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消えろよイレギュラー、目障りなんだよ

「くそぉおおお!」


 廊下を歩きながら信也はご立腹だ。牧野先生にはちゃんと説明した。しかしそんな彼の言い分は聞いてもらえず「なにを言っているのかよく分かりませんがとりあえず生活態度は減点にしておきますね」と言われてしまったのだ。


「はあー、いきなり減点とかやちゃったのかなぁ俺。いや、諦めるな。まだ始まったばかりなのに落ち込んでてどうするんだ。もっと元気を出せ俺!」


 自分に言い聞かせよしと頷く。そうしていると自分の教室にたどり着き扉を開ける。入学式が終わり説明会のためクラスメイトはすでに教室で待っている状態だ。


 しかし、教室内はなにやら険悪な雰囲気に包まれていた。


「なんだ?」


 見れば机に座っている少年を数人の男子が囲っている。そして次々に「こいつランクFだってよ」と悪口を言っていたのだ。


「おい、なにしてるんだよ」


 すかさず声をかける。それで数人が信也を見るとランクAだと分かり途端に嫌そうな顔になる。


「なにって、お前には関係ないだろ」

「それは俺が決めることだ。お前たちこそなにしてるんだ、嫌がってるだろ」


 そのうちの一人から言われるが信也も退かない。机に座っている少年は見るからに辛そうだ、それを見て見ぬフリなんか出来ない。


(今朝のあれは上級生だったけど、まさか新入生にまでランク至上主義が広がっているのか? まだ初日だぞ?)


 アークアカデミアはランク至上主義。だが不思議なことではない。アークホルダーの傾向として特別意識が高いことがある。なにせ異能アーク自体が特別だ。いわばアークホルダーは入学する前から特別意識が高く、それ故にランク至上主義に染まり易いのだ。ランクが自分よりも低ければ見下している。


 信也の方がここでは異端なのだ。


 そんな現実を目の当たりにして信也は覚悟を決めた。数人の男子から視線を外すと教室にいる全員を見渡した。


「みんな聞いてくれ! アークアカデミアでは今ランク至上主義が蔓延っている。すべてはランクで決めるという考え方だ。俺は入学式前もそんな奴らに出会った。ランクが低い人はそれだけで落ちこぼれだと言っていた。でも、そんなのおかしいだろう!?」


 両腕を広げアピールする。ランク至上主義。アークアカデミアの常識を真向から否定する。


「ランクという生まれつきの特徴でこれからのすべてが決められる。ただそのランクだったというだけでだ! 俺はそんな考え方は間違ってると思ってるし、変えたいと思ってる!」


 表情は真剣だ。目はまっすぐにクラスメイトの一人一人を見つめその声にも情熱が宿っている。


「そうだろう? ランクですべてが決まるなんておかしい。たとえランクが低くても頑張れば道は開ける。諦めず自分を信じていけば夢は叶う。誰にだって可能性はあるんだよ!」


 信也は信じている。人間は変われる、その可能性があることを。


「だから、もしみんなもおかしいと思っているなら俺と一緒に――」

「お前、やっぱりイレギュラーだな」

「なに?」


 そこへさきほどの集団から声がかけられた。一人が信也に近づいてくる。その態度には余裕があった。


「俺よりも上のランクの人間にこんなこと言うのは躊躇われるんだけどさぁ」


 男は続ける。


「この学園ではランクがすべてなんだよ。当然だろ? だってランクは固定制、努力しても成長しない。なのに可能性なんてあるはずないじゃないか」

「そんなことないって!」

「じゃあどうすればいいんだ? ランクアップは第一から第三アークアカデミアも研究してるがどこも不可能だって言ってるぜ?」


 彼の言葉に「そうだそうだ」と他の男子が続く。


「それに可能性って、お前はランクアップの方法を知ってるのかよ?」

「いや……」

「ほら知らない」


 男子はこれ見よがしに両手を上げて、信也を嘲るように見つめてきた。


「お前の言ってる可能性なんて、しょせん口先じゃねえか」

「それは……」

「消えろよイレギュラー、目障りなんだよ」


 そう言って男子はグループに戻っていった。仲間たちと一緒に変わり者の信也をネタに笑っている。


 言い返せなかった。どうすればいいと聞かれた時。それが負い目となって視線が下がる。表情も少しだけ暗くなった。


「確かに、どうすればいいのかなんて分からない。でも、諦めたらそこで終わりなんだ! なあ、 他のランクの人はどうなんだ? どう思ってるんだよ。信じようぜ、自分の可能性を!」


 再度呼び掛ける。けれどクラスの雰囲気は暗く信也の声が届いているように見えない。


 そこへ、一人が元気よく手を上げた。


「私! 信也君の言うこと、素敵だと思うな!」

「姫宮」

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