかしいな」

「?」

「いや、なんでもない」


 なにがおかしいのか信也には分からないが生徒会からの急用らしい。全力がどういう意味なのか聞きたかったがそれなら仕方がない。


「私は行く。じゃあな」

「ああ。その!」

「ん?」


 今にも走り出そうな深優を呼び止めた。


 こんなことを言ってもいいものか多少迷いながら信也は話していく。


「話が出来てよかったよ」

「……ふん」


 それを聞いて深優が小さく笑った。


 それで彼女は行ってしまった。さすがは足を強化するランクD、あっという間に姿が消えていく。その風のような去り際を信也は黙って見送っていた。

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